大阪市の北部を走る、京阪中之島線。現在はどちらかというと「地味」な存在ですが、延伸計画が現実味を帯びるなど、にわかに注目されています。

どこを通るのか「妄想」してみましょう。

規模と能力を持て余している中之島駅

 いま関西では、新しい鉄道路線に注目が集まっています。2019年3月開業予定のJRおおさか東線・北区間(新大阪~放出)に続き、北大阪急行電鉄でも千里中央~新箕面(仮称)間の工事が進行中。さらに、大阪市内を南北に貫くJRと南海の「なにわ筋線(仮称)」も、計画が具体化してきました。

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中之島駅ではこれまで、ラッシュ時のみ使用するホームを使って「ホーム酒場」などのイベントも開催された(伊原 薫撮影)。

 そんななか、ある路線の延伸がにわかに話題となっています。その路線とは、京阪電鉄の中之島線。京阪電鉄本線の天満橋駅(大阪市中央区)から分岐して西へ向かい、中之島駅(同・北区)に至る全長3.0kmの路線で、2008(平成20)年に開業しました。「グランキューブ大阪」の愛称で知られる大阪国際会議場やリーガロイヤルホテルなど、中之島地区の交通アクセスが便利になると期待されましたが、利用者数は伸び悩んでおり、開業から現在までほぼ横ばいの状態。開業当初は快速急行などの優等列車も運転されていましたが、現在は平日のラッシュ時を除くとほぼ普通列車のみというダイヤで、3本の列車が入る終点の中之島駅も、その規模と能力を持て余している状態です。

 そんな中之島線が再び注目され始めたのは、2017年ごろのこと。前述のなにわ筋線計画が具体化してきたのに伴い、なにわ筋線と中之島駅で接続する中之島線にも関心が向けられるようになりました。

両線を乗り継げば、関西空港から1回の乗り継ぎで、宇治や伏見稲荷など京阪沿線の観光スポットへ行けるように。また、京都方面から高野山などへのアクセスも便利になるため、特に外国人観光客などの利用が期待されています。

 そして、2017年から2018年にかけ、中之島線にとってさらに大きな動きが見られました。もともと中之島線は、開業前の2004(平成16)年10月に国土交通省近畿運輸局が発表した「近畿圏における望ましい交通のあり方について」(近畿地方交通審議会答申第8号)のなかで、「京阪神圏において、中長期的に望まれる鉄道ネットワークを構成する新たな路線」のひとつとして挙げられ延伸が期待されていたものの、利用が低迷していることからそのめどは立っていませんでした。ところが、ここへきて延伸への機運がにわかに高まってきたのです。

中之島延伸は「万博」「カジノ」しだい?

 転機となったきっかけはふたつ。ひとつは、2017年に大阪が正式に立候補した2025年の国際博覧会(万博)開催です。会場予定地となる夢洲(大阪市此花区)には公共交通機関が現在はバスしかないため、開催が決まれば鉄道の整備が喫緊の課題となります。

 先に述べた答申第8号では、大阪メトロ(旧・大阪市営地下鉄)中央線とともに、中之島線が夢洲まで延伸される構想となっており、会場へのメインアクセスとなるのは間違いありません。開催地が決定されるのは2018年11月。有力なライバルだったパリが立候補を取り下げたこともあり、大阪府や大阪市の招致活動は熱を帯びています。

 ただ、3000万人以上の来場者が見込まれるとはいえ、万博の観客輸送は一時的なもの。

埋立地である夢洲の開発は順調とはいえず、せっかく鉄道を建設しても万博の終了後は乗客が激減するというのが目に見えています。

 そんな状況を変えたのが、同じく大阪府や大阪市が主導となって推進する「IR(統合型リゾート)構想」です。カジノをメインとしたリゾート施設を夢洲に建設するという構想で、もし実現すれば鉄道の需要にもつながるというわけです。政府はIR設置に必要な法案をいまの国会で成立させることを目標としており、またアメリカの大手カジノ運営会社が大阪への進出に興味を示すなど、事態はここに来て大きく動き出しました。

 そして、これを受ける形で中之島線の延伸も現実味を帯びてきました。2018年2月中旬には、中之島~九条~西九条というルートが検討されていると各社が報道。京阪自らが直接夢洲へ乗り入れるのではなく、九条で大阪メトロ中央線と、西九条でJR桜島線と接続することで、夢洲への延伸が検討される両線と連携する考えです。京阪ホールディングスの加藤好文社長は新聞のインタビューに対し、1000億円規模を投じて5年以内の開業を目指すとし、意欲を見せています。

 もっとも、万博やIR構想はあくまでも構想段階であり、中之島線をはじめ各路線の延伸もこれらの誘致が実現することが大前提です。逆に言うと、万博やIRの誘致が決定すれば一期に計画が進み、5年後には新たな路線が開通している可能性が高いと言えるでしょう。大阪の鉄道路線図が大きく変わるかもしれない、その“運命の瞬間”は着々と近付いています。

九条へ、西九条へ…ルートどうなる

 さて、実際に中之島線が延伸されるとなった場合、いったいどのルートを通るのかを“妄想”してみましょう。

将来は「大化け」? 京阪中之島線、延伸でどう変わる

京阪中之島線の地上部分。中央の建物はリーガロイヤルホテル。中之島線はこの道路に沿って左奥から手前へ伸びる(伊原 薫撮影)。
将来は「大化け」? 京阪中之島線、延伸でどう変わる

中之島駅から伸びる線路は中之島の先端にあたる船津橋南詰交差点付近を通過。ここで左へ曲がると思われる(伊原 薫撮影)。
将来は「大化け」? 京阪中之島線、延伸でどう変わる

みなと通を進み、川口一丁目交差点で右へ曲がると、大阪メトロ中央線と阪神高速16号大阪港線に合流する(伊原 薫撮影)。

 中之島駅を出た列車は中之島の西端へ進み、千日前線と地下で交差して北区から西区へ。大阪メトロ中央線や阪神高速道路が通る、中央大通の北側に沿って九条駅へ向かいます。ここで北西に針路を変え、今度は阪神なんば線と並走する形で西九条駅へ至ると思われます。阪神なんば線と違って中之島線は地上に出る必要が特にないため、安治川は川底をトンネルでくぐることになるでしょう。ここは戦前に造られ、いまも利用されている歩行者専用の「安治川トンネル」もある、なかなかのディープスポット。その隣を京阪電車が通るかも……と思うと、少しワクワクしてきます。

 なお、現段階では中之島~九条~西九条というルートが報道で取り上げられていますが、これは夢洲までの延伸計画が先に具体化した、大阪メトロ中央線との接続ありきの構想だからだと考えられます。もしJR桜島線も夢洲まで延伸するのであれば、大回りをして九条を経由し、中央線に接続するメリットは薄い(中央線自体も、コスモスクエア経由で夢洲へ向かうため大回りとなる)ので、中之島から直接西九条へ向かうルートが選択される可能性も十分考えられます。そのあたりは、各社がお互いの様子をうかがいつつ……ということになるかもしれません。

将来は「大化け」? 京阪中之島線、延伸でどう変わる

九条二丁目交差点。奥の円形の建物が阪神なんば線九条駅(地下)の入口。左奥から進んできた中之島線はこの付近で左手前へカーブしながら、左右に走る阪神なんば線の下をくぐると思われる(伊原 薫撮影)。
将来は「大化け」? 京阪中之島線、延伸でどう変わる

中央に見えるのは阪神なんば線の遮音壁。同線に沿って中之島線は北西に進む(伊原 薫撮影)。
将来は「大化け」? 京阪中之島線、延伸でどう変わる

安治川を越えて西九条へ。撮影地点の真上をJR大阪環状線の高架が走っている。京阪西九条駅はこの付近の地下に建設されると予想(伊原 薫撮影)。

 今年で開業から10周年を迎える京阪中之島線。

2018年5月9日に発表された「京阪グループ 長期戦略構想」では、主軸戦略のひとつとして「大阪東西軸復権」を掲げ、京橋~淀屋橋~中之島の拠点開発とともに、中之島線延伸の実現をめざすことが盛り込まれました。

 現在はそのポテンシャルをいかしきれていない同線ですが、5年後・10年後にどう“大化け”しているか、いまから楽しみです(上記延伸ルートについては、各種報道を基に筆者が予想したものです)。

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