深夜の東武野田線。最終列車も通過した後の午前1時、飲んで帰宅途中に突然、踏切が鳴動し閉まりました。
それは大型クルーズ船内での新型コロナウイルス感染拡大が話題となった2月中旬のことでした。さいたま市のとある駅前で深夜1時近くまでお酒を飲んでいた筆者(枝久保達也:鉄道ライター・都市交通史研究家)が、家に向かって歩いていると、東武野田線の踏切が突然、鳴動を始めたのです。思わず時計を見ると、ちょうど1時を指していました。
東武野田線の踏切。写真はイメージ(画像:写真AC)。
東武野田線の最終列車は、3月14日(土)のダイヤ改正で30分ほど繰り下がりましたが、当時の大宮駅(さいたま市)の最終列車は0時17分発岩槻行き。いくら列車が遅れたとしても、その時間に走るということはありえません。
工事用車両か何かが通過でもするのかと思い、踏切を待ちましたが、いっこうに車両はやってきません。踏切はしばらく鳴動した後、何も通過しないまま開き、その直後に踏切の照明がパッと消えました。
安全装置が作動した踏切の動作 この日、何があったのかいかにも怪談にありそうなシチュエーションです。
すると、その日は大宮公園~大和田駅間の橋梁架け替え工事の関係で、終電後に「高配停電(高圧配電停電)」と呼ばれる、停電措置を取っていたことが分かりました。
踏切は給電が途絶えると、自動的に1分間、遮断棒を降ろして鳴動する安全装置が付いており、突然の停電時だけでなく、工事などの計画的な停電の際にもその機能が作動するそうです。1時ちょうどに鳴り出した踏切の謎とは、工事のために深夜1時に送電が停止したということだったのです。
酔っぱらいの見た幻でも、幽霊列車でもなく一安心。この忙しい時期に、わざわざ調べて下さった東武鉄道さん、ありがとうございました。