東アジアE-1選手権で、森保一監督が率いる日本代表はJリーグの選手で韓国を1-0と下し、3連勝で大会優勝を飾ったが、どこか既視感がある光景だった。

 前半、相馬勇紀のクロスをジャーメイン良がうまくマークを外して受け、左足で蹴り込んで先制に成功している。

ふたりは大会のベストプレーヤーだった。しかし、チーム全体は徐々にペースを失う。後半は45分間、全員が自陣に引いてゴールを死守。体を張って跳ね返し、セカンドボールを拾うこともままならず、波状攻撃を耐え抜いて、勝利をつかみ取った。選手の健闘には拍手を送るべきだが......。

 カタールワールドカップの森保ジャパンは、ドイツ、スペインを相手に徹底した受け身のサッカーだった。圧倒的な劣勢のなか、一発、二発とゴールを決め、いずれも1-2と金星を挙げた。勝利という結果で高評価を受けたが、能動的、主体的な姿勢を欠いたことで格下のコスタリカには敗れ、ラウンド16ではクロアチアに勝ちきることができなかった。

 韓国戦は、よくも悪くも森保監督のカラーがチームに投影されていた。受け身で、相手のストロングを消し、逃げきる。その性質が伝わっているのか、もしくは、そうしたサッカーに合う選手を選出しているのか。

 これぞ森保ジャパンという戦いだった―――。

サッカー日本代表の韓国戦勝利に既視感 カタールW杯後に掲げた...の画像はこちら >>
 カタールワールドカップのベスト16でクロアチアに敗れ去ったあと、森保監督はひとつの指針を掲げていた。

「ボールを持っている時間を増やす」

 それは、受け身サッカーからの脱却宣言だった。

 ベスト8以上に勝ち上がるチームは、「いい守備がいい攻撃をつくる」というのをベースに、ポゼッションでリズムをつくったり、押し込んで先手を取って崩したり、攻撃のバリエーションを出すことができている。守り一辺倒になると、選手の健闘と天運を祈るという偶然性にかけざるを得ない。言い換えれば、それがベスト16の壁になっていたのだ。

 それから3年近くが経過したが、戦いのキャラクターは変わっていない。むしろ、「石橋を叩いて渡らない」森保監督の傾向は強まっている。アジアレベルではレベルの差がありすぎ、色合いがぼやけていただけだった。

【「籠城戦」に近い5-4-1】

 急造のJリーグ選抜になった代表は、図らずも森保監督のパーソナリティが色濃く出た。韓国のサッカーは強さ、高さ、走力と体力任せで、工夫のない前時代的な攻めだったが、それでも押し込まれている。日本の選手たちは人海戦術で守るが、ボールをつなげることができなかった。そのうち守り疲れ、足も動かなくなり、韓国と競うように長身選手を投入して、最後はどうにか耐えしのいだ。

 E-1選手権は、選手以上に森保監督の采配が試されていた。しかし先制のあと、日本は攻撃をまともに組み立てられなかった。キックやコントロール精度が低い選手が多かった韓国が何度もボールを失っていたにもかかわらず、だ。森保監督の3バックはボールを持ち上がる場面もほぼなく、プレスを恐れて前に蹴り込み、簡単に回収されていた。中盤、シャドーの選手が顔を出し、パスを受け、リズムを作る回数も少なかった。

 また、ウイングバックの望月ヘンリー海輝は高さ、スピードが森保監督の好みなのだろうが、技術的に劣り、組み立ての出口になっていない。高い位置で仕事をした相馬も、守備は献身的だったものの後手に回っていた。必然的に、後半は凡庸な5バックになっていた。ふたりのウイングバックは背後を取られ、左右からピンチを作られてしまい、3バックの両端との間は明確な弱点だった。

 森保監督はワールドカップアジア最終予選で用いた3-4-2-1のシステムに自信を得たようだが、互角以上の相手には"籠城戦"に近い5-4-1になってしまう。そのウイングバックに、三笘薫、中村敬斗、堂安律というプレミアリーグ、リーグアン、ブンデスリーガと主要リーグで二桁得点を挙げたアタッカーを起用するのは宝の持ち腐れでしかない。自ら攻撃的な姿勢を封じているようなものだ。

 韓国戦でも、森保監督は3-4-2-1を用いるJリーグのサンフレッチェ広島、柏レイソル、FC町田ゼルビアの選手を中心にチームを組んでいる。その点、彼らしい人材が集まったのだろう。監督のパーソナリティが選手のキャラと同期していたのが3連勝の理由と言える。

「(優勝で)メンバー選考は難しくなる」と、森保監督はうれしい誤算のように言うが、自分の分身のように振る舞った選手がピッチにもベンチにもいたということだ。

 しかし、世界は甘くない。森保ジャパンの戦い方のままでは、「ワールドカップ優勝」など夢物語である。運に恵まれたカタールワールドカップも、ベスト16止まりだった。クロアチアとはPK戦の負けで、"あと一歩"ということになるのだろうが、そこから先、ブラジル、アルゼンチン、フランスといった強敵を打ち負かす戦力はない。現実的な目標となるベスト8も、自分たちの時間を増やさないと厳しいだろう。

 この戦い方で「世界」に挑めるのか。これぞ森保ジャパンの憂鬱、である。

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