定期券には列車に乗るための「定期乗車券」だけでなく、駅改札内のコンコースやホームに入るための「定期入場券」もあります。定期入場券の購入費を補助する自治体もありますが、どのような目的で購入されるのでしょうか。
通勤や通学などで使う定期券は、正確には「定期乗車券」と呼ばれます。1か月や3か月など特定の期間分の乗車券をセットにしたきっぷといえます。
中央本線の高尾駅では「通り抜け」のため定期入場券を購入する人がいる(2017年11月、草町義和撮影)。
しかし、定期券は定期乗車券だけではありません。駅の改札内やホームに入るための「定期入場券」と呼ばれる定期券もあります。
JRの定期入場券は、一部の駅で「特に必要と認められる場合」(JRの旅客営業規則)に限り発売されています。有効期間は「1か月」のみ。JRの入場券は多くの場合、使用時間に制限(発売時刻から2時間以内)を設けていますが、定期入場券の時間制限はありません。それ以外は通常の入場券と同じ。車内への立ち入りは禁止されています。
発売額(大人)は4540円ですが、JR北海道とJR四国は5030円、東京の電車特定区間内は3880円、大阪の電車特定区間内は3890円。東京駅(3880円)の場合、1か月内に28回以上使えば、通常の入場券(140円)を買うより安くなる計算です。
現在、定期入場券のおもな使い道としては「通り抜け」があります。たとえば、駅の南口と北口を結ぶ自由通路(改札の外に設けられた通路)がなく、駅から遠く離れた踏切や地下通路へ迂回(うかい)しないと駅の反対側に行けない場合、入場券を買って改札内の通路を通れば時間がかかりません。定期入場券を使えば、通路を通るたびに入場券を購入する手間も省けます。
自治体が購入費を補助するケースも東武鉄道の伊勢崎線(東武スカイツリーライン)と野田線(東武アーバンパークライン)が乗り入れている春日部駅(埼玉県春日部市)は、東口と西口にそれぞれ駅舎を設けています。約60m離れた東西の両駅舎はふたつの通路で結ばれていて、エスカレーターやエレベーターも設置されています。ただ、この通路は改札内にしかなく、駅の外で線路を越えようとすれば、約200mから300m離れた踏切や地下通路を通らなければなりません。

東武鉄道の春日部駅は自由通路がない(2018年4月、草町義和撮影)。
しかも、この踏切はいわゆる「開かずの踏切」。時間帯によってはかなりの時間、列車の通過を待たなくてはなりません。地下通路もバリアフリー設備がなく、高齢者や体の不自由な人には使いにくいという問題を抱えています。そのため、春日部駅の東西を頻繁に行き来する人は定期入場券を購入し、改札内にある通路を通り抜けているのです。
春日部市も、春日部駅を通り抜けるための補助制度を導入。
ちなみに、春日部駅とその前後の線路を高架化する都市計画が、2019年3月8日に決まりました。これが実現すれば、改札内を通ることなく東口と西口を行き来できるようになります。
JR中央本線の高尾駅(東京都八王子市)も、北口と南口を結ぶ自由通路がないため、定期入場券を買って改札内を通り抜ける人が存在。八王子市は駅の橋上化とあわせた南北自由通路の整備を進めてますが、整備には時間がかかることから、時限的な支援策として65歳以上の人や障害のある人に、駅構内の通り抜けに必要な入場券、または定期入場券の購入費用の一部を補助しています。
【写真】「定期入場券」実物はこんな感じ!

東京駅の定期入場券。JRの定期入場券は一部の駅でのみ発売されている。