熱狂のGI5週連続開催が終了した春の東京開催。今週は、秋への飛躍を目指す面々がしのぎを削るGIIIエプソムC(6月11日/東京・芝1800m)が行なわれる。

 過去10年の結果を振り返ってみると、1番人気はわずか1勝。2020年には3連単で400万円超えの超高額配当が飛び出すなど、非常に難解な一戦となっている。1800mという非根幹距離、施行されるのがGIレースの狭間というタイミングも、レース予想の難しさに一段と輪をかけている。そうしたレースの特徴については、研究ニュースの藤田浩貴記者も同意してこう語る。

「古馬中距離路線において、GI宝塚記念(6月25日/阪神・芝2200m)を目指すなら、2週前に行なわれたGII目黒記念(5月28日/東京・芝2500m)、もしくは先週のGIII鳴尾記念(6月3日/阪神・芝2000m)をステップにして向かうのがベター。そういう意味では、エプソムCはやや形骸化している印象があります。

 近年の傾向としては、1週前に行なわれるGI安田記念(東京・芝1600m)に出走できなかった面々の受け皿になっていて、そういった馬たちが人気になりやすい状況です。しかしながら、レースをスライドしたことによる調整の難しさ、(梅雨入りして)馬場状態の読めない時期ということもあって、波乱の傾向が続いています」

 そして、こうした傾向は今年も続くと見ている藤田記者。それゆえ、特に人気馬は「過信できない」と言う。

「今年も例に漏れず、ジャスティンカフェ(牡5歳)、インダストリア(牡4歳)といった安田記念を除外された馬たちが主力を形成しています。しかしこれらは、今年も過信は禁物でしょう。

 ジャスティンカフェは、昨年も似たようなローテーションで人気を裏切っていますし(1番人気4着)、依然としてハミにぶら下がりながら走るタイプゆえ、ポジションをとりづらい問題点を抱えています。

 インダストリアも、前走のGIIIダービー卿チャレンジトロフィー(4月1日/中山・芝1600m)では得意の中山で初の重賞制覇を飾りましたが、今回は斤量58kgを初めて背負うことになります。加えて、舞台は手前の関係でパフォーマンスが落ちる左回りの東京。陣営からも1ハロンの距離延長を不安視する声が聞かれ、課題は多いと思います」

 そこで、藤田記者はこれらの逆転候補として2頭の穴馬をピックアップした。

エプソムC、人気馬は過信禁物 穴党記者は不発続く4歳馬2頭の...の画像はこちら >>

エプソムCでの激走が期待されるヤマニンサルバム

「まず注目したいのが、ヤマニンサルバム(牡4歳)です。

 ここ2戦はいずれも7着に敗れていますが、2走前のGII金鯱賞(3月12日/中京・芝2000m)は、道中で前に壁を作れずにかかり気味でした。前走のGIII新潟大賞典(5月7日/新潟・芝2000m)は、極悪馬場に脚をとられて競馬にならずじまい。

それぞれ、能力が発揮できなかった明確な敗因があります。

 3走前のリステッド競走・白富士S(1月28日/東京・芝2000m)では、昇級初戦ながら3着と善戦。しかも、同レースで勝ったサリエラ、2着ドーブネが、その後の重賞でともに3着と好走しています。それらとの比較から、重賞でも通用する下地は十分にあると踏んでいます。

 前進気勢の強い血統背景から、前走から1ハロン距離が短縮されるのも好材料。展開的にも、マテンロウスカイ(せん4歳)やショウナンマグマ(牡4歳)が引っ張る形となって、折り合いもつけやすいです。

 また、前走の敗因となった馬場も、先週の安田記念で証明された東京の水はけのよさを考えれば、多少の雨が降っても極端な道悪にはならないでしょうから、問題はなさそう。好センスの持ち主で、本来は相手なりに動けるタイプ。ここは絶好の狙い目と見ます」

 藤田記者が推すもう1頭は、ルージュエヴァイユ(牝4歳)だ。

「決め手非凡な同馬。こちらも直近2戦はふた桁着順に沈んでいますが、2走前のGIII愛知杯(12着。1月14日/中京・芝2000m)は、馬場と展開が不向きで参考外。

前走のオープン特別・メイS(10着。5月20日/東京・芝1800m)にしても、好発で課題のゲートはクリアしたものの、徐々にポジションを悪くして、直線で手応えのない馬たちに挟まれる形になってしまったので度外視していいでしょう」

 前走は1番人気を大きく裏切ってしまったが、もともと東京コースは条件戦を連勝した得意舞台。自慢の決め手を生かすことができれば、巻き返しは十分可能だろう。

「前走にしても、完全に脚を余した形。最後は馬なりでも目立つ脚勢でした。幸い心身のダメージはなく、レース間隔が詰まるなかでも順調に時計を出せています。

 馬体をふっくら見せて、フレッシュさもキープ。父ジャスタウェイ、母父フランケルと爆発力を内包した配合で、スムーズな競馬さえできれば、牡馬相手の重賞でもチャンスは大いにあると思います」

 今年も波乱含みのエプソムC。直近レースの不発で人気落ちの上がり馬2頭の逆襲に要注意である。