高木豊が注目するルーキー

パ・リーグ

セ・リーグ編:注目の投打のルーキー DeNAの度会隆輝、巨人の西舘勇陽らの能力と期待>>)

 高木豊氏に聞く今季のルーキー。パ・リーグ編では、4月3日のオリックス戦で7回1安打無失点、7奪三振の快投で初勝利を挙げた西武ドラ1の武内夏暉をはじめ、キャンプやオープン戦などから注目している選手について聞いた。

高木豊は衝撃デビューの西武左腕を絶賛「非の打ちどころがない」...の画像はこちら >>

【打力が高いルーキーが多数】

――パ・リーグのルーキーで注目している選手は?

高木豊(以下:高木) キャンプ中の対外試合のバッティングなどを見ましたが、横山聖哉(オリックス・ドラフト1位)は非凡なものがありますね。高卒ルーキーですが体がガッチリしていますし、打席での立ち姿に"いいバッターが持つ雰囲気"があります。

 現在、ショートを守っている紅林弘太郎よりも肩がいいとも言われるぐらいですし、将来的にすごく期待できる選手。どういう育成プランを考えているかはわかりませんが、二軍での結果次第では早い段階で一軍に上げる可能性もありますね。

 それと、上田希由翔(ロッテ・ドラフト1位)もいいバッターだと思います。

――どのあたりが魅力ですか?

高木 試合で使ったら、なんとかして結果を出そうとするタイプ。"実戦向きの選手"という印象です。

コンタクトがうまいのですが、そういう意味では西武2年目の蛭間拓哉みたいな感じです。ただ、長打を警戒しなければならない怖さがないので、その部分はこれからでしょう。

 代打で起用しても戦力になりそうですが、4打席の中で組み立てていくバッターだと思うので、先発で起用してこそ力を発揮しそうです。たとえば、1打席目はこう攻められたから、次の打席ではこういうボールを狙ってみようとか、考えて打席に入れるタイプではないかと見ています。近い将来のサードのレギュラー候補として獲ったと思いますが、今季からサードにコンバートされた中村奨吾のバッティングの調子が上がらない場合はチャンスが増えるでしょうし、それを生かせるかどうかですね。

――ほかに目についた野手のルーキーは?

高木 キャッチャーの進藤勇也(日本ハム・ドラフト2位)です。

キャンプを視察した時にも見ましたけど、とにかく肩がいい。それと、触れ込みでは"打てるキャッチャー"ということでしたが、確かにセンスを感じます。

 日本ハムはキャッチャーを固定せず、さまざまなキャッチャーを起用していますから、一軍で起用される日も遠くないかもしれません。守備面はもちろん、いかに打ってアピールできるかがポイントになりそうです。キャッチャーは信頼されるまでに時間がかかるポジションですが、早く頭角を現しそうな感じはします。

 日本ハムではドラフト3位の外野手、宮崎一樹にも注目しています。

キャンプのフリーバッティングを見た時はよかったですが、粗さも目立っていました。日本ハムの外野には松本剛や万波中正がいて、今年はそこにスティーブンソンが入っていますし、なかなかチャンスは少ないかもしれませんね。

【西武・武内のほかにも楽しみな左腕】

――ピッチャーはいかがですか?

高木 武内夏暉(西武・ドラフト1位)は抜群にいいです。球威も制球もよくて、球速も150キロ台中盤。カットボール、ツーシーム、フォーク、チェンジアップ、スライダー、カーブと球種も多彩ですし、非の打ちどころがありません。真っすぐでもスライダーでもフォークでも三振が取れる即戦力ですね。

昨季にひと皮むけて安定感が出てきた西武の隅田知一郎は、1年目の2022年は苦しみましたが、武内はあまり苦労せずに白星を積み重ねていけそうな気がします。

 ただ、条件としてはバッター陣がある程度打ってくれること。ピッチャーを育てるにはチームの打撃力が必要ですし、当然ですが打てないと勝てません。4番候補のヘスス・アギラーは125kgの巨漢ですが、パワーだけでなく柔軟なバッティングをしますから、昨季よりは打線が点を取ってくれるんじゃないかと見ています。

――西武では、ドラフト7位の糸川亮太投手も一軍デビューを果たしています(3月31日の楽天戦)。

高木 彼もいいですよ。

マウンドで落ち着いていますし、決め球のシンカーがすばらしい。ソフトバンクとのオープン戦では中村晃やアダム・ウォーカーから落差のあるシンカーで三振を取っていましたが、甲斐野央らとともにリリーフ陣を支えるピッチャーのひとりになりそうです。

――他チームのルーキーの投手を見ても、前田悠伍投手(ソフトバンク・ドラフト1位)、古謝樹投手(楽天・ドラフト1位)、細野晴希(日本ハム・ドラフト1位)と左腕が多いですね。

高木 そのなかで注目していたのは古謝ですが、オープン戦などでは自分の力を出し切れていない感じがしました。制球に苦しんでいましたし、慣れるまでにもう少し時間がかかりそうです。則本昂大がクローザーに回り、楽天の先発陣は手薄になっているので、登板のチャンスはあると思います。

 彼は使われて成長していくタイプかもしれませんね。テイクバックが小さくてボールの出どころが見えづらい投球フォームなので、コントロールが安定してきたら面白い存在になると思いますよ。

――さまざまな選手を挙げていただきましたが、パ・リーグで最も注目すべきルーキーは?

高木 西武の武内を挙げざるを得ないですね。もともと盤石と言われていた西武の先発陣ですが、エースの髙橋光成が右肩の張りで出遅れているので、試合を作れる先発ピッチャーは何人でもいてほしいところ。そういう意味で、1年目から武内にかかる期待も大きいと思います。

 先ほども話しましたが、ポイントは西武打線が打ってくれるかどうか。打線がかみ合ってトントン拍子で白星がついていけば、ふた桁勝つ可能性が高いと思います。

【プロフィール】
高木豊(たかぎ・ゆたか)

1958年10月22日、山口県生まれ。1980年のドラフト3位で中央大学から横浜大洋ホエールズ(現・ 横浜DeNAベイスターズ)に入団。二塁手のスタメンを勝ち取り、加藤博一、屋鋪要とともに「スーパーカートリオ」として活躍。ベストナイン3回、盗塁王1回など、数々のタイトルを受賞した。通算打率.297、1716安打、321盗塁といった記録を残して1994年に現役を引退。2004年にはアテネ五輪に臨む日本代表の守備・走塁コーチ、DeNAのヘッドコーチを2012年から2年務めるなど指導者としても活躍。そのほか、野球解説やタレントなど幅広く活動し、2018年に開設したYouTubeチャンネルも人気を博している。