チャンピオンズリーグ(CL)決勝トーナメント1回戦セカンドレグ、リバプール対パリ・サンジェルマン(PSG)。遠藤航は延長後半6分、リバプールの最後となる6人目の交代選手としてピッチに送り込まれた。

 リバプールはファーストレグのアウェー戦を1-0で折り返したものの、内容的には、勝ったのが奇跡的と言いたくなるほどの劣勢だった。セカンドレグの前半12分、ウスマン・デンベレ(フランス代表)に先制ゴールを許し、合計スコアで同点とされ、延長にもつれ込む展開は、前戦からの流れに従えば予想どおりと言えた。

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 リバプールはリーグフェーズを終えた段階でブックメーカー各社から優勝候補の本命に推されていた。リーグフェーズでトップ通過を果たしたこと、欧州ランク1位のプレミアリーグで首位であることなどがその大きな要因だった。

 しかしその戦いぶりは、シーズンを通してみると、いささか飛ばしすぎに見えた。CLで優勝を狙うチームにとってのポイントはシーズンの後半だ。本番は決勝トーナメントを迎えてから。3月以降の調子がカギとなる。

 プレーオフが終わると、ブックメーカー各社が優勝候補の筆頭をリバプールからレアル・マドリードに変更した理由も、そこにあったのかもしれない。

 レアル・マドリードはリーグフェーズでは11位と苦戦し、プレーオフに回った。しかし、そこでマンチェスター・シティを撃破する。リーグフェーズ前半に比べ、調子を大きく上げていることが明白となった一戦だった。

CLの戦い方を熟知したチーム。過去15度、欧州一に輝いている、まさに伝統の力を見せつけられる格好になった。

 リバプールはどうなのか。相手のPSGはリーグフェーズで大苦戦を強いられたチームだ。プレーオフ圏内である24位以内に飛び込んだのは、その最終盤だった。リバプール対PSGは、リーグフェーズの成績でいえば1位対15位となる。ところが蓋を開けてみれば、試合を優位に進めたのはPSGで、この第2戦でもその流れは続いた。

【PSGがチーム力を上げた理由】

 合計スコアを1-1にされると、リバプールは押し返したものの、後半の半ばを過ぎると、再び流れはPSGに傾く。延長に入るとさらにその傾向は強まった。遠藤はそのタイミングで投入された。負傷した右CBイブラヒマ・コナテ(フランス代表)のポジションにそのまま入った。

 劣勢で迎えた大一番の最終盤に、責任の重いCBとしてピッチに送り込まれたわけである。わずか10分程度ではあったが、いい経験だったと思われる。

日本代表でもCBは"アリ"ではないか。日本代表では右SBとしてプレーする姿は見たことがあるが、CBはない。このPSGとの決勝トーナメント1回戦は、遠藤にとって可能性が広がる、森保一監督必見の試合だった。

 PSGがここに来てチーム力を上げた一番の要因は、今冬、ナポリから移籍してきた24歳のジョージア代表、クヴィチャ・クヴァラツヘリアの存在が大きい。右も左もできる決定力を兼ね備えたウイングである。デンベレ、ブラッドリー・バルコラ(フランス代表)、そして交代で入ってくるデジレ・ドゥエ(U-21フランス代表)も、左右どこでもできる。その多機能さ、多彩さがPSGの攻撃の幅を広げている。

 延長戦に入ると、リバプールは受けて立つことになった。逆にPSGはチャレンジャーとして活きのよさを発揮した。PSGが4-1で制したPK戦の結末に、特に驚きはない。

 ブックメーカーの優勝予想に基づけば、2番人気(リバプール)対7番人気(PSG)の一戦である。そこで7番人気が勝利することは、番狂わせに値する。

 そのPSGも、つい最近まで金満クラブの代表だった。リオネル・メッシ、ネイマール、キリアン・エムバペという大物を抱え、優勝候補に推されていた。スター選手不在になった分だけ、好チーム度が増した印象だ。最後までチャレンジャーでいられそうな身軽さ、立ち位置のよさを感じる。面白い存在になっている。

 この日行なわれたほかの3試合の、2戦を通した合計のスコアは以下のとおり。

バルセロナ4-1ベンフィカ
インテル4-1フェイエノールト
バイエルン5-0レバークーゼン

【ベスト8進出は伊藤洋輝ひとり】

 上田綺世が所属するフェイエノールトはインテルに対し、セカンドレグでも1-2で敗れ、CLの舞台から姿を消した。上田は先発を飾り、後半18分までプレーしたが、ファーストレグのような見せ場は訪れなかった。右サイドでボールを受け、身体をターンさせながら折り返した前半20分のプレーが唯一の見せ場だった。

 気になるのはプレー機会の少なさだ。チームのなかで攻撃の軸になりきれていないのか、パスが来ないのである。エースストライカーを務めたサンティアゴ・ヒメネス(メキシコ代表)が今冬ミランに移籍。

そのおかげで出番が回ってきたいまこそがチャンスなのだが、与えられた場を生かしきれていない様子だ。

 伊藤洋輝所属のバイエルンはレバークーゼンと戦い、3-0で勝利したファーストレグに続き、このセカンドレグも2-0と完勝。ドイツ勢同士の対決を制した。

 伊藤は後半25分から左SBとして出場した。この交代で、それまで左SBでプレーしたアルフォンソ・デービス(カナダ代表)は左ウイングにポジションを上げ、それまで左ウイングだったセルジ・ニャブリ(ドイツ代表)は、右ウイングへ移動した。つまり伊藤は大きな戦術的交代の一翼を担う形で投入された。SBを縦に2枚並べる守備固めと言っていい。

 守備固めといえば4バックを5バックにする方法ばかりが目立つJリーグ及び森保ジャパンにはない非日本的な作戦に、伊藤は絡んでいた。遠藤をCBで起用したアルネ・スロット采配もそうだが、見習うべきだと考える。

 結局、日本人の欧州組でベスト8に勝ち上がった選手は伊藤ひとりとなった。日本人でCLの決勝に出場した選手はいない。伊藤はその第1号になれるか。

期待を込めて注目したい。

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