4月26日、大阪。SVリーグチャンピオンシップ準決勝は、レギュラーシーズン1位だった大阪ブルテオンが、4位だったジェイテクトSTINGS愛知に連敗(第1戦1-3、第2戦2-3。
「非常に悲しいし、悔しい。でも、ここまでやってきたことを誇りに思います」
ブルテオンのロラン・ティリヘッドコーチは、人柄のよさが滲み出る笑顔で言って、こう続けた。
「レギュラーシーズンとプレーオフは別世界。プレーオフはサントリー(サンバーズ大阪)も準決勝1試合目で2-3と逆転負けしたように、何が起こるかわからない。大事なのは我々が、ケガ人が出るなどしながら、44試合のレギュラーシーズンは1位だったこと。全員が成長したし、満足しているところもあるのです」
記者会見の最後、ティリHCに報道陣から拍手が送られた。それだけ高い評価を受けている。名誉ある"敗退"だった――。
ブルテオンは第1戦の1セット目を落としたが、悲観するほど悪かったわけではない。準々決勝を勝ち上がってきたSTINGSは、宮浦健人など主力が揃ったことも含めて勢いがあったが、西田有志、ミゲル・ロペスのスパイクは火を噴いていた。2セット目をブルテオンは25-18で奪っている。世界指折りのリベロ山本智大がディグからの得点で拳を突き上げ、西田は豪快なサービスエースを決めて咆哮を上げた。中盤以降は相手を突き放している。
しかし、STINGSは吹っきれているように見えた。
「正直、プレーオフ(チャンピオンシップ)で勝てば、オールOKになっちゃうんで」
STINGSの司令塔と言えるセッター、関田誠大が語ったように、そのスタンスが彼らの強さだった。レギュラーシーズンは新戦力が多く、ケガ人続出でメンバーが揃わずに低迷したが、主力が復帰し、連係が噛み合ってきた。
「チームのコーディネートに時間がかかったシーズンで、それが最後の最後に合わせられて、きちんと戦えている感じ。それぞれが役割を全うできるようになりました」
そう語る関田を軸にした変幻自在の攻撃が、ブルテオンに襲いかかった。
【西田有志が語る「敗因」】
「固かった」
ブルテオンの選手たちがそう振り返ったように、レギュラーシーズン1位のチームとして受けて立ったか。ブルテオンは1位で準決勝からの参戦。有利に映るが、実は難しさも抱えていた。プレーオフでは、下位チームには失うものがなく、「勝ち上がってきているだけに試合勘やメンタルで有利」とも言われる。3セット目は20-25、4セット目は16-25と、力なく敗れた。
「1試合目は難しい展開になると思っていました。技術的な話よりも、焦ってしまった結果。(大事な)局面で点数を取れるか。むきにならず、冷静に戦うべきでした」
西田はそう反省していたが、珍しく試合途中で交代を命じられている。ティリHC曰く、「西田はチャレンジのところで、審判へのフラストレーションを感じ、プレーを止めていたので代えました」。エースの姿に象徴されるように、チームは逆流する渦に飲み込まれた。
西田は2試合目を前に「勝」「信」という言葉を多用していた。
「試合展開はわからないですけど、勝つことだけを考えて」
「(やるべきことを)やれば必ず勝てる、そこは自信を持って」
「まず、自分たちを信じないと」
それは焦燥の表出だったか。
2試合目も、ブルテオンは1セット目を16-25と落とし、前日の悪い流れを引きずっていた。ただその後、2セットを連取し、底力を示す。とりわけ3セット目の西田はまさに鬼神の如く、バックアタックは神々しいほどで、終盤のサーブでは連続エースも奪った。
4セット目は25?24と、勝利に手をかけたが、この機会を逃した。
そして宮浦、トリー・デファルコの"ふたつの大砲"を次々に浴びた。"弾を供給した"のは関田だった。ボールが上がったら、たとえどんな体勢でもセットできた。
「宮浦選手、デファルコ選手が得点源でしたが......関田さんが相変わらずすばらしいな、と」
西田はそう言って、敵を褒め称えた。
「(関田と)マッチアップして、トスがどこに上がってくるのか、どんなペースで、どれだけ(ボールが)伸びるか、どういうアプローチでスパイカーが打つのか......常に精度が落ちなかったです」
【一石を投じたジェスキー】
この2試合だけを切り取ると、ファイナル進出にふさわしいのはSTINGSだった。
ただ、シーズン44試合を通じて1位の成績を収めたのはブルテオンだった。長丁場のリーグで、安定した強さを見せた。ケガや病気、個人の不調、チームの不振と浮き沈みがあるなか、その結果には正当性がある。
たとえば欧州サッカーなどでは、1年を通じたリーグ戦で結果を出した王者に最大の敬意が表される。プレーオフを行なう場合はリーグ戦を短くし、プレーオフにも相応の時間(試合数)があるべきだという考え方もある。
「こういう負け方はアスリートとして難しい」
今回の準決勝を最後に退団するトーマス・ジェスキーはセレモニー後、そう言って一石を投じた。
「レギュラーシーズンの試合数は44試合と多く、プレーオフは短い。
結局、ブルテオンは敗退した。しかし、恥じることのない戦いぶりだった。
「Beautiful Game」
STINGSのゴゴール・ミハウヘッドコーチはそう敬意を表し、奇しくもティリHCも同じ表現を用いた。1点が残酷なまでに明暗を分ける試合に会場は熱狂した。
最後の無常感すら、バレーボールの魅力だった。