高木豊が語る現役ドラフト候補

パ・リーグ

セ・リーグ編:阪神と巨人のドラ1投手も候補!?>>)

 高木豊氏に聞く現役ドラフト候補のパ・リーグ編。阪神・大竹耕太郎(元ソフトバンク)や中日・細川成也(元DeNA)のように、同制度をきっかけに飛躍する選手が出てくるのか。

環境を変えることで、活躍の場が広がりそうな選手を挙げてもらった。

「現役ドラフト」に出そうなパ・リーグの選手は? 高木豊は変則...の画像はこちら >>

【ロッテの変則ピッチャーは先発起用でチャンス?】

――惜しくも日本一は逃しましたが、リーグ3連覇を果たしたオリックスで現役ドラフトの候補になりそうな選手は?

高木豊(以下:高木) 吉田凌の可能性があるかなと思っていたのですが、戦力外になってしまいましたね。オリックスはただでさえリリーフの層が厚いのですが、山岡泰輔をリリーフに配置転換してますます層の厚さが増しました。ただ、吉田のスライダーのキレは特筆すべきものがありますし、ほかのチームであれば勝ち試合のセットアッパーでいける力があると思います。

 現役ドラフトの候補として考えられるのは、野手の山足達也(やまあし・たつや/30歳)です。オリックスは野手の層も厚くなってきていて、今年は特に出番が減ってしまいました(32試合出場、打率.200)。ただ、内野の全ポジションと外野も守れるユーティリティープレーヤーですから、獲りたいチームはありそうですね。

――ロッテはいかがでしょうか?

高木 肩や肘の状態が悪くないのであれば、2016年のドラ1右腕、佐々木千隼(ささき・ちはや/29歳)は可能性があると思います。最近はヤクルトの小澤怜史や日本ハムの鈴木健矢、DeNAの平良拳太郎などがそこそこ活躍していて、「変則ピッチャーが活躍する流れが来るのかな」という感じがするんです。フライボール革命の影響などもあってバッティングの理論がいろいろ変わってきていて、各バッターが変則ピッチャーを打ちあぐねていますから。

 そう考えると、サイドスローに近いスリークォーターの佐々木も十分に活躍できるんじゃないかと。2021年に54試合を投げたのが印象的ですが、リリーフではなく先発の5番手、6番手、ローテの谷間とかで投げさせても面白いかもしれません。ロッテでは先発で起用されることはなさそうですし、環境を変えれば活躍の場が広がると思います。

【ソフトバンクの大砲、楽天のスイッチヒッターも候補?】

――続いてソフトバンクは、このオフに実績のある森唯斗投手や嘉弥真新也投手、上林誠知選手らを戦力外にするなど戦力を大々的に整理し始めました。現役ドラフトでの動きも気になるところです。

高木 そうですね。僕はリチャード(24歳)を出す可能性があると思っています。変化球攻めをされ、直球を見逃して三振というケースが目につくなど課題があるバッターですが、あれだけ打球を遠くに飛ばせるパワーなど、素質は非常に魅力的です。現役ドラフトに出れば、西武あたりは欲しがるんじゃないですか。

 ピッチャーでは高橋礼だと思っていましたが、トレードで巨人に行きましたね。

先ほどの佐々木と同じで、変則ピッチャーは十分に活躍できると思います。まだ28歳と若いですし、環境を変えた来シーズンに期待です。

――楽天で候補になりそうな選手は?

高木 ピッチャーでは藤平尚真の可能性があるかなと思っていましたけど、シーズン終盤はなかなかいいピッチングをしていました。やっと力を発揮できるようになってきたので、先発ローテーションの候補としておそらく出さないかなと。

 野手の田中和基(たなか・かずき/29歳)はあるかもしれません。貴重なスイッチヒッターですし、走攻守でいいものを持っているのですが、近年はほとんど活躍できていません(今年は95試合に出場、打率.088) 。

ただ、守備固めや代走に落ちつく選手ではないと思うんです。復活するためには何かのきっかけが必要だと思うのですが、環境の変化で好転する可能性はあります。

【"投手王国"の西武、最下位の日本ハムの候補は?】

――近年、先発ピッチャー陣が充実してきた西武はいかがですか?

高木 西武は髙橋光成、平良海馬、今井達也、松本航など先発ピッチャー陣が整備されてきましたね。昨年はほとんど勝てなかった隅田知一郎も試合を作り、しっかり勝てるピッチャーに育ってきましたし、渡辺久信GMが数年前から目標に掲げていた"投手王国"に近づきつつあります。

 さらに、ドラフトで即戦力の左腕・武内夏暉(國學院大)の交渉権も獲得できましたし、武内を含めて6人(支配下7人中)のピッチャーを指名しました。なので、ピッチャーを現役ドラフトに出す可能性は十分にあると思います。

2019年のドラ1右腕、宮川哲(みやがわ・てつ/28歳)あたりもなくはないかなと。昨年まではリリーフで、今年は先発も経験している(4試合に先発し、1勝2敗)ことも強み。ピッチャー陣が手薄なチームのほうが活躍の場が広がりそうです。

 あと、現役ドラフトの候補というわけではないのですが、個人的に気になっているのが渡邉勇太朗です。プロ入り3年目の2021年に4勝したのですが、その頃のピッチングを見た時に「すごくいい素材だな」と思っていたんです。今年ブレイクしたオリックスの山下舜平大と同じような体格をしていますしね(191cm・95kg)。

今はくすぶっていますが、このピッチャーが先発のローテーションに入っていくようになると西武としては大きいでしょう。

――日本ハムはいかがでしょうか?例えば、高木さんがバッティングセンスを評価されている淺間大基選手は、今年は13試合の出場と起用される機会が少なくなっています。

高木 いや、浅間は出さないと思います。ワンシーズンを通して集中して野球ができるタイプではなさそうな感じはしますが、僕は日本ハムで一番バットコントロールがいいと見ていますし。
 
 万波中正や松本剛をはじめ、五十幡亮汰、細川 凌平など、新庄剛志監督は足の速い選手を重視する傾向がありますよね。そう考えると、淺間の出場機会がより少なくなる可能性もありますし、新庄監督は気前がいいから出してくるかもしれませんが......。それでも、おそらく出さないんじゃないかと。

――それでは他に、日本ハムで候補を挙げるとすれば?

高木 キャッチャーの清水優心(しみず・ゆうし/27歳)は可能性がありますね。2021年は100試合に出場しましたが、新庄監督になってから出場試合数が減って(2022年は30試合、2023年は32試合)、キャッチャーの中での序列が低くなっています。

 ただ、リードやキャッチングなど、なんでも平均的に"こなせる"キャッチャーは意外と少ない。現役ドラフトに出れば人気になると思いますし、キャッチャー陣の層が薄い巨人や中日などは欲しいと思いますよ。

【プロフィール】
高木豊(たかぎ・ゆたか)

1958年10月22日、山口県生まれ。1980年のドラフト3位で中央大学から横浜大洋ホエールズ(現・ 横浜DeNAベイスターズ)に入団。二塁手のスタメンを勝ち取り、加藤博一、屋鋪要とともに「スーパーカートリオ」として活躍。ベストナイン3回、盗塁王1回など、数々のタイトルを受賞した。通算打率.297、1716安打、321盗塁といった記録を残して1994年に現役を引退。2004年にはアテネ五輪に臨む日本代表の守備・走塁コーチ、DeNAのヘッドコーチを2012年から2年務めるなど指導者としても活躍。そのほか、野球解説やタレントなど幅広く活動し、2018年に開設したYouTubeチャンネルも人気を博している。