佐藤勝利が主演する舞台、PARCO PRODUCE 2025「ブロードウェイ・バウンド」が9月4日から上演される。

 本作は、長年ブロードウェイの第一線で活躍したコメディー作家、ニール・サイモンによる“B・B三部作”と呼ばれる自伝的作品。

迫り来る第二次世界大戦を背景に、貧しいながらもたくましく生き抜くユダヤ人一家と主人公ユージン少年の思春期を描いた「ブライトン・ビーチ回顧録」、徴兵されたユージンが新兵訓練キャンプで過ごした日々と彼の初恋と初体験を描いた「ビロクシー・ブルース」、そして戦後、青年となったユージンが家族への愛情と失望の狭間で揺れ動きながらも夢に向かう「ブロードウェイ・バウンド」の三部作として描かれている。佐藤は、2021年に小山ゆうな演出で「ブライトン・ビーチ回顧録」に出演。今回は再び小山とタッグを組んで完結編となる「ブロードウェイ・バウンド」に挑む。

 佐藤に本作への思いや役作りについて、さらには本作でも描かれる「絆」を感じたエピソードなどを聞いた。

-2021年以来の小山さんとのタッグになります。本作の上演が決まったときの率直な感想を教えてください。

 約4年前に「ブライトン・ビーチ回顧録」に出演させていただいたときは、初めてのストレートプレーだったこともあり、とにかく目の前の舞台に精いっぱいでした。ただ、頭のどこかで「いつか他の作品も同じチームでやれたら」という思いはありましたし、(父親・ジャックを演じた)神保(悟志)さんからも「(この“B・B三部作”を)ライフワークにしたらいいんじゃない?」とおっしゃっていただき、(ライフワークなんて)まるで夢のようだと思っていたので、今回、その夢がかなって本当にうれしいです。

-「ブライトン・ビーチ回顧録」を経て、佐藤さんの中で俳優としての大きな成長があったのではないですか。

 「ブライトン・ビーチ回顧録」もそうですが、パルコさんでは「モンスター・コールズ」にも出演させていただきました。それぞれの作品でいろいろな経験をさせていただき、得るものは多かったですが、自分がどう成長したかは自分では見えづらいところでもあります。ただ、いろいろな劇場に立たせていただいたので、客席にどう届けるのかを学ぶことはできたのではないかなと思います。

-「ブライトン・ビーチ回顧録」では、14歳のユージンを演じましたが、今作ではユージンも23歳になりました。台本を読んだり、本読み稽古を通してユージンの変化をどんなところに感じていますか。

 年齢によるところも大きいと思いますが、前回はフレッシュさ、動きのコミカルさなど子どもならではのコメディー感があって、スピードやフレッシュさで押し切れたところがあったと思います。舞台上でも生き生きとしていることを求められていたなと感じていました。ただ、今回はせりふに使われているワードも変わり、子どもっぽくは演じられないので、普通の会話の中で笑いを起こせるように演じていけたらと思っています。今回は(入野)自由くんが演じる兄のスタンリーとの掛け合いが多いのですが、4年ぶりでもすぐに家族に戻れた感覚があったので、そこは心配ないかなと肌で感じています。

-佐藤さんが演じるユージンは、いつかブロードウェイに出てコメディー作家になることを夢見る青年です。ユージンに共感できるところはありますか。

 ユージンは臆病で「本当に自分が書けるのだろうか」とか「自分が書いた本は面白いのかな?」と自分自身で疑っているところがあります。でも、身近に楽観的な兄のスタンリーがいるからユージンは前に進めたのだと思います。僕も背中を押されないとやらないところはあるので、そうしたところは共感できますし、スタンリーのような存在は大事だなと思います。

-本作で描かれる家族像について、佐藤さんはどのように感じていますか。

 今回の作品では、ユージンの姿を描くと同時に、両親の関係も描かれていきます。二人の関係性も雲行きが怪しくなっていくんですよ。きっとお父さんの印象も「ブライトン・ビーチ回顧録」とはまた違うものになると思います。厳格なユダヤの父親というイメージから、リアルな男、リアルな父親になると思うので、そこは大きな違いかなと思います。夫婦が仲良く暮らすというのは特別なことではないと思っていましたが、実際には(二人の間に)いろいろなことが起こって、いろいろな思いがあって…夫婦として続けていくには大変なこともあるんだなと思いました。

-佐藤さんご自身の家族のエピソードも教えてください。

 僕の兄が今、ニューヨークに住んでいるんです。そこで、兄の娘、姪っ子を本物のブライトン・ビーチに連れて行ったそうで、写真を送ってくれました。僕の姪っ子、初ビーチがブライトン・ビーチなんですよ。すごくきれいな海で夏は気持ちよく過ごせると、ブライトン・ビーチについて教えてもらいました。実はこのエピソード、(本作の)初日の会見で話そうと思っていたんです(笑)。なので、また話すかもしれませんが、そのときは記事を見なかったことにして新鮮に驚いてください(笑)。

-この作品は「家族の絆」と「夢」をテーマにした作品ですが、佐藤さんが最近、絆を感じた出来事は?

 今(取材当時)、僕たちのグループtimleszは新しい体制になってライブツアーを行っていますが、仕事の都合で出られないメンバーがいる日程もあったんです。なので、福岡公演の2日目についに8人そろって、初めて8人でライブを行ったんですが、そのときに(橋本)将生が泣いてしまって。初ステージとなった初日では将生は泣かなかったんですよ。すごく感動していましたが、涙はあふれていなかった。でも、8人そろったときに初めて将生が泣いていて。このメンバーになってまだ半年も経っていないくらいですが、すてきだなと思いましたし、すでに絆ができていることを実感しました。これからもきっとそうしたエピソードや思い出がどんどん積み重なっていくのだと思います。

-8人そろったとき、佐藤さんも涙が出てきた?

 将生は僕を見て泣きそうだったから泣いたと言っていましたが、泣きそうになったわけではないです(笑)。もちろん感動しましたし、繋がりは強く感じましたが。

-では、本作のもう一つのテーマである「夢」についても教えてください。今の佐藤さんの夢は?

 今はこれというものはないかな。もちろん、グループの目標が僕の夢でもありますが、今の状況は、ある種、夢がかなっている最中でもあると思うので、それをかみしめているところなのだと思います。

なので、まずはグループを続けること。続けるというのは簡単なことではないし、当たり前のことでもないので、夢といったらそれかもしれません。

-本作で初めて舞台を観劇する人も多いと思いますが、本作の楽しみ方を教えてください。

 演劇というと、敷居が高く感じたり、一歩踏み出すのが難しいジャンルかもしれませんが、僕はそれほど肩肘を張って見るものではないと思います。お客さんは何も準備する必要はありません。構えないで純粋に楽しんでいただけたらと思います。特に今回はコメディー感のある作品なので、ただ笑って、自然と心を動かして楽しんでいただけたらと思います。

(取材・文・写真/嶋田真己)

 PARCO PRODUCE 2025「ブロードウェイ・バウンド」は、9月4日~28日に都内・PARCO劇場、10月2日~13日に大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA WWホールで上演。

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