全国には「国道」のイメージにそぐわないような、細く狭い、荒れた国道が存在します。香川県と徳島県の山間部を南北に縦断する国道193号もそのような「酷道」のひとつ。

岩をくりぬいただけの素掘りトンネルや、苔むした峠道など、「イベント」が満載です。

地図上では分断されている国道 実際には…

 全国には「国道」のイメージにそぐわないような、細く狭い、荒れた国道が存在します。このような酷い状態の国道は「酷道」と呼ばれ、それを好んで走る人いますが、なかでも四国は内陸部を中心に酷道の“宝庫”ともいわれます。

 四国の酷道として最も有名なのは、徳島県から四国山地を横断し高知県に至る総延長約350kmの439号、通称「よさく(与作)」でしょう。路線自体も長大で酷道区間が多いこともあり、多くのメディアでも取り上げられています。その439号に次ぐ酷道と評されるのが、四国山地の東部を縦断する193号です。

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徳島県那賀町の国道193号にある素掘りの大釜隧道(写真提供:小林秀樹)

 国道193号は香川県高松市から南下し、徳島県の山中を抜けて、同県海陽町に至る約150km(実延長)のルート。「いくさ(戦)」や、「いっきゅうさん(一休さん)」などと語呂合わせで呼ばれることもあります。起点となる高松市の中新町交差点からしばらくは、道幅も広い都市部の区間が続きますが、クルマはだんだんと目の前の山へと近づいてきます。30kmほど進み徳島県に入るころには山里の趣も。吉野川を渡り、さらに上り坂を進んでいくと、いよいよつづら折りの峠道に差し掛かります。

 その先、徳島県神山町と那賀町のあいだで、この国道は地図上ではいったん途切れます。

しかし実際の道は続いていて、この途切れた区間約8.8kmは徳島県道253号となっています。県道253号は国道193号と重複しているのですが、この区間だけ国道193号が分断されているため、県道253号に切り替わるのです。

 もっとも、この付近は対向車とのすれ違いもやっとの狭さでカーブが続くうえ、県道に切り替わる場所にも特に目印はなく、知っている人でないとそのことにはまず気付かないでしょう。神山町と那賀町の境界にあたる土須(どす)峠の「雲早トンネル」を越えると、「日本一長い林道」という「剣山スーパー林道」が分岐し、この地点に国道193号の標識も立っていますが、地図を確認するとここはまだ県道253号の区間。地図上で再び国道193号に切り替わる地点に、なぜか標識などの目印は立っていません。

ワイルドすぎるトンネルが口を開けていた!

 相変わらずクルマのすれ違いも難しい細い道を進んで行くと、やがて目の前に、切り立った岩肌にうがたれた大穴が現れます。「大釜隧道」という素掘りのトンネルです。

 大釜隧道は昭和中期に完成した全長102m、幅員4.2m、高さ4.5mのトンネルで、外部はコンクリートの補強もされておらず、岩をくり抜いただけのようなワイルドなたたずまい。入口の近くには、「日本の滝百選」に選ばれている「大釜の滝」もあるため、クルマを降りて滝やトンネルを見物する人の姿もちらほら。トンネル内部も岩肌がむき出しで、漏水で水たまりができているなど、通行はちょっとスリリングかもしれません。

 大釜隧道を抜けて進むと、こんどは「大轟(おおとどろ)の滝」の近くを通ります。滝を見ようとクルマを停めて歩く人を横目に、進んで峠を抜けると、目の前に那賀川が。

ここで2017年に完成した「出合ゆず大橋」を渡ります。並行する旧道は、川を渡った直後に片側交互通行の狭いトンネルがあり、トンネルの入口に信号機が設けられていました。

 国道195号と別れると、再び険しい峠越えに挑むことに。この「霧越峠」はその名のとおり、雲がかかることが多く、平地は晴れていてもここだけ雨ということもめずらしくありません。地面や斜面の苔がそれを物語っており、苔によるスリップにも気を付けながら、ガードレールもない曲がりくねった道を進んでいきます。

これが国道!? 岩肌むき出しの素掘りトンネルも 四国の「酷道」193号、走ってみた!

霧越峠付近には古びた案内看板も(写真提供:小林秀樹)

 最後の難関である霧越峠を越えると、窓の外には海部川が見えてきます。川沿い進み、国道55号と合流する終点の大里交差点に到着。太平洋はすぐそこです。

 なお、現地に行く際には、運転に十分注意し、不安を感じた場合は無理をせず自重してください。

※記事制作協力:風来堂

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