F-15やF-4など、米軍の戦闘機は「F-○○」あるいは「F/A-○○」という名前が付けられていますが、かと思えば13や19がなかったり、20代前半からいきなり35に飛んだり、100以上の数字も見られたりします。どういう規則なのでしょうか。
皆さんはジェット戦闘機といえば、どんな機種を思い浮かべますか。日本国内に配備されているものであれば、航空自衛隊のF-4、F-15、F-2、F-35、または在日アメリカ軍のF-16、F/A-18、たまに飛来するF-22などをまず思い浮かべる方が多いのではないかと思います。
ご覧の通り、上記した戦闘機はすべて「F」で始まる記号とナンバーの組み合わせで統一された名前を持っていますが、なぜみな同じような名前なのでしょうか。
アメリカ空軍のF-110A「スペクター」。1962年の命名制度制定により、おなじみF-4C「ファントムII」へと改称された(画像:アメリカ空軍)。
かつてアメリカ軍は陸海空軍がそれぞれ独自の命名規則によって航空機の名前を決めていました。そのため同じ機種でも空軍と海軍では名前が違いました。しかしそれでは煩雑に過ぎるため、1962(昭和37)年アメリカ軍は全軍で統一された新しい命名制度を制定します。
これによってアメリカ軍はどの軍種に配備された機であっても戦闘機ならば「Fighter」の頭文字である「F」と数字の組み合わせとするように定め、同じく攻撃機なら「Attacker」のA、輸送機なら「Cargo」のCなど、あらゆる機種の命名規則を統一したのです。
このとき戦闘機は、まずF-1からF-11まではそれまでの既存の機種に割り当てられました。たとえば海軍においてF4H-1「ファントムII」と呼ばれた機種は4の番号を引き継ぎ、F-4B「ファントムII」となりました。同時に空軍にはF-110A「スペクター」という戦闘機もありましたが、これは海軍の「ファントムII」と同じ機体だったのでF-4Cと改められ、愛称も海軍と同じ「ファントムII」へ統一されました。
なおF-4B、F-4Cなど末尾につくBやCは開発されたサブタイプの順に与えられたものであり、F-4Aも存在するのですが、これはF4H-1のうちごく最初期に生産された量産前の少数機にのみ与えられています。

F-7「シーダート」水上ジェット戦闘機(XF2Y)。降下飛行中に水上機として唯一音速に達した。サンディエゴ航空宇宙博物館にて(関 賢太郎撮影)。
新しい名前が与えられたもののうち、とても面白いのが唯一実用機ではなかったF-7「シーダート」です。当初XF2Yと呼ばれたこの機は史上唯一の超音速に達した水上ジェット戦闘機でした。しかも1950年代に開発が中止となっていたにも関わらず命名されたのです。おそらく超音速水上ジェット戦闘機というユニークさから「愛されていた」のではないでしょうか。
●1962年制定、米軍戦闘機の名前
・F-1「フューリー」(旧名FJ)
・F-2「バンシー」(旧名F2H)
・F-3「デモン」(旧名F3H)
・F-4「ファントムII」(旧名F4H)
・F-5「フリーダムファイター」(初命名)
・F-6「スカイレイ」(旧名F4D)
・F-7「シーダート」(旧名XF2Y)
・F-8「クルーセイダー」(旧名F8U)
・F-9「パンサー/クーガー」(旧名F9F)
・F-10「スカイナイト」(旧名F3D)
・F-11「タイガー」(旧名F11F)
新しいルールに基づき命名された最初の新規機種がYF-12「ブラックバード」(先頭のYは試作機をあらわす)であり、以降、F-14「トムキャット」、F-15「イーグル」、F-16「ファイティングファルコン」、YF-17「コブラ」、F/A-18「ホーネット」、F/A-18E/F「スーパーホーネット」、F-20「タイガーシャーク」、F-21「クフィル」(唯一のイスラエル製)、F-22「ラプター」、YF-23「ブラックウイドゥII」と続きます。
怪しくなりはじめる命名規則、「18」のあたりから?なおYF-12、YF-17、F-20、YF-23は実用化されず、またF-13、F-19は欠番、F-5、F-21は訓練用でありアメリカでは実戦配備されませんでした(F-5は他国への供与機。アメリカ軍機としては評価試験でわずかに実戦投入されたことはある)。F-19だけは極秘裏に開発中であったステルス戦闘機に命名されるものと推測されていましたが、実際に与えられた名称はF-117「ナイトホーク」でした。

F-20「タイガーシャーク」軽量戦闘機と兄弟機T-38練習機。F-5を原型とする新規設計機も実用化されず。カリフォルニア科学センターにて(関 賢太郎撮影)。
F/Aという独自の記号を持つF/A-18はかなり事情が複雑です。YF-17を原型に新しく艦上戦闘機型のF-18、艦上攻撃機型のA-18というふたつの機種が開発される予定だったものの、1機種に統合されたことにより独自のF/A-18という名称が与えられました。非常にわかりにくいのですがF/A-18E「スーパーホーネット」はF/A-18とは完全に別の新規設計された戦闘機です。
ちなみにアメリカ空軍は2002(平成14)年から2005(平成17)年のわずか3年間だけF-22をF/A-22という名称で呼んでいました。当時F-22は発注数の大幅な減少が問題となっており、「F/A-22は攻撃機としても使える」ことをアピールしなんとか減産を防ごうというイメージ戦略だったようですが、何の効果もなかったようですぐにF-22に戻されてしまっています。
※一部誤字を修正しました(7月2日10時30分)。
【写真】欠番ではない「17」と「23」

YF-17「コブラ」(手前)、YF-23「ブラックウイドゥII」。両機とも実用化されなかったもののYF-17はF/A-18へ発展。