ゴミ収集車や宅配車など、いわゆる「はたらくクルマ」では「バックします、ご注意ください」といった音声が流れます。安全のために設けられているものの、これをあえて鳴らさないというケースもあります。

「音がうるさい」 自治体どう対応?

 大型トラックや観光バス、それより小さな宅配トラックやゴミ収集車などでは、「バックします、ご注意ください」「左へ曲がります、ご注意ください」といった音声と警告音が流れることがありますが、以前と比べて、この音声をあまり聞かなくなった気もします。

「バックします、ご注意ください」は騒音なのか はたらくクルマ...の画像はこちら >>

ゴミ収集車のイメージ(乗りものニュース編集部撮影)。

 実際にはどうなのでしょうか。消防車やゴミ収集車といった特殊車両の架装で知られるモリタグループの持ち株会社、モリタホールディングス(東京都港区)によると、「音声装置の装着が減っているわけではありません。ただ、ゴミ収集車やバキュームカーといった環境衛生車においては、夜間や早朝の作業でご迷惑にならないよう、音量を半減させたり音を消したりできることもあり、以前よりも聞かなくなったと感じられるかもしれません」とのこと。

 つまり、このような音声装置を装着していても鳴らさないケースがあるようです。東京都豊島区でごみ収集事業を管轄するごみ減量推進課は、次のように話します。

「歩行者が通る環境で収集作業を行うこともありますので、バックや右左折時も含め、基本的には音声で注意を促しています。しかし、住宅密集地や狭小地など、区民の方から『音声がうるさい』といったお声をいただいた場所については、音声をオフにしています」(東京都豊島区 ごみ減量推進課)

 豊島区においては、特定の時間帯や場所で音声を消すといった決まりはなく、要望が寄せられた場所において、現場レベルで個別に対応しているそうです。

安全のための装置、メーカーも騒音対策重視

 日野自動車によると、そもそもこうした音声装置はメーカーオプションではなく、架装メーカーあるいはユーザーが後付けしているものだそうです。モリタホールディングスは、「『道路運送車両の保安基準』で装着が義務付けられたものではありません。歩行者などに対する安全への配慮から、お客様(自治体など)および架装メーカーが自主的に装着しているものです」とのこと。

 音声装置(バックアラーム)を製造販売する山口電機工業(東京都世田谷区)によると、ゴミ収集車やバキュームカーといった環境衛生車に限らず全体的に、取付台数が大きく増減している認識はないといいます。

「自治体や架装メーカーとしては、当然ながら音声が聞こえないと意味がないものですが、実際に使っているユーザーさんから、夜間の配達などで配慮しているといったお声が聞かれます。ユーザーさん自身がアフターで装着されるものについては特に、音を半減させたり消したりできるといった機能が重視される傾向です」(山口電機工業)

 そのような要求は20年ほど前から聞かれ、順次対応してきたとのこと。こうした音声装置は「R」ギアやウインカーに連動して作動するのが一般的ですが、スモールライトにすることで「夜間」であることを認識させて音量を半減させたり、スイッチでオフにしたりできるといいます。一方で、音量に変化のない商品を求める人もいるそうです。

 ちなみに、音声の出ない警告音だけのバックアラームは、山口電機工業が1963(昭和38)年に世界で初めて開発したものだといいます。

【写真】騒音防止へ、ゴミ収集車も「HV化」

「バックします、ご注意ください」は騒音なのか はたらくクルマの音声、あまり聞かなくなった?

モリタエコノスの回転式電動塵芥収集車「イー・セブン」。エンジン停止時も積み込み装置の電動駆動が可能で、作業中の騒音や排気ガスを低減できる(画像:モリタホールディングス)。

編集部おすすめ