日本で普及が進むカーシェアリングは、設置台数では地方より大都市のほうが多い傾向ですが、地方でもさまざまな社会実験を通じ、新たな移動手段としての普及が進められています。
空港とレンタカーの「つなぎ役」にも日本で普及が進んでいるカーシェアリングは、おもに会員登録をしたユーザーが企業の所有するクルマを必要な時に利用する形態です。
カーシェアリングの比較情報サイト「カーシェアリング比較360°」によると、2017年末時点における主要5社の都道府県別設置台数は、東京都(9738台)、大阪府(3904台)、神奈川県(2692台)、愛知県(1298台)など大都市圏を抱える都道府県ほど多く、それ以外の地方、たとえば岩手県(22台)、新潟県(44台)、島根県(9台)などと比べると大きな差があります。
広島空港の県営駐車場に設置されたカーシェアリング拠点(画像:パーク24)。
国内カーシェアリング大手の「タイムズカープラス」の設置台数を見ても、東京23区の5513台に対し、札幌市で107台、長野市で26台、徳島市で8台(2018年4月27日時点)と、大都市とそれ以外の都市との差に開きがあります。
数字だけを見れば、カーシェアリングは都会を中心に普及しているように見えますが、実は郊外や地方でもカーシェアリングを導入し、新たな交通インフラに育てていこうとする動きが起こっています。
「タイムズカープラス」を運営するパーク24(東京都千代田区)は、全国各地の交通事業者などと連携したさまざまなサービスを展開しています。代表的なものは、鉄道とカーシェアリングを組み合わせた「レール&カーシェア」で、2018年4月に小田急電鉄との提携で開始した同サービスでは、小田原駅などでの観光や、狛江市、海老名市、厚木市といった沿線地域へのビジネス利用を想定しています。
また、広島空港では県営駐車場を拠点とした通常のカーシェアリングに加え、同社が運営するレンタカーサービスと連携し、空港から市街地への「片道利用」を実現。片道利用では、県外からの利用者が空港からレンタカー店舗までの「つなぎ」に使うケース、地元の利用者はレンタカー店舗から空港までの「アクセス手段」として使うケースが多いといいます。
地方でのカーシェアリング、将来への可能性は一方、各地の自治体や企業なども地域におけるカーシェアリングの可能性を検証するため、さまざまな社会実験を行っています。
たとえば、静岡銀行は伊豆半島の主要観光地にある4つの銀行で「オリックスカーシェア」の拠点を設置し、観光客と地元住民に移動手段を提供する実験を2017年9月から実施。福島県いわき市小川町では、自動車関連など6社からなる「東北ギルドコンソーシアム」が提供する電気自動車を使ったカーシェアリング実験を2017年7月から開始しています。同町は列車やバスなどの交通手段が少なく、地元住民の通院や買い物などの利用を想定しているといいます。
地方でのカーシェアリングには今後、どのような発展の可能性があるのでしょうか。パーク24の担当者は次のように話します。
「地方では、人口減少や高齢化を背景に路線バスが廃止されるなどし、交通の利便性が低下するという課題を抱えています。カーシェアリングが全ての問題を解決できるとは考えておりませんが、これが新たな移動手段として利用されるようになれば、公共交通としての役割を担うことができると考えております」(パーク24 担当者)。
もちろん、旅行や出張などで地方を訪れる人の移動手段としての需要も見込んでおり、同社は全国の駅や空港などへのカーシェアリング車両を積極的に配備していく考えです。
カーシェアリング「カレコ」を提供する三井不動産リアルティが2016年に実施した調査では、全国でカーシェアリングを利用しているユーザーのおもな用途は、「郊外、あるいは近隣での買い物」と「日帰りレジャー」が上位を占めています。地方ではそのような日常での利用に加え、観光資源へのアクセス向上や地域活性化などさまざまな活用法が試みられています。今後も地方からカーシェアリングの新たな活用法が生まれてくるかも知れません。
【グラフ】カーシェアリング主要5社の国内シェアは

カーシェアリング主要5社の、2017年における設置台数(「カーシェアリング比較360°」の資料より乗りものニュース編集部にて作成)。