自転車用のライトには光を点滅させられる製品もあり、自分の位置を周りに知らせる効果がありますが、点滅ライトだけでは夜間走行はできません。どういう理由でしょうか。

「点滅」では路上の障害物を照らせない

 自転車の前照灯には、夜道を「照らす」役割と、自分の位置を周りに「知らせる」役割があります。自転車用のライトには「点灯」と「点滅」を切り替えられる製品もありますが、自転車の前照灯については法律上の決まりがあり、夜間に点滅ライトだけで走行することはできません。

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自転車の前照灯のイメージ(画像:photolibrary)。

 道路交通法では、自転車を含む「車両等は、夜間、道路にあるときは…(中略)…前照灯、車幅灯、尾灯その他の灯火をつけなければならない」とし、自転車に関する細則については各都道府県ごとに定めることとしています。各都道府県の規則は、ほとんどが「前照灯は白色か淡黄色、10メートル先の道路上の障害物が確認できる明るさが必要」と定めています。自転車の安全基準の普及やマナー啓発などに取り組む自転車協会(東京都品川区)は、「点灯と点滅を両方つけて走るのは問題ありませんが、点滅ライトだけでは道路交通法で定める『灯火』の要件を満たしません」と断言します。

 自転車用ライトなどを製造するキャットアイ(大阪市東住吉区)も、自社製品の使用について「夜間走行時は常時点灯で使い、点滅はあくまで補助灯として使うこと」と注意を呼びかけています。上述のように、点滅ライトだけでは法律で定めている前照灯の役割を果たさないことが理由ですが、実際に夜間の走行では危険がともなうといいます。

 キャットアイの担当者は、「自転車の場合、路面の障害物や段差などの見落としが転倒事故などにつながる可能性もあります。点滅ライトは周りの歩行者や自転車から『見られる』という効果が期待できますが、それだけでは路上の障害物などを発見したり、それとの距離を把握したりするのが困難です。自転車の前照灯は路面や周りを『見る』という重要な役割があるのです」と話します。

必要な明るさのライト、どう選ぶ?

 点滅と点灯を切り替えられるライトのなかには、前照灯としての十分な明るさを満たしておらず、補助灯として使うことを前提にしたものもあります。

夜道を照らすのに適切なライトは何を基準に選べばよいのでしょうか。

 自転車の前照灯として認められる明るさの性能は、JIS規格で「400カンデラ以上」と定められています。前照灯としての要件を満たしている製品の一部では、JIS規格に適合していることや、400カンデラ以上の明るさの数値が表示されていますが、最近では「カンデラ」とは別の「ルーメン」という単位で明るさを表示するメーカーも増えているといいます。

「ルーメン」では、どのくらいの数値が適切なのでしょうか。キャットアイの担当者は「比較的明るい市街地の場合でも200ルーメン以上、郊外など街灯が少ない場所では700ルーメン以上のライトが必要と考えています」と話します。照明に関する業界団体である日本照明工業会は、20ワットの白熱電球に相当する明るさを「170ルーメン以上」としていますので、200ルーメンという光量はおおむねこれに近いものと言えるでしょう。

 ただし、前照灯は明るければ明るいほどよいというわけではなく、状況に合った明るさが大切だといいます。

「必要以上に明るすぎるライトは、すれ違うクルマのドライバーや周りの歩行者にとってまぶしすぎることもあります。市街地や郊外など、走行場所の状況に応じた明るさの製品を選ぶか、あるいは明るさの調整機能を備えた製品を使うとよいでしょう」(キャットアイ 担当者)。

 もちろん、ライトの向きを適切に調整することも、周りに迷惑をかけず、自分自身も安全に走行できるポイントだといいます。キャットアイの担当者は「ライトを自転車に取り付ける時に、光の向きをやや下向きにして前方の路面を照らすようにすると、歩行者やドライバーに迷惑をかけませんし、路面の状態もより見えやすくなります」と話しています。

【グラフ】無灯火自転車の取り締まり、ふたり乗りの4倍も

自転車の点滅ライト、灯火にあらず 夜間走行に必要な「灯火」とは

警察が自転車の取り締まりで交付した「指導警告票」の件数。
2016年は無灯火が約49万件でふたり乗りの約4倍(警察庁資料をもとに乗りものニュース編集部にて作成)。

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