東アジアE-1選手権初戦。香港を相手に開始26分までに5点を先取したものの、最終スコアは6-1だった。
後半はチャンスの数で香港に上回られた現実をどう評価すればいいのか。難しいところだが、出場した16人のなかで(事実上の)A代表に昇格できそうな選手、来年のワールドカップ本番で見てみたい選手はどれほどいたかという視点に立つと、あまり喜ぶ気持ちにはなれない結末だった。
例外はひとり。前半4分、10分、22分、26分と立て続けに4ゴールを叩き出したジャーメイン良だ。彼がハーフタイムでベンチに下がるのと同時に日本はペースを失った。彼がいなかったら5ゴールを奪うことができたとは思えない。
後半、ジャーメイン(3-4-2-1の2の右、182センチ)と垣田裕暉(1トップ、187センチ)に代わって入ったのは、中村草太(168センチ)と山田新(175センチ)だった。身長はともに10センチ以上、低くなった。2シャドーといっても、ジャーメインと中村はタイプが違う。ジャーメインがストライカータイプだとすれば中村は攻撃的MF系だ。山田もボールを収めるプレーが特段、不得手というわけではないが、どちらかと言えば背後に抜け出すタイプである。
ジャメーメインと垣田を下げ、中村と山田を入れれば、トップ周辺にボールが収まらなくなるのは当然である。
最近の話ではない。森保一監督が2022年1月、大迫勇也に見切りをつけたことに端を発している。以降、さまざまな選手が1トップの座に座ってきたが、大迫に勝る選手はいなかった。大迫と同じタイプはそういない。日本サッカー界にとって大迫は、実力に加え、タイプ的にも貴重な存在だったのだ。その大迫をあえて外したにもかかわらず、森保監督は似たタイプを積極的に探そうとしなかった。
【これまで低評価だったという事実】
鈴木優磨は一度招集したものの、ケガで辞退となって以来、呼ばれていない。筆者は幾度となく、彼こそは日本に欠けているパーツだと指摘してきた。
どんなに遅くても、昨季J2に転落したジュビロ磐田で19ゴールを挙げたタイミングで代表に選んでおくべきだった。格下との対戦が続いたワールドカップ予選などはその格好の機会で、同じメンバーで無意味な大勝を重ねる森保采配を筆者が批判してきた大きな理由のひとつである。
ジャーメインは30歳にして代表デビューを飾った。森保監督が日本代表監督の座に就いたのは7年前。
欧州でプレーした経験はない。ブランド力の低い国内組に留まった。一方で森保監督の欧州組を重視するブランド志向は増していき、メンバーの大半を欧州組から選ぶまでとなった。フィールドプレーヤーに限れば国内組の常連は長友佑都ぐらいに限られる。
もし今回選ばれなかったら、ジャーメインは代表キャップが一度もないまま選手生活にピリオドを打った可能性がある。ここに長期政権の弊害を見る気がする。同じ人物が8年間に渡り代表監督を務めることは、その間、日本サッカーの価値観が変わらないことを意味するからだ。
これまで評価してこなかった選手が、いきなり4ゴールを挙げる活躍をしたという事実は、そうした意味で皮肉である。森保監督にとって手放しで喜べない事象なのではないか。ジャーメインからすれば怒りの4ゴールだったかもしれない。
ちなみにジャーメインをスタメンで起用するなら、組ませるべき1トップは山田だった。垣田をスタメンで起用するなら、シャドーには中村を置くべきだった。こちらのほうが定石。90分を通して試合を平均したペースで運べたのではないか。
1トップ、センターフォワードは日本のアタッカー陣のなかで最大のウィークポイントだとの認識が森保監督にはない。スタメンを飾ることが多い上田綺世は、タイプ的には山田似だ。ラインの背後を突くことを得意にする。プレッシングを考えたとき浮上する前田大然はもちろん、前回インドネシア戦では活躍した町野修斗も、身体は大きいが、ゴール前でボールを受けながらクルッとターンすることができる選手ではない。
前半45分でベンチに下げたということは、中国戦、韓国戦でも出場機会はありそうなムードだ。ともかく、ジャーメインのプレーを通して森保監督のサッカー観に少なからず変化が起きることに期待したい。