3歳牡馬三冠の最終戦、GI菊花賞(阪神・芝3000m)が10月23日に行なわれる。

 過去10年の結果を振り返ってみると、1番人気は5勝とまずまずの成績を残しているが、伏兵の台頭も多く、波乱含みの一戦と言える。

日刊スポーツの奥田隼人記者もこう語る。

「多くの馬が初距離となる3000m戦とあって、人気薄の激走も目立っているレース。2017年には、1番人気のキセキが勝利したものの、2着に10番人気のクリンチャー、3着には13番人気のポポカテペトルが入って、3連単では55万円超えという高配当が飛び出しました。

 直近5年を見ても、3連単で万馬券にならなかったのは1度だけ。平均配当が15万4420円と、決して堅いレースとは言えません」

 しかも、今年はGI皐月賞(4月17日/中山・芝2000m)、GI日本ダービー(5月29日/東京・芝2400m)と、春の二冠で1、2着に入った馬が不在。どの馬が1番人気になるのかさえ予想がつかず、かなり混沌とした様相となっている。

奥田記者もその点について触れ、こう続ける。

「クラシック3戦に皆勤出走となる馬も、アスクビクターモア(牡3歳)、ジャスティンパレス(牡3歳)、ビーアストニッシド(牡3歳)と、わずか3頭。多くの新興勢力を交えた一戦は、波乱ムードが漂います。

 平地GIにおいて、1番人気は昨年のホープフルSから15連敗中。先週の秋華賞でも牝馬三冠を狙った1番人気スターズオンアースが敗れ、この記録がどこまで伸びるのか、という点も注目されます」

 ともあれ、秋華賞ではオークス2着のスタニングローズが勝利し、同3着のナミュールが2着に入って、春のクラシック組が好走。そこで、奥田記者は菊花賞でも春のクラシック出走組に期待を寄せて、穴馬候補に2頭の名前を挙げた。

「まず気になるのは、セイウンハーデス(牡3歳)です。春はダービートライアルのリステッド競走・プリンシパルS(5月7日/東京・芝2000m)を制して、ダービーに参戦。同レースでは、初のGI挑戦でレース中に気難しさを見せて11着に敗れました。

主役不在の菊花賞。穴党記者が推すのは相当な変わり身が期待でき...の画像はこちら >>

菊花賞での大駆けが期待されるセイウンハーデス

 その後は休養に入って、秋はGIIセントライト記念(9月19日/中山・芝2200m)から始動。2番手につけて積極的にレースを運んで4着と奮闘しました。上位とはやや差がありましたが、勝負どころの手応え以上に、粘りを見せた印象があります。

 デビュー時から他馬を気にするなど、レース中は繊細な面を見せることが多く、同馬を担当する橋口慎介厩舎の千野智康助手は、その走りについて『100点をとれるのに、いつも80点くらいにまとめて走ってくるんです』と表現しています。

 しかし今回は、初のブリンカーを着用予定。実際に着用して臨んだ1週前の追い切りでは、併せた相手を4馬身半突き放す、抜群の動きを披露しました。

 時計も、78秒0-11秒3と上々の数字をマーク。変わり身が見込めるその動きを見て、橋口調教師も『追い切りはもともと動く馬ですが、それにしてもよかったですね。楽しみな状態。

前走を使って、動きにさらにキレが出てきました』と、声が弾んでいました。

 母の父が2001年の菊花賞の勝ち馬、マンハッタンカフェ。その血筋から、3000mという距離に関してもプラスに働くのではないでしょうか。事実、折り合い面には不安のないタイプですし、好位で運べるレースセンスも持ち合わせています。

 気性的な面から、これまでは80点くらいの走りにとどまっていたかもしれませんが、馬具や距離の効果で20点上乗せすることができれば、アッと驚く激走を見せてもおかしくありません」

 奥田記者が推すもう1頭は、プラダリア(牡3歳)だ。

「ダービー5着の実績馬ながら、秋初戦のGII神戸新聞杯(9月25日/中京・芝2200m)では8着と完敗。

この敗戦で人気を落としそうですが、その分、馬券的な妙味は増します。

 そもそも前走は、レース前から陣営のトーンもあまり上がっておらず、調子はひと息の状態でした。本来なら坂路で行なう最終追いも、初めてCウッドで追われたほど。実際にレースでも、勝負どころでの反応がよくありませんでした。

 しかし今回は、一度叩かれたことで、状態は確実にアップ。1週前の追い切りでは、主戦の池添謙一騎手がまたがっていい動きを披露しました。

おかげで、池添騎手も『前回は状態が全然だったので、ガラッと変わらないと厳しいと思っていたけど、今日の動きはめちゃくちゃよかった。春のいい頃に近づいているし、本番が楽しみになった』と好感触を得ていました。

 同馬を担当する池添学厩舎の平野健一助手も、『今回はキャンター、ふだんの追い切りの動きから、前走とは全然違う。動きが大きく見えます。カイ食い、毛づや、ボロ、この3つのどれを見ても体調のよさがうかがえます』と満足気。前走からの上積みは、間違いありません。

 ダービー5着は素直に評価できるものですし、今回のメンバーのなかでは同3着のアスクビクターモアに次ぐ上位着順。本調子を取り戻せば、地力上位の存在と言えるでしょう。

 ディープインパクト産駒は過去5年で3勝と、レースとの相性も抜群。池添騎手が『2400mも走れていた馬だし、距離も心配してない』と言うように、3000mの距離も問題はありません。前哨戦惨敗からの巻き返しは十分にあると見ています」

 確たる本命不在の"乱菊"。春の大舞台を経験し、ひと叩きしての変わり身が大いに見込める2頭の大駆けに期待したい。