トヨタは、今年4月に国内デビューしたRAV4の受注状況について、発売から1ヵ月強となる5月15日時点で約2.4万台を受注したと発表した。2.4万台というとRAV4の国内月間販売目標(3000台)の8倍にあたるから、初期受注は好調といっていい。

 ただ、販売台数の成否は瞬間的なスタートダッシュではなく、ある一定の長い目で判断しなくてはならない。よって、今回トヨタが発表した受注状況のなかで、台数以上に注目すべきツボは”購入者のうちの約4割が20~30代”と”全体の9割が4WDモデル”という部分だと思う。

 日本で新型RAV4を買った4割が20~30代……という前者の事実は、”若者のクルマばなれ”がさけばれる現代ニッポンで、なんともポジティブな話題である。また、RAV4では2.0リッター車と2.5リッターハイブリッドの両方に安価な2WDも用意されているのに、販売全体の9割が4WD……という点にも注目したい。

 新車の初期受注は、上級グレードに人気が集まる傾向にあるのは事実だが、この高い4WD比率は、新型RAV4が趣味や遊びに使い倒す”ヨンク”として、きちんと認識されている証拠でもある。

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 1990年代半ばに登場した初代RAV4の衝撃は、アラフォー以上の世代ならご記憶だろう。

それまでヘビーデューティ設計のクロスカントリー車ばかりだった当時の”ヨンク”界隈に、軽量コンパクトかつ洒脱なデザインで姿を現した初代RAV4は、間違いなくエポックメイキングな存在だった。従来のクロスカントリー車がトラックと同じ独立フレーム構造だったのに対して、RAV4は普通の乗用車と同じモノコックボディ構造だったのが大きな特徴で……と、ここまで書けばお気づきのように、初代RAV4は今風の”SUV”の元祖といえる1台でもあった。

 その後のRAV4は定番SUVに成長するも、2013年に登場した4代目は日本では売られなかった。ただ、その4代目は皮肉にも世界的には空前の大ヒット作となり、2016~17年は2年連続で世界のベストセラーSUVに輝いて、一時は”世界で一番売れているトヨタ車”にまでなった。その理由をトヨタの担当者は「従来の3世代は後発の他社SUVよりアウトドアテイストを色濃く残していましたが、4代目はあえて舗装路が似合う乗用車デザインを採用。それで世の中の時流にうまく乗れたことが大きかった」と分析する。

 しかし……数年ぶりの日本復帰ともなる新型RAV4はご覧のように、意図的に悪路っぽいタフ感を押し出したデザインで登場した。これはある意味で、前身となった4代目が大ヒットしたツボのあえて真逆をいっているわけで、なんとも冒険的な戦略転換でもある。

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 見た目だけではない。新型RAV4は、今回初登場となる”ダイナミックトルクベクタリングAWD”を筆頭に、エンジンや価格に合わせて3種類の4WD機構を細かく使い分ける。最近のSUV……というか、世界的にはもはやSUVが乗用車の基本形となりつつあるから、もはや2WD専用のSUVも多い。

 なのに、4WDをわざわざ何種類も用意するなんて……とツッコミを入れたら、前出担当者は「RAV4って車名に”ヨンク”という意味が入っているんですよ!」と、あらためて目からウロコ(笑)の返しをしてくれた。

 新型RAV4自慢の新機軸であるダイナミックトルクベクタリングAWDは、後輪の左右トルク配分を電子制御するハイテクであり、手元のダイヤルを切り替えるだけで4WDの効き具合も変わる。正直なところ舗装路ではあまり特徴がないのに、ダート道や雪道などの滑りやすい路面になったとたんにグリグリと曲がりだすのが面白い。

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 まあ、他社の同種技術がどちらかというとハイグリップな舗装路での安定性や旋回性能にツボを合わせているのとは対照的で「せっかくなら、普段乗っているときにもわかりやすいセッティングにしてよ!」といいたくなる気持ちもなくはない。ただ、なにごとも、やりすぎない慎重派なところが万人に嫌われないトヨタの伝統でもあり、好意的に見れば、舗装路では面白みに欠けても悪路で輝くのはいかにもトヨタらしい……といえなくもない。

 考えてみれば、200(第33回参照)にプラド(第114回参照)、70(第96回参照)などのランドクルーザー兄弟に加えて、ハイラックス(第145回参照)まで取りそろえるトヨタ……いや”TOYOTA”は、世界の奥地にいくほど絶大な支持(というか、それ以外は使いモノにならない!?)を得ている絶対信頼のブランドである。そんなTOYOTAのベストセラーSUVが軟弱で草食系の街乗り専用タイプでは、なるほど物足りない。

 トヨタSUV伝統のツボをあらためて追求した新型RAV4が、日本でも若者に売れているとは、じつにめでたい。

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【スペック】
トヨタRAV4 アドベンチャー
全長×全幅×全高:4610×1865×1690mm
ホイールベース:2690mm
車両重量:1630kg
エンジン:直列4気筒DOHC・1986cc
最高出力:171ps/6600rpm
最大トルク:207Nm/4800rpm
変速機:CVT
WLTCモード燃費:15.2km/L
乗車定員:5名
車両本体価格:313万7400円