今日の午後は、いい空気に触れたい。そんな気分の日にぴったりだったのが、イラストレーター・時川真一の個展『僕のTROUT Fishing Trip(鱒釣り旅)』。

「ちょっと釣り行く」くらいの気分で訪れる静かなカフェ空間とそこで過ごす穏やかな時間。今回はそんな素敵な釣りにまつわる展示を紹介したい。

※個展の開催はすでに終了

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時川真一というイラストレーター

トキシンこと時川真一は、やわらかな色使いと穏やかなタッチの作品が印象的なイラストレーター。近年では釣りメーカーのグッズやカタログの仕事でもご活躍されているので、釣り好きならそのイラストを一度は目にしたことがあるはずだ。強いコントラストや際立った派手さはないけれど、静かに目に留まり、じわっと心に残る。

風景の中に人がいて、自然の中に時間が流れている。そんな空気ごと描くような作風が彼の作品の魅力だ。どこか懐かしくて、でも新しい。見ていると、自分の中の釣りの記憶とそっと重なるような感覚がある。釣り人に人気の理由はきっとそこにあるように思う。

本人の印象

時川さんと初めてお会いしたのは、昨年東京で行われたイベント「第16回ハンドクラフトエキシビジョン」。そのとき「この人の作品はご本人そのものだ」と感じた。やわらかくて、穏やかで、あたたかい、まるで南国の午後のような、作品そのままの人柄の人物だった。

作品の魅力とは

作品に現れる何とも形容し難い不思議な優しさと魅力。お話を伺ううちに、それは時川さんのこれまでの経験が作品に滲み出ていることを実感した。

今回の個展で展示された北海道での釣り旅、海外釣行での経験、そして日々の沖縄での暮らし。お話を聞き進むにつれて、そこに描かれているのはただのイラストではなく、その時その場に流れていた釣り人としての時間や感情であることに気がついた。

だからこそ、多くの釣り人が自分の中にあるいつかの風景と時間に思わず彼の作品を重ねてしまうのだろう。イラストレーター時川真一の作品の魅力の一端を垣間見た気がした。

個展『僕のTROUT Fishing Trip』

個展のテーマは「鱒釣りの旅」。ただし、釣りをしない人でもまったく問題なく楽しめる。むしろ、釣りを知らない人にこそ届くゆったりした時間がここにはある。

※個展の開催はすでに終了

会場の作品には、釣りの場面だけでなく、川辺の静けさや、移動の途中、ふと立ち止まった瞬間の景色も並ぶ。どの作品も主張しすぎず、まるで「少しだけここで休んでいきませんか」と語りかけてくるように感じられる。筆者も気がつくと取材を忘れ、思わず長時間作品に見入ってしまっていた。

釣り界隈で話題のイラストレーター「トキシン」こと時川真一さんの個展に行ってみた
釣り界隈で話題のイラストレーター「トキシン」こと時川真一さんの個展に行ってみた
優しい色調と柔らかいタッチが魅力(提供:TSURINEWSライター・夏野)
釣り界隈で話題のイラストレーター「トキシン」こと時川真一さんの個展に行ってみた
釣り界隈で話題のイラストレーター「トキシン」こと時川真一さんの個展に行ってみた
自分の中にある風景と重ねて思わず長時間眺めてしまう(提供:TSURINEWSライター・夏野)
釣り界隈で話題のイラストレーター「トキシン」こと時川真一さんの個展に行ってみた
釣り界隈で話題のイラストレーター「トキシン」こと時川真一さんの個展に行ってみた
過去の貴重な原画も展示(提供:TSURINEWSライター・夏野)

ライブ感も楽しめる展示

私が訪れた4月5日にはトークショーやライブペインティングも開催された。ご本人の口から語られる作品の元となった釣行記、ライブペインティングでは目の前で少しずつ形になっていく作品の過程。貴重で新鮮でちょっと特別な体験だった。

釣り界隈で話題のイラストレーター「トキシン」こと時川真一さんの個展に行ってみた
釣り界隈で話題のイラストレーター「トキシン」こと時川真一さんの個展に行ってみた
当日はライブペインティングも開催された(提供:TSURINEWSライター・夏野)
釣り界隈で話題のイラストレーター「トキシン」こと時川真一さんの個展に行ってみた
釣り界隈で話題のイラストレーター「トキシン」こと時川真一さんの個展に行ってみた
ご本人によるトークショーも開催(提供:TSURINEWSライター・夏野)

そして最後にはジャンケン大会。

ライブペインティングでつい先ほど描かれたばかりの作品が景品になる場面もあり、会場は和やかな盛り上がりに包まれた。この距離の近さと遊び心も、時川さんの「らしさ」であり魅力のひとつだ。

釣り界隈で話題のイラストレーター「トキシン」こと時川真一さんの個展に行ってみた
釣り界隈で話題のイラストレーター「トキシン」こと時川真一さんの個展に行ってみた
ジャンケン大会の様子(提供:TSURINEWSライター・夏野)

個展会場は宮ヶ瀬ヴィレッジ

展示が行われている宮ヶ瀬ヴィレッジのカフェ空間もまた魅力的。ふらっと寄り道しつつ、コーヒーを飲みながら、気取らず、心地いい距離感と落ち着いた雰囲気でゆっくり作品を楽しめる。今回の作品とぴったりとマッチして優しい時間を生み出している。

釣り界隈で話題のイラストレーター「トキシン」こと時川真一さんの個展に行ってみた
釣り界隈で話題のイラストレーター「トキシン」こと時川真一さんの個展に行ってみた
展示会場のカフェは落ち着いた雰囲気(提供:TSURINEWSライター・夏野)
釣り界隈で話題のイラストレーター「トキシン」こと時川真一さんの個展に行ってみた
釣り界隈で話題のイラストレーター「トキシン」こと時川真一さんの個展に行ってみた
会場のカフェは美味しいメニューも魅力(提供:TSURINEWSライター・夏野)

作家の言葉ににじむもの

印象的だったのは、ご本人のこの言葉。「これまでのいろんな場所での釣りで見てきた景色や時間は、無意識に作品の色彩に現れている気がします」シンプルだけど、この展示のすべてを表しているように感じた。

作品や展示その全てから感じられる穏やかな優しさは、単なる技術だけでなく、これまでご本人が過ごしてきた時間そのものから生まれているのだ。

穏やかで優しい時間

作品を知らなくても、この個展は十分に楽しめる。むしろ先入観がない方が、この作品たちの穏やかで優しい空気をまっすぐに受け取れると思う。

ふらっと立ち寄ったカフェで穏やかな色彩と静かな空間にひたる午後。それは近所の小川へちょっと小物釣りに行くような楽しさとよく似ている。イラストレーター時川真一の個展はそんな穏やかで優しい時間をくれる展示だった。

<夏野/TSURINEWSライター>

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