鉄道の線路は、バラスト(砂利、砕石)が敷かれている区間と、そうでない区間があります。地上区間に限らず、高架区間や地下区間も同様です。
鉄道の線路を見ると、バラスト(砂利や砕石)が敷かれている場所と、敷かれていない場所の2タイプがあることが分かります。地下鉄の多くの駅では、レールがコンクリート製のトンネルの床に直接設置されていますが、まれに線路にバラストが敷き詰められた駅も存在します。線路はどのように造り分けられているのでしょうか。
バラスト道床(2014年9月、恵 知仁撮影)。
レールは鉄道の要です。車輪を介して列車を支えるレールは、枕木に固定されて道床(どうしょう)に設置されています。私たちが普段よく目にする、バラストが敷かれた線路を「バラスト道床」といい、日本各地の様々な区間で採用されています。
バラストに用いられる2~7cm程度の硬くとがった砕石は、深くかみ合って枕木をしっかりと固定するとともに、列車の走行によって生じる振動を吸収します。雑草が生えず、雨水は石の隙間から排出するため、地盤が緩むこともありません。何よりもバラストは安く、どこでも採取できるため、古くから広く用いられてきました。
しかし、石のかみ合わせでレールと枕木を固定するバラスト道床は、列車が何度も走行するうちに砕石が摩耗してかみ合わせが悪くなっていきます。
そのため資材搬入や補修作業がしにくい狭いトンネル内で採用されたのが、トンネル構造物に直接レールを固定する「コンクリート道床(直結軌道)」です。鉄筋コンクリートの強固なトンネルは形が変わらないため、レールは歪んだり沈んだりせず、メンテナンスを大幅に省力化することが可能です。木製の枕木を使わないので交換の手間も省けます。
古めかしいバラスト道床はコンクリート道床に全面的に切り替えればいいように聞こえるかもしれませんが、バラスト道床にも利点があります。ひとつは費用が圧倒的に安いということ、そしてコンクリート道床では替えられないのが、騒音と振動の低減に優れているということです。
バラスト道床は、レール、枕木、バラスト、トンネル構造物と、列車とトンネルのあいだにいくつもの物体を介しています。しかし、コンクリート道床はトンネルが直接レールを固定しているため、列車が走っているときに発生する振動が、線路の外や沿線のビルなどにそのまま伝わってしまいます。
さらに、コンクリート道床は列車の発する騒音をそのまま反射してしまうのに対し、バラスト道床は砕石の隙間で音を吸収するため、5デシベルほど騒音が少なくなる利点もあります。このことから、民家などがある土地の下を通過するトンネルや、地上の高架線では、騒音や振動対策としてバラスト道床を使っているのです(コンクリート道床の上に、消音のためだけにバラストを撒く例もある)。
とはいえ、メンテナンスの手間を考慮すれば、できる限りバラスト道床を減らしたいのも事実。そこで1960年代末ごろから、「スラブ」と呼ばれるコンクリートの板にレールを取り付け、防振ゴムを介して路盤に設置する「防振スラブ軌道」や、防振ゴムを張り付けたコンクリート製の枕木をコンクリート道床に設置する「防振まくらぎ軌道」など、様々な防振軌道(道床)が開発され、地下鉄や新幹線、地上を走る在来線などで成果を挙げています。
しかしそれでも、将来の維持や改修、コストなどを考慮すると、バラスト道床を採用するメリットはまだまだあります。実際に東京メトロ南北線や副都心線など比較的新しい地下鉄路線でも、特に振動や騒音を抑制する必要がある区間にはバラスト道床を採用しています。このバラスト道床は、防振軌道の研究成果も反映されており、トンネルとバラストのあいだに防振シートを設置するなど、防振性をさらに強化しています。
※画像修正しました(6月11日7時40分)。
【写真】コンクリート道床の線路

コンクリート道床(防振まくらぎ軌道)の例。東京メトロ総合研修訓練センターの運転実習線は、地下鉄のトンネルが再現されている(2016年3月、乗りものニュース編集部撮影)。