高木豊が語るWBC2023 前編

理想のオーダーについて

 開幕が迫り、日に日に盛り上がりを見せる第5回WBC。果たして侍ジャパンはどんな戦いを見せるのか。

かつて大洋ホエールズ(現横浜DeNAベイスターズ)で活躍し、2004年のアテネ五輪では日本代表の守備走塁コーチを担った高木豊氏に、鈴木誠也が出場を辞退した中での理想のオーダーなどを聞いた。

高木豊のWBC理想オーダーは「6番・吉田正尚」に期待 ヌート...の画像はこちら >>

高木が6番での起用に期待した吉田

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――今大会のメンバーの印象はいかがですか?

高木豊(以下:高木) 若返りましたね。プロ野球全体を見ても新旧交代が進んでいますが、日本代表もそうなってきた印象です。

――メンバーに入っていない選手の中で、選んでほしかった選手はいますか?

高木 今回は辞退となった選手もいましたからね。坂本勇人(巨人)や柳田悠岐(ソフトバンク)、鈴木誠也(カブス)もそうですが、国際試合は経験がモノをいう時があるんです。そういう意味では、東京五輪で金メダルを獲った時に主軸だった選手たちが少し外れてしまったなと。


ただ、彼らも日本のため、自分のチームのために体を酷使している。無理して出てもシーズンに響くこともあるだろうし、仕方がないです。

――昨秋、高木さんに選出メンバーを予想していただいた時、1番センターで予想していた塩見泰隆選手(ヤクルト)は選ばれませんでした。

高木 塩見が入っていないということは、栗山英樹監督はラーズ・ヌートバー(カージナルス)と「心中する気なのかな」と思いました。確かに守備と肩はいいですし、送球のコントロールもいいのですが、打率や出塁率が低いので、1番に置くには抵抗があります。

 ただ、ヌートバーを呼んだ理由は「使いたいから」だと思うんです。
日本人選手のほうが細かいことができたり、力量もわかっていて使いやすいはずなのですが、それでもヌートバーを招集しているのはそういうこと。よっぽど悪かったら途中で代えるでしょうが、最初から外す選択肢はないはずです。

――選ばれたメンバーで高木さんがオーダーを考えると、1番は誰になりますか?

高木 山田哲人(ヤクルト)です。山田は調子が悪い時でも、1番に入っている時は比較的に気分よく打席に入っている感じですし、過去の国際大会でも1番で結果を出しています。昨シーズンは成績が悪かったですが、今年は足の状態も悪くないと思うので、足も使えるでしょう。

――2番はいかがでしょうか?

高木 上位3人は足が使えたほうがいいので、当初は2番・大谷翔平(エンゼルス)、3番には鈴木を考えていましたが、鈴木が出場辞退となったので2番・近藤健介(ソフトバンク)、3番・大谷翔平としたいです。



――追加招集された牧原大成選手(ソフトバンク)が起用される可能性は?

高木 まずないでしょうね。プロ野球の開幕日の3月31日に合わせて調整していたと思いますし、気持ちもイチから作らなきゃいけない。ソフトバンクでは"ジョーカー"とも言われて切り札的な使われ方をしたりしていますが、WBCでも代打や代走などの起用になると思います。

 牧原はバッティングもいいですが、やはり近藤のほうが一枚上です。ここまでの対外試合でも結果を出していますしね。守備には不安がありますが、肩の強さを考えるとヌートバーは本職で慣れているライトで、センターが近藤でいいと思います。


――4番はいかがでしょうか?

高木 4番は村上宗隆(ヤクルト)です。国際大会はピッチャーを小刻みに交代させるケースが多いので、打線はなるべくジグザグに組みたい。代表に選ばれるような選手はピッチャーの右左を苦にしないバッターも多いですが、念のため。なので、5番には右の山川穂高(西武)、岡本和真(巨人)、牧秀悟(DeNA)の中から状態のいいバッターを入れます。

 山川みたいな大型の選手は、ひとつ調子にのれば大会を通じて大丈夫だと思うのですが、どうきっかけを掴んでいくか。いずれにせよ、似たタイプの右の長距離砲が多いので、打順を組むのにちょっと苦労すると思いますよ。
確かに一発で局面を打開する可能性はありますが、福留孝介(元中日、カブスなど)のような短打も長打もあって、走力もあるようなタイプではないですから。

――高木さんは、以前から牧選手を高く評価していますね。

高木 牧のバッティングは推してますけど、不安は守備ですよね。キャンプの時の守備なども見ていると、やっぱファーストかなと。セカンドは山田になると思います。

 6番には吉田正尚(レッドソックス)を置きます。

6番という打順はポイントゲッター。相手チームは4番の村上に対して、日本で三冠王を獲っているということで警戒してくるはずです。それで、ランナーが溜まった状態で6番に回ってくる確率が上がると思うので、そこを勝負強い吉田に任せたいです。

――7番はどうなりますか?

高木 ヌートバーです。1番は先ほどお話した打率や出塁率が低いという理由で抵抗がありますし、7番ぐらいでスタートさせたほうが無難かなと。

 8番は甲斐拓也(ソフトバンク)で、9番は源田壮亮(西武)を固定でいいと思います。キャッチャーは、国際大会の経験という意味でもスタートは甲斐がいい。でも、洞察力やリードがいいのは中村悠平(ヤクルト)だと思っています。

 中村はいい意味で非常にリードがしつこいんです。「外にいくだろう」という時に、もう1回内にいったりね。解説をやっていても、甲斐のリードはだいたい読めるのですが、中村には意表を突かれる時が多いんですよ。バッティングも勝負強いですし、甲斐の状態次第では途中から中村に変わっていく可能性も十分にあると思います。

ポジションや打順もふまえたオーダーは以下です。

1番 セカンド   山田哲人(ヤクルト)

2番 センター   近藤健介(ソフトバンク)

3番 DH     大谷翔平(エンゼルス)

4番 サード    村上宗隆(ヤクルト)

5番 ファースト  山川穂高(西武)or 岡本和真(巨人)or牧秀悟(DeNA)

6番 レフト    吉田正尚(レッドソックス)

7番 ライト    ラーズ・ヌートバー(カージナルス)

8番 キャッチャー 甲斐拓也(ソフトバンク)

9番 ショート   源田壮亮(西武)

――ありがとうございます。続けて、投手陣や戦い方などについても伺えたらと思います。

高木 わかりました。

(後編:「韓国戦の先発は大谷翔平」「抑えは大勢」侍ジャパン投手陣の起用法とパワーヒッターが多い不安>>)

【プロフィール】
高木豊(たかぎ・ゆたか)

1958年10月22日、山口県生まれ。1980年のドラフト3位で中央大学から横浜大洋ホエールズ(現・ 横浜DeNAベイスターズ)に入団。二塁手のスタメンを勝ち取り、加藤博一、屋鋪要とともに「スーパーカートリオ」として活躍。ベストナイン3回、盗塁王1回など、数々のタイトルを受賞した。通算打率.297、1716安打、321盗塁といった記録を残して1994年に現役を引退。2004年にはアテネ五輪に臨む日本代表の守備・走塁コーチ、DeNAのヘッドコーチを2012年から2年務めるなど指導者としても活躍。そのほか、野球解説やタレントなど幅広く活動し、2018年に解説したYouTubeチャンネルも人気を博している。