日本人メジャーリーガー14人の立ち位置(野手編)

 メジャーリーグのキャンプが各地でスタートを切った。野手・投手ともに2024シーズンを戦うメンツが合流し、連日ニュースを賑わせている。

 オフシーズンに移籍してきた選手も加わり、各チームの戦力も徐々に見えてくるこの時期、日本人選手のチーム内のポジションは果たして──。彼らがどのような立ち位置で今シーズンに挑むのか、昨シーズンのデータなどを紐解きながら探ってみる。

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 シカゴ・カブス鈴木誠也(29歳)は今シーズン、打線の中軸を担うスラッガーとしてメジャーリーグ3年目を迎えることになりそうだ。

 2023年、鈴木のOPS.842はカブスで50打席以上の17人中、コディ・ベリンジャーの.881に次いで高かった。ベリンジャーはFAになったまま、まだ球団が決まっていない。カブスに戻ってくる可能性もあるが、どうなるかはわからない。

 今オフ、カブスに加わった野手は、トレードでロサンゼルス・ドジャースから移籍したマイケル・ブッシュくらいだ。ブッシュは2019年のドラフトで全体31位指名を受け、2023年は3Aの98試合で27本のホームランを打った。だが、メジャーリーグ出場は昨年の27試合にすぎない。

 鈴木自身も今シーズンは、本領発揮の予感を漂わせる。2023年の前半は、71試合で打率.259と出塁率.342、7本塁打、OPS.748だった。それに対して後半の67試合は、打率.313と出塁率.372、13本塁打、OPS.938を記録した。

 ホームランだけでなく、二塁打(13本→18本)と三塁打(2本→4本)も増えている。後半のOPSはベリンジャーの.909をしのぎ、200打席以上の両リーグ175人のなかで19番目に高かった。

 鈴木のポジションは、今年もライトだろう。となりのセンターは確定していないが、レフトはイアン・ハップが守る。

【吉田正尚の守備は決してうまいとは言えない】

 一方、今年がメジャーリーグ2年目となるボストン・レッドソックスの吉田正尚(30歳)は、レフトの守備につく機会が減り、主にDHとして起用される見込みだ。

『ボストン・グローブ』のアレックス・スパイアー氏らによると、アレックス・コーラ監督はキャンプイン早々に「まだ決まったわけではないし、彼(吉田)がDHとは言わない。けれども、(DHを務める)グループのなかで打数は最も多くなるだろう」と語ったという。

 吉田の守備は、決してうまいとは言えない。2023年のDRS(ディフェンシブ・ランズ・セーブド/※1)は-4、OAA(アウト・アバブ・アベレージ/※2)は-8だ。ちなみに、鈴木はどちらの守備指標も+2を記録した。

※1=選手の守備力を測る指標のひとつ。たとえばDRS=5ならばシーズンで平均的な野手に比べて5点多く防いだことを表し、逆に-5ならば5点多く与えたということになる。

※2=守備の評価指標のひとつ。

平均的な野手と比べてどれだけ多くのアウトを奪っているかを数値化したもの。シーズンで取ったアウトが平均値より下回った場合、マイナス数字となる。

 吉田をDHにしても、レッドソックスの外野手は足りている。レフトが新加入のタイラー・オニール、センターがジャレン・デュラン、ライトがウィリアー・アブレイユ、控えはロブ・レフスナイダーになると思われる。

 28歳のオニールは過去2年こそ不振ながら、2021年は34本のホームランを打ち、出塁率.352とOPS.912を記録した。セントルイス・カージナルスでは主にレフトを守り、2020年~2021年はゴールドグラブ賞を連続受賞している。

 27歳のデュランは、メジャーリーグ3年目の2023年に台頭してきた。4月中旬に3Aから昇格し、102試合で8本塁打と24盗塁、出塁率.346とOPS.828を記録。ホームランはひとケタながら、34本の二塁打を打った。

【今季の大谷翔平は本塁打王より打点王が狙い目】

 24歳のアブレイユは、2023年8月にメジャーデビューした。シーズン前半は3Aの86試合で22本塁打、出塁率.391とOPS.930を残し、デビュー後は28試合で2本塁打、出塁率.388とOPS.862を記録した。

 32歳のレフスナイダーは、パワーこそないものの、出塁率は過去2シーズンとも.360を超えている。彼らは4人とも、センターを守ることができる。

 さらに、昨夏にメジャーデビューした23歳のセイダーン・ラファエラもいる。5ツールを備え、内野も守る小柄なレッドソックスの選手ということから、ラファエラはムーキー・ベッツ(現ロサンゼルス・ドジャース)に準(なぞ)えられてきた。

 開幕ロースターに入るかどうかは微妙なところだが、噂されているデュランのトレードが実現すれば、外野には左から右に、オニール、ラファエラ、アブレイユが並びそうだ。

 また、吉田はDHとしての出場機会も約束されてはいない。DHを完全に固定しないのは、昨年10月に編成責任者となったクレイグ・ブレズロウの方針らしい。

 吉田はDHに求められる一般的なツールである、パワーに欠ける。2023年のホームランは15本だ。1本当たりの35.8打数は、鈴木と比べても10打数多い。

 しかも、前半の打率.316と出塁率.382から一転し、後半は打率.254と出塁率.278に終わった。後半の出塁率は200打席以上の175人中161位だ。パワーや打率はともかく、開幕から出塁率が低空飛行を続けた場合は、ベンチを温めることになりかねない。

 DHでの出場は、ロサンゼルス・エンゼルスからドジャースへ移った大谷翔平(29歳)も同じ。ひじの手術を受け、2024年のマウンドには上がらない。

 2年続けて本塁打王もあり得るが、より可能性が高いのは、初の打点王だ。打順はベッツとフレディ・フリーマンに続く3番、あるいはふたりの間の2番が予想される。ベッツもフリーマンも、2023年の出塁率は.405以上だった。

筒香嘉智がメジャーに昇格できる可能性は高くないが...】

 2年連続MVPは、少しハードルが高い。二刀流の大谷を除くと、MVPを受賞したDHは皆無だからだ。

 パワーに加えてスピードも発揮し、30-30や40-40を達成するとMVPに近づきそうだが、コンテンダーのドジャースにおいて、試合の状況に関係なく盗塁を試みるとは考えにくい。ケガのリスクも併せると、盗塁を増やすべきなのかどうかにも疑問符がつく。ちなみに過去3シーズンとも、大谷の盗塁成功率は80%に届いていない。

 WBCで吉田や大谷とともに優勝したカージナルスのラーズ・ヌートバー(26歳)は、昨シーズン最後の試合で初の規定打席に到達し、出塁率.367はリーグ11位に位置した。

 オニールがレッドソックスへ移籍し、2024年の外野トリオは基本的にレフトがヌートバー、センターがトミー・エドマン、ライトはジョーダン・ウォーカーとなる。ヌートバーは健康を保てれば、リーグ有数の「出塁マシン」となり得る。昨年は3度も故障者リストに入った。2年連続14本のホームランも、20本に達して不思議ではない。7月は6本塁打を記録した。

 サンフランシスコ・ジャイアンツとマイナー契約を結んだ筒香嘉智(32歳)は、2年ぶりのメジャーリーグ復帰をめざす。昨年はマイナーリーグと独立リーグの計80試合で17本のホームランを打ち、出塁率.413を記録した。

 現時点において、昇格の可能性は高くない。ジャイアンツの一塁はラモンテ・ウェイドJr.とウィルマー・フローレス、三塁はフローレスとJ.D.デービスが守る予定だ。DHには新加入のホルヘ・ソレーアがいる。さらにFAの三塁手、マット・チャップマンも加わるかもしれない。

 とはいえ、全員がシーズンを通して健康ということはまずない。筒香がマイナーリーグで結果を残していれば、チャンスは巡ってくるはずだ。