意外と間違える生理に関する5つの質問 仮入部期間の年度初めに...の画像はこちら >>

伊藤華英の For Your Smile ~ 女性アスリートの未来のために vol.11

【まだ整備されていない中高の部活動】

 今はまさに中学・高校の仮入部時期ですので、いろんなスポーツを体験している女子学生が多いのではないでしょうか。ただ生理がきている女子学生であれば、生理のことも意識しておかなければいけません。しかし実際に仮入部期間に、その部活動のすべてを調べるのは難しいでしょう。

 学校の部活動において、生理の課題についてはそこまで優先順位の高いものではないため、仮入部期間中に直接顧問の先生に聞いても細かく説明してくれる可能性は低いでしょうし、現実的に先生に聞くのは難しいでしょう。

 生理についての心配事で相談の多いものがあります。それはユニフォームに経血が漏れてしまうかもしれないということです。ですからユニフォームの色は見ておいたほうがいいかもしれません。とくに白っぽいユニフォームだと心配です。それからすぐにトイレに行けるような部活なのかもチェックしておくのも大事なことですね。

練習中にトイレに行けない、行きづらいところはまだあるかもしれません。心配な方は仮入部中に確認してみるといいかもしれません。

 そしてやはり生理についての基本的な知識は持っておくべきです。それは中学・高校の女子学生だけではなく、保護者も同じ。まずは以下にある基本的な問題を解いてみてください。

【問題】

■問1
アスリートに生理はいらない。
〇か×か。

■問2
生理痛は病気じゃない。
〇か×か。

■問3
生理はうつる(感染する)。
〇か×か。

■問4
生理痛の辛さはみんな同じ。
〇か×か。

■問5
生理が止まると調子が上がる。
〇か×か。

(出典:「1252プロジェクト」オンライン教材『1252 Playbook』より)

【回答】

■問1 
アスリートに生理はいらない。
×
 アスリートにも生理はもちろん必要です。体型・体重・メンタルの変化など、競技へ影響をもたらす生理は、アスリートにとって難しい課題です。一方で、生理をもたらすふたつの女性ホルモンは、骨を強くします。体全体の機能においても、女性の健康にはとても必要なものになりますので、競技を続けていくうえでも必要です。

■問2
生理痛は病気じゃない。
×
 生理痛は治療の対象と考えてください。「生理は病気じゃないんだから、我慢すれば大丈夫だ」という声掛けは間違っています。生理痛で生活に支障がある場合は、婦人科受診をお勧めします。「月経困難症」という診断名がつく場合もあり、治療の対象となります。また、辛くなる前に痛み止めを飲むこともお勧めします。

アスリートであれば、薬を服用する時はドーピング禁止物質が含まれていないか、Global DRO JAPANのサイトで調べてみてください。競技別、購入国別で検索することができます。

■問3
生理はうつる(感染する)。
×
 生理痛はうつりません。意外に思うかもしれませんが、競技スケジュールの関係で、早く生理がきてほしいと思っているアスリートが「私にも生理うつして」とチームメイトに話していることを、私は何度も見聞きしています。しかし生理がうつる医学的な根拠はないと婦人科の先生方も話しています。

生理は人それぞれの周期でやってくるので、他の人からうつることはありません。自分の周期を知ることで、対策もスムーズになりますので、まずは自分の月経周期を把握してみてください。

■問4
生理痛の辛さはみんな同じ。
×
 生理の辛さは十人十色です。月経周期によるコンディション変化や、そのタイミングは人それぞれ。なかには生理中にコンディションがよくなる人もいます。友達やチームメイトと一緒とは限らないので、一人ひとりが自分の月経周期やコンディションの変化を理解することが重要です。

■問5
生理が止まると調子が上がる。
×
 生理が止まると、女性ホルモンの波がなくなるため、気分の浮き沈みや体重の増減が少なくなることはあります。しかし、これまであった生理が三カ月以上止まっている状態を「無月経」といいます。無月経は体が発するSOS。競技のパフォーマンスを低下させるだけでなく、骨折しやすくなる、血管機能の低下、脂質代謝異常など、一生涯にわたり健康に害を及ぼすこともあります。競技への影響を避けるためにも無月経はきちんと対処しましょう。

【まずはスポーツを楽しんで】

 これから中学・高校でスポーツ系の部活動に入る女子学生のみなさんは、まずはスポーツを楽しんでください。競技性を高めたい選手は自分を追い込んだり、限界を超えていくという意識を持つことも必要ですが、これからスポーツを楽しみたい女子学生であれば、勉強や日常生活が楽しくなるような活動にしてほしいです。

 そして生理の基本的な知識を持っていただきつつ、自分の月経周期やコンディションを把握してください。生理痛がある場合には、直接顧問の先生に言いづらければ、養護教諭に相談したり、担任の先生が女性であれば、その先生に相談したり、親御さんに相談したりしてみてください。

 10代の女子学生を持つ保護者の方は、時には部活動の顧問の先生とコミュニケーションを取ることも大切なことだと思いますし、重い生理痛などの症状が見られた場合は、ある程度介入することも必要なことかなと感じています。まずはお子さんがケガなく楽しくスポーツに励んでいるのかどうか、見守っていただければと思います。

【Profile】
伊藤華英(いとう・はなえ)
1985年1月18日生まれ、埼玉県出身。元競泳選手。2000年、15歳で日本選手権に出場。2006年に200m背泳ぎで日本新、2008年に100m背泳ぎでも日本新を樹立した。同年の北京五輪に出場し、100m背泳ぎで8位入賞。続くロンドン五輪では自由形の選手として出場し、400mと800mのリレーでともに入賞した。2012年10月に現役を引退。その後、早稲田大学スポーツ科学学術院スポーツ科学研究科に通い、順天堂大学大学院スポーツ健康科学部博士号を取得した。現、全日本柔道連盟ブランディング戦略推進特別委員会副委員長、日本卓球協会理事。

■インスタで「スポーツと生理」の教材を配信
伊藤華英さんがリーダーを務める「1252プロジェクト」。これは女子学生アスリートを中心に、10代の若者が抱える「スポーツと生理」にまつわる課題に対し、トップアスリートの経験や医学的知見をもって、情報発信をしているプロジェクト。その一環として、インスタグラムで手軽に学べる「スポーツと生理」の次世代型オンライン教材『1252 Playbook』を配信中。
Instagram:1252project>>