LCCの乗り入れによって深夜や早朝の発着便が増えている関西空港。これらを利用するために空港で一夜を明かす場合、どんな施設を利用できるでしょうか。
日本には6つの「24時間空港」があります。航空機の離着陸に時間規制のない空港のことをいい、新千歳、羽田、中部、関西、北九州、那覇の各空港がそれにあたります。あくまで航空機の運用にもとづいた表現で、利用旅客からすると、空港によっては24時間オープンの店舗がなかったり、深夜早朝は交通アクセスが途切れたり、ターミナルが閉鎖されていたりと、「24時間利用できる」とは言い難い面があります。
具体的にいうと、深夜から早朝にかけて、羽田空港では鉄道は運行されず、限られた本数のバスが限られた場所を往復しているだけです。国内線ターミナルは閉鎖され、国際線ターミナルのみを開放しています。また、たとえば60分や90分など時間単位で利用できる個室や半個室の有料施設はありません。那覇空港は公共交通機関は24時間運行ではなく、ターミナルの一部のみ開放。中部空港も公共交通機関は24時間運行ではなく、ターミナルの1階と2階のみ開放ですが、これに直結した簡易宿泊所が1軒あります(利用は3時間以上)。北九州空港はターミナルを閉鎖します。新千歳のターミナルも1階から3階まで閉鎖され、4階にある温泉施設が唯一早朝まで過ごせる場所です。公共交通機関も24時間運行ではありません。
関西空港を拠点に国内外に就航するLCCのピーチの機体(2014年2月、恵 知仁撮影)。
それらと比較すると、関空こと関西空港は、公共交通機関の運行は同様に乏しいものの、早朝から深夜まで過ごせる無料、有料の施設が揃っているといえます。関空を運営する関西エアポートによると、アジア系LCCの早朝深夜発着便が増え、国内外の利用客が空港で過ごすことが多く、施設が増えていったといいます。
まず、第1ターミナルは1階から4階まですべて24時間開放していて、空いているスペース、ベンチで仮眠を取ることが可能です。24時間営業のコンビニや飲食店があり、国際線ゲートエリア中央(北)にシャワー室が設置されています。シャワーの利用は、15分600円です。
第1ターミナルと渡り廊下で繋がれた複合施設「エアロプラザ」の2階には、休憩所が設けられています。毛布の貸し出しや、無料Wi-Fiのサービスも提供。シャワー室(15分500円)や自動販売機もあります。同じ館内には24時間営業の飲食店も。
ただし関西エアポートによると、エアロプラザ2階の休憩所は22時くらいにはほとんど一杯になってしまうそうです。また、第2ターミナルも24時間開放していますが、ベンチの数が少なく、24時間営業の店舗やシャワールームもないので第1ターミナルやエアロプラザで仮眠をとる人が多いそうです。
関空には、24時間営業の有料ラウンジもあります。

「KIX-ITMカード」は入会、年会費無料(乗りものニュース編集部撮影)。
ラウンジの半個室となっているブース席は、パック料金であれば3時間まで1540円、6時間まで2670円です。完全個室のファミリールームもあり、3時間パックであればひとり1850円、6時間パックならひとり3090円です。また、オープン席もあり、最初の30分が310円で、時間延長もできます。ただし、18歳未満については時間帯によって利用制限があります。
いずれの席も部屋も、KIX-ITMカードを提示すると料金が半額(席料、室料のみ)になります。利用しているクレジットカードの種類によっては、利用料金が2時間無料になるサービスもあるそうです。1:00~翌朝4時までブース席が満席の場合、KIX-ITMカードの一般会員なら、プレミアム会員専用に設けられたラウンジが、その時の空き状況によって使えることもあります。
施設利用のためにカードを前もって作るのは面倒に思うかもしれませんが、KIX-ITMカードは身分証明書を持っていれば、空港で即時入会可能です。入会・年会費無料で、第1ターミナルの2階中央カウンターと第2ターミナルの案内センターで作ることができます。第1ターミナルは受付時間が午前7時から23時までですが、第2ターミナルは24時間受付。ラウンジ利用料金の割引のほかにも、ターミナル内での飲食や交通機関の割引など、様々な特典があります。ITMは伊丹空港を表すコードで、同空港でも色々な特典が受けられるそうです。
24時間営業の有料ラウンジふたつめは、エアロプラザ2階にある「リフレッシュスクエア」のラウンジです。個室ブース席(半個室)とふたり以上から利用できるグループルームがあり、フリードリンク付き。個人ブースはフラットシートとリクライニングシートの2タイプで、4時間のパッケージ料金なら2080円、6時間のパッケージ料金なら2680円です。シャワールームもあります(15分500円)。ここも、KIX-ITMカードを提示すれば席料、室料ともに半額になります。
これらふたつの有料ラウンジは、予約不可です。
ホテルに準じた環境で休憩を取りたい場合は、エアロプラザ3階に「ファーストキャビン関西空港」があります。

「ファーストキャビン関西空港」の正面玄関(乗りものニュース編集部撮影)。
ショートステイは、ファーストが1時間1000円、ビジネスが1時間900円。KIX-ITMカードを提示すれば、3時間以上の利用で各ランク1時間分が無料になります。女性と男性は別々のフロアーに分かれています。
満室であっても、大浴場の利用ができます。2時間1800円で、時間延長は1時間毎に900円です。大浴場を利用した場合、同宿泊所のロビー内にあるラウンジを時間制限なく使用できます。
関空は、航空会社の相次ぐ路線撤退やテナント減少によって、数年前までは閑古鳥が鳴く空港でした。しかし、「インバウンド効果」で昨年は過去最高の旅客数を記録するなど、活気に溢れています。人が増えて施設が充実し、それがさらに利用者増につながるという好循環になっているようです。
※一部内容を修正しました(4月20日14時50分)。
【写真】関空のエアロプラザ2階は24時間開放

無料で利用できるエアロプラザ2階休憩所。22時ごろには一夜を空港で過ごす人でいっぱいになるという(乗りものニュース編集部撮影)。