高木豊が注目する若手野手 パ・リーグ編
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高木豊氏がブレイクを期待する若手選手のパ・リーグ編。2人のドラフト1位ルーキーを含め、4人の名前が挙がった。
【注目のルーキー2人の評価は?】
――今季期待のパ・リーグ若手野手を挙げるとしたら?
高木(以下:高木) 楽天のドラ1ルーキーの宗山塁(明治大/1年目・21歳)は、ルーキーイヤーからブレイクの可能性を秘めています。明治大学時代から見ていますが、攻守のバランスが非常にいい。バッティングに関してはひ弱さを感じる部分もありますが、それをセンスでどうカバーしていくのかが見ものです。
チームとしては"顔"にしていきたい選手だと思いますし、ケガなどがなければ、おそらく開幕スタメンで使うんじゃないですか。シーズンを通して試合に出続けることができれば、2年目からは体つきが全然変わってくると思いますし、そういった点も含めて楽しみです。
――大学時代のバッティングを見ていると、詰まった当たりがヒットゾーンにいくケースが多い印象でした。
高木 バットの出し方、軌道がいいんでしょうね。でも、プロのピッチャーが投げるボールのキレやパワーはひと味違います。大学時代に内野手の頭を越えていた打球が、プロのピッチャー相手でどうなるか、ですね。
――今季のルーキーで、ほかに一軍でプレーできそうな選手はいますか?
高木 ロッテのドラ1・西川史礁(青学大/1年目・21歳)は、宗山と同じように、1年目からどんどん使われると思いますよ。とにかく思い切りがいいし、スイングに力強さがあります。大学時代に侍ジャパンのトップチームにも招集されて、活躍しているくらいですしね。
ロッテは一時、山口航輝を右の大砲候補と期待して使っていましたが、伸び悩んでいます。
――大学時代は主に外野を守っていましたが、今キャンプでも外野手として勝負することになりました。
高木 大学時代、内野手から外野手に転向したタイミングで打撃が開花した経緯もありますし、外野手1本でいったほうがいいと思います。ただ、ロッテの外野はけっこう激戦なんですよね。岡大海、髙部瑛斗、藤原恭大らのほか、荻野貴司、角中勝也の両ベテランも健在。山口も尻に火がついているはずですしね。
――ただ、故障がちな選手が多く、シーズン通して計算できるかは微妙な印象もあります。
高木 そういう意味では、チャンスはありますよね。西川は大学時代にセンターやレフトを守っていましたが、藤原のほうがセンターとして優秀であれば、西川にはレフトを守らせるとか。外野も内野も守るとなると大変ですが、外野のポジションチェンジであればそれほど負担はかからないはず。あとは、首脳陣が我慢強く使い続けられるかどうかですね。
【ソフトバンクの新たな正捕手候補】
――ルーキー以外で注目している選手はいますか?
高木 少し年数は上ですけど、ここ2年は一軍での出場がなかったソフトバンクの渡邉陸(7年目・24歳)も今季は期待です。甲斐拓也が抜け、海野隆司や谷川原健太、嶺井博希らとの正捕手争いになりますが、そのなかではバッティングが頭ひとつ抜けています。
――渡邉選手は左バッターですが、どのあたりを評価されていますか?
高木 軸足となる左足の使い方がうまいですね。体が早く開かないように我慢できているので、振り出した時にバットのヘッドがよく走るんです。だから、捉えた打球に伸びがあります。
2022年の5月にプロ初ホームランが出て、次の打席で2打席連続ホームランを打ったじゃないですか。2本とも逆方向への一発だったのですが、打球がかなり伸びていました。あの打ち方を忘れていなければいいんですけどね。
――打撃面で差をつけることができたら、正捕手に近づく?
高木 捕手は守備面でいろいろ言われますが、打てる選手が少ないので使ってもらえる可能性が高まります。DeNAの山本祐大の評価が高いのも、"打てる捕手"という点です。古田敦也も阿部慎之助も守備面でいろいろ言われていましたが、首位打者を獲ってからはそういう声も減りました。
リードについてはデータによる部分も大きいですし、そこまで考えなくてもいいでしょう。もちろん、捕手としての感性や、データによるリードを自分なりにアレンジすることも大切ですが、それらは経験によって身につくもの。現時点では、いかに打つかのほうが大事です。
【オリックス2年目の野手は、まず守備を磨くべし】
――ほかに注目選手はいますか?
高木 オリックスの横山聖哉(2年目・19歳)ですかね。慣れたら確実に打てるようになる選手だと思うので、我慢して起用してほしいんですが......まだ守備面が厳しいと思うんです。本来はショートですが、昨年はサードで使われていましたよね。その守備はあまりよくなかったですし、あれでは首脳陣も我慢できないかなと。
打てない場合は、打席を重ねて経験を積めば打てるようになる、と期待が持てるのですが、守備は試合で使っていけばうまくなるかというと、決してそうではない。横山の場合は、練習で相当ノックを受けないといけないかなと思います。
――守備面が不安なままだと、起用する側が我慢できない?
高木 そうですね。先ほど話したキャッチャーは例外で、そのほかのポジションは守備が第一。守備の綻びは、バッティングよりもチームに迷惑をかけるからです。
バッティングは個人で勝負する側面も大きく、失敗しても「次は打ってくれるんじゃないか」と、首脳陣はけっこう割り切れるものなんです。だけど守備はそうはいきません。横山は昨年、プロの打球の速さや、ランナーの足の速さなどに慣れていませんでしたし、ボールのさばき方を見ても「練習が必要だな」と感じました。
――バッティングはいかがですか?
高木 バットコントロールにセンスがあって、ボールを自分の間合いに引き込むのがうまいです。そういうバッティングも毎回できているわけではないですし、経験して慣れることで徐々に出せるようになるタイプだと思います。
――その経験をさせるためにも、まずは守備を磨くということですね。
高木 そうなんです。ただ、高卒で入団して今年が2年目。若い選手は、前年の経験が生き、キャンプからガラっと変わることもあります。そういう変化に期待したいですね。経験さえ積ませられたら、間違いなく活躍できる選手でしょうから。
【プロフィール】
高木豊(たかぎ・ゆたか)
1958年10月22日、山口県生まれ。1980年のドラフト3位で中央大学から横浜大洋ホエールズ(現・ 横浜DeNAベイスターズ)に入団。二塁手のスタメンを勝ち取り、加藤博一、屋鋪要とともに「スーパーカートリオ」として活躍。ベストナイン3回、盗塁王1回など、数々のタイトルを受賞した。