秋のマイル王決定戦となるGIマイルCS(阪神・芝1600m)が11月20日に行なわれる。

 京都競馬場の改修工事のため、今年も一昨年、昨年に続いて阪神競馬場で施行される。

同競馬場で行なわれた過去2回は、1番人気のグランアレグリアが連覇を達成。堅い決着で収まってきた。

 しかし、それ以前は1番人気が10連敗。3連単ではしばしば好配当が生まれていた。そして「絶対女王」がターフを去った今年、上位混戦で波乱含みの状況にある。実際、デイリー馬三郎の吉田順一記者はこう語る。

「舞台設定によって、ガラッと着順が変わりそうなくらい上位拮抗のメンバー構成。時計勝負になっても、タフな舞台になっても走れる馬がちらほらいますが、人気的な妙味や攻めの気配などを加味すると、穴っぽい馬から入っても面白い一戦かもしれません」

 そして吉田記者はまず、阪神コースの、ここに来ての馬場状態の変化に注視する。

「阪神競馬場の芝コースは、ここまで6週使用してきたことと、先週日曜日に雨中で競馬が行なわれたことで、馬場の悪化が急速に進んだ印象があります。コースの大半は3頭分ほど、内回りは4コーナーからゴールまでの直線は、5頭~6頭分は凸凹が目立っています。

 今回の舞台となる外回りに関しては、雨中での競馬が少なかったこともあり、3~4コーナーにかけては1頭~2頭分ぐらいの凸凹があるくらい。逃げ+先行馬でもうまく内を使って、直線に入ってから馬場の中央まで出せれば、十分に戦えると思います。

そういう意味では、枠うんぬんよりも、立ち回り次第といったところでしょうか。

 ただ、気温が低いと野芝の回復はあまり見込めないため、路盤の悪化はそのままダメージとして残る可能性があり、荒れ馬場の巧拙などの差が出てくるかもしれません。さらに、先週と同じく雨中での競馬になれば、キレ味を身上とする跳びのきれいな馬たちのパフォーマンスダウンは避けられないでしょう。

 結果として、時計勝負にならない馬場になると、好走できる馬が増えてくることが考えられます。となると、より混戦に拍車がかかるのではないでしょうか」

マイルCSは有力3歳馬2頭でなく、荒れ馬場でも力を発揮できる...の画像はこちら >>

今の阪神の馬場が合いそうなピースオブエイト

 そうした状況を受けて、吉田記者は2頭の穴馬候補を挙げた。1頭目は、先週のGIエリザベス女王杯でも馬場状態を読みきって、ジェラルディーナを勝利に導いたクリスチャン・デムーロ騎手が騎乗するピースオブエイト(牡3歳)だ。

「デビュー3連勝後に挑んだGI日本ダービー(5月29日/東京・芝2400m)は、キャリアの浅さや距離、馬場適性などによって18着と惨敗。その後、休養を挟んで臨んだGIII小倉記念(8月14日/小倉・芝2000m)も、ダービー惨敗の影響を感じさせる状態で5着に敗れ、さらなる立て直しを余儀なくされました。

 しかし、復帰戦となった前走のGII富士S(10月22日/東京・芝1600m)では、復調を感じさせる走りを見せて4着と健闘。上位3頭には伸び負けした形ですが、発馬のミスが堪えて本来の競馬ができなかったことを踏まえれば、悪くない結果だと思います」

 阪神競馬場では2戦2勝。ともに芝1800m戦だったが、今回と同じ外回りコース。得意舞台で巻き返しを果たしてもおかしくない。

「ツメや少し短めのつなぎ、さらにその走法から、渋化+荒れ馬場でパフォーマンスが上がるタイプと見ています。やや重の馬場で逃げきり勝ちを収めたGIII毎日杯(3月26日/阪神・芝1800m)の時のような、しぶとさが生きる馬場、いいポジションでの競馬ができれば、鞍上込みで侮れない1頭になると思いますよ」

 吉田記者が推奨するもう1頭も、今春のダービーに出走した3歳馬だ。

マテンロウオリオン(牡3歳)です。同馬もダービーでは17着と惨敗を喫しましたが、短期間で3度の関東遠征、かつ適性外の距離が響いたもの。その結果は、度外視していいでしょう。

 秋の復帰戦となった前走のGIIスワンS(10月29日/阪神・芝1400m)は、ダービー惨敗の影響がないかを確認する一戦でしたが、結果は7着。

ただ、後方からこの馬らしい末脚を発揮できたことは収穫です。ひと叩きしたことで、馬体も引き締まり、状態は確実に良化しています」

 春のGINHKマイルC(5月8日/東京・芝1600m)では、クビ差の2着。マイル戦では4戦4連対と、適距離に戻って本領を発揮しても不思議ではない。

「いずれも2着に入ったGIIニュージーランドトロフィー(4月9日/中山・芝1600m)やNHKマイルCの走りから、大外強襲のイメージが強いですが、少し荒れ馬場だったGIIIシンザン記念(1月9日/中京・芝1600m)では好位につけて、ロスなく回って最内を突いて快勝。時計勝負でも結果は残せているものの、血統や馬体、息の長い末脚から、今の阪神の馬場で一段とパフォーマンスが上がりそう。

 発馬によるロスがポイントになりますが、馬場状態から直線に入って(馬群が)横に広がりやすい状況は、この馬にはプラスに働く見立て。

"仕事人"横山典弘騎手の手腕に期待しています」

 断然の主役不在のマイル戦線。セリフォス(牡3歳)、ダノンスコーピオン(牡3歳)といった有力3歳馬だけでなく、人気薄の3歳馬2頭にも要注意だ。