今週開催されるGIは、3歳牝馬三冠の最終戦となるGI秋華賞(10月15日/京都・芝2000m)。春の二冠を圧倒的な内容で制したリバティアイランド(牝3歳)が牝馬三冠を達成するかどうかが、大きな焦点となっていることは間違いない。
「今年はさすがに、牝馬三冠を狙うリバティアイランドの力が頭ひとつ以上抜けている印象です」
確かに春の二冠、GI桜花賞(4月9日/阪神・芝1600m)、GIオークス(5月21日/東京・芝2400m)ともに、他馬とは次元の違う強さを見せて完勝したリバティアイランド。その結果から、競馬ファンの多くが奥田記者と同様の見方をしていることだろう。
だが、今年は3年ぶりに本来の舞台となる京都開催となる。その点を鑑みて、奥田記者はこんな見解も示す。
「過去2年は京都競馬場の改修工事に伴って、阪神で開催されてきた秋華賞。
しかし今年は3年ぶりに、直線が少し短く、勝負どころが下り坂になるなど、トリッキーな京都の内回り・芝2000mという舞台に戻ります。過去、伏兵の台頭もしばしば見られたコースゆえ、紛れがあってもおかしくありません。競馬に絶対はないですから」
事実、リバティアイランドを管理する中内田充正調教師はレース前の共同会見で、京都の内回り・芝2000mという特殊なコース形態を不安材料に挙げた。奥田記者が続ける。
「先にも触れたように、京都開催では人気薄が馬券圏内(3着以内)に何度となく突っ込んできています。
たとえリバティアイランドが勝ったとしても、ヒモ荒れの可能性は十分。本来の舞台である京都に戻って、波乱の気配が漂う一戦と言えます」
そこで奥田記者は、今年のレースで好配当をもたらしてくれそうな穴馬候補を2頭、ピックアップした。
「まず気になるのは、ドゥアイズ(牝3歳)です。春のクラシックでは桜花賞が5着、オークスが9着という結果に終わりましたが、2歳GIの阪神ジュベナイルフィリーズ(阪神・芝1600m)では勝ったリバティアイランドにコンマ4秒差の3着と奮闘。
敗れた春の二冠を振り返れば、桜花賞は少し距離が短い印象でしたし、オークスはスタンド前の発走で入れ込んで、ゲートの立ち遅れが響きました。見限るには早計だと思います。
また、ドゥアイズを推す理由のひとつに、同馬を管理する庄野靖志調教師の言葉があります。2歳時はデビュー戦から1800m戦を使ってきて、GIII札幌2歳S(札幌・芝1800m)でも2着と好走しましたが、この時に師が『秋華賞向きだと思う』と同馬の適性について言及。実際、長くいい脚を使うタイプだけに、3コーナー過ぎから下り坂で加速していける京都はピッタリだと思います。この間の調整も順調で、最終追い切りを見届けた庄野調教師は『春から背も高くなって、写真を見ても古馬っぽくなってきたと感じる。1週前追い切りの内容もよかったし、この(最後の)ひと追いでさらによくなってくると思う』とコメント。春の戦績から人気を落としそうな今回は、絶好の狙い目でしょう」
奥田記者が推すもう1頭は、遅れてきた素質馬だ。
「マラキナイア(牝3歳)です。前走の秋華賞トライアル、GIIローズS(9月17日/阪神・芝1800m)で3着と健闘。中団後方から長く脚を使って、優先出走権を獲得しました。
もともとデビュー当時から素質の高さを評価されていた馬で、昨年6月の新馬戦(中京・芝1600m)を勝ったあとは、すかさず重賞に挑戦。GIIIアルテミスS(東京・芝1600m)に出走してコンマ3秒差の5着と、勝ったラヴェルや2着リバティアイランドと差のない競馬を見せました。
休み明けの一戦だった前走のローズSでは、馬体重がプラス14kgと大幅に増加。管理する吉岡辰弥調教師は『カイ食いが春よりよくなったことが一番。それにともなって、心身ともに成長してくれていますね』と、休養を経ての良化ぶりに目を細めていました。
レース内容についても『前走はジョッキー(川田将雅騎手)が次の2000m戦を見据えて、リズムを大事にして競馬をしてくれました。
半兄には7歳になって海外の長距離重賞で2勝を挙げたステイフーリッシュが、叔父には5歳時にGIスプリンターズSを制し、7歳でGI安田記念を勝ったブラックホークがおり、父は4歳秋にGI天皇賞・秋を圧勝して大ブレイクしたジャスタウェイ。その血統背景から、成長力や距離延長は魅力ですし、大舞台で好走できる素養は備わっています。
トライアル3着で人気はそこまで上がらないでしょうから、好配当を呼び込む穴馬として狙ってみるのは面白いと思います」
三冠牝馬誕生が濃厚ながら、伏兵の台頭も見込める波乱含みの一戦。はたして、今年のレースで好配当の使者となるのはどの馬か。ここに挙げた2頭であってもおかしくない。