チーム事情から見るドラフト戦略2023~ソフトバンク編

 プロ野球の一大イベント、ドラフト会議が10月26日に開催される。今年の傾向を見ると、今までにないくらい大学生投手に逸材が集まっている。

数年後のチームの運命を決するドラフト。さて、各球団どのような戦略に出るのか。かつては「育成のソフトバンク」と謳われ、球界の盟主に君臨したが、ここ3年はオリックスの後塵を拝して優勝を逃している。ソフトバンクにとって今年は極めて重要なドラフトとなる。

ソフトバンクがドラフトで獲得すべきは?「甲斐拓也&今宮健太の...の画像はこちら >>

【九州出身の逸材がゴロゴロ】

 これだけ"人"がいたら、編成もさぞ大変なことだろう。シーズンが始まる時点の発表で、育成選手だけで54人もいるのだから、ほぼ2チーム分を見なければならないわけで、頭を整理するだけでもひと苦労である。

 2年連続リーグ2位で称賛される球団もあるだろうが、"常勝"を義務づけられているソフトバンクからすれば"屈辱"か。

挽回の第一歩は、この秋のドラフトということになろうが、近年、結果が出ていない。

 2020年からの3年間で、支配下で16人、育成で33人と、合わせて49人をドラフトで獲得してきた。だが今シーズンの戦いのなかで貢献できたのは、中継ぎの一角として奮闘した大津亮介(2022年ドラフト2位)ただひとり。近い将来、チームの核になってくれそうな選手も見当たらず、世代的な戦力の溝ができそうな状況に見える。

 チームの構成を見ると、年齢的に大学生世代の逸材が何人もほしい。

 そのなかでもまずは投手か。

 今季、一軍で2ケタ勝利を挙げたのは、メジャーから復帰した有原航平だけという事実にまず驚く。それでもリーグ2位を死守できたのは、「ふたりで10勝」みたいな投手が7、8人もいるからだ。

 王者奪還のためには、やはり「ひとりで10勝」できる投手が何人もほしい。偶然にも、今年のドラフトには九州出身の1位候補、上位候補が何人もいる。

 投手では、常廣羽也斗(大分舞鶴高→青山学院大/180センチ・73キロ/右投右打)、下村海翔(九州国際大付→青山学院大/174センチ・75キロ/右投右打)、武内夏暉(八幡南高→国学院大/185センチ・90キロ/左投左打)、西舘昂汰(筑陽学園高→専修大/182センチ・92キロ/右投右打)、蒔田稔(九州学院高→明治大/178センチ・85キロ/右投右打)、木村仁(北九州高→九州共立大/181センチ・88キロ/右投右打)たちがそうだ。

 さらに、高校時代に西舘とバッテリーを組んでいた進藤勇也(筑陽学園高→上武大/182センチ・90キロ/右投右打)も、大学ナンバーワン捕手に成長して上位指名を待っている。

 このなかからふたり......というのは、さすがに難しいか。九州出身という枠を外せば、東浜巨のピッチングが重なるのは、東浜の大学の後輩である草加勝(創志学園高→亜細亜大/182センチ・76センチ/右投右打)。プランを立てながら試合をつくれる村田賢一(春日部共栄高→明治大/181センチ・87キロ/右投右打)は、派手さはなくても、数年続けて10勝できる技術の持ち主と見ている。

甲斐拓也今宮健太の後継者は必至】

 絶対的レギュラーマスクの甲斐拓也の献身には頭が下がるが、来季14年目の32歳なら、至急対策を講じなければならない。後釜候補の谷川原健太(8年目)、海野隆司(4年目)は停滞が続いており、今のうちから高校生捕手をじっくり育成していきたい。

 野球は少々粗っぽくても、走りを含めたスピードと強さを持った強肩捕手・堀柊那(報徳学園高→179センチ・77キロ/右投右打)を3位でどうだろう。

 また、6年目の田丸文丸が中継ぎで、4年目の大関友久が先発で奮投した左腕投手陣だが、今季8勝をマークした42歳のレジェンド・和田毅をいつまでもあてにしてはいられない。

 社会人から即戦力左腕を指名したい。候補は、森田駿哉(ホンダ鈴鹿/185センチ・87キロ/左投左打)だ。この森田、年齢は27歳だが、典型的な大器晩成型である。高校時代(富山商)からドラフト上位クラスの逸材と評価されながら、ヒジの故障で法政大での4年間は不完全燃焼。社会人でもなかなか思うような投球ができない時期があったが、耐えに耐えた反動がここにきて爆発しているようだ。

 かつては速い球を投げたがっていたが、今は145キロ前後のストレートを維持しながら、スライダー、ツーシーム、チェンジアップとの緩急を武器に、丹念に、それでいて気迫溢れる投球を披露している。

 そしてソフトバンクといえば、もう何年も前からドラフトのたびに言われている「今宮健太の後継者」問題である。毎年、遊撃手は獲っているが、ショートストップとして圧倒的な存在感を持った若手が出てこない。

 これまで守備力優先で獲ってきた"傾向"を、ちょっと変えてみてはどうか。つまり打てるショートだ。今年はそれほど多いわけではないが、チームのレベルを考えたら山田脩也(仙台育英高/177センチ・73キロ/右投右打)を推す。

 大学生では、こちらも九州男児の松浦佑星(富島高→日本体育大/174センチ・74キロ/右投左打)が控えているが、ちょっとじれったい結果になっている。ただどこかで殻を破れば、後継者の最右翼になっても不思議ではなく、その期待はまだ捨てきれないでいる。