E-1サッカー選手権の優勝決定戦となった韓国対日本のライバル対決は、前半8分にジャーメイン良のゴールで先制した日本がそのまま逃げきり、2大会連続通算3度目の優勝を飾った。
ただ、内容的には日本にとって厳しい試合だったことは否めない。【後半の悪い流れを変えられず】
前半は立ち上がりから韓国のロングキックの対応に追われ、過去2試合で見せたような落ち着いたビルドアップができず。効率よく先制点を挙げたものの、その後も敵陣で日本がボールを支配する時間は限られた。
韓国のフォーメーションは、日本と同じ3-4-2-1。おそらく韓国のホン・ミョンボ監督は、ミラーゲームの設定のなかで、できるだけ中盤を省略して日本の強みを消そうと考えたのだろう。結局、ゴールを割れなかったのでそれが大成功だったとは言えないが、それでも日本を苦しめたことは間違いなく、特に後半は一方的に攻め立てた。
日本の反省点は、後半の悪い流れを最後まで変えられなかったところだ。攻撃的に運用できない時の3-4-2-1の問題点を最大限に露呈した格好だが、最後まで森保一監督は4バックに変更することもなかった。W杯予選を戦ったいつものメンバーであれば、個々の判断で少しは流れを変える工夫ができたかもしれないが、さすがに今回のような経験の浅いメンバーにそれを求めるのは酷というもの。
そういう意味では、5バック状態が続いて攻撃の糸口さえも見つけられない難易度の高い戦況のなか、選手たちはよく最後まで韓国の猛攻を無失点でしのいだと言える。
【大会MVP&得点王】
選手個人に目を向けると、攻撃陣では決勝点を決めたジャーメイン良が上々のパフォーマンスを見せた。
この試合で記録した日本のシュートは前後半合わせて4本(前半3本、後半1本)しかなかったが、そのうちの1本は結果的に決勝点となったジャーメインのもの。本人にとってもこの試合唯一のシュートだったが、こういったチャンスの少ない試合で一撃必殺とも言える貴重な一発を決めて勝利を呼び込んだのは、フィニッシャーとしての評価をより高めることにつながった。
得点以外にも、目を引くプレーが多かった。ミラーゲームにより各選手が韓国の圧力を受けるなか、右シャドーでプレーしたジャーメインはボールロストが少なく、頻繁にスペースでボールを引き受けては味方にパスをつなげ、前線で時間を作ることができていた。
後半に入って70分、中盤右サイドで相手のプレスを浴びるなか、川辺駿→ジャーメイン→川辺→望月ヘンリー海輝→ジャーメイン→川辺とつないでプレス回避に成功したシーンは、この日のジャーメインの好調ぶりを象徴するシーンだった。
代表デビュー戦となったホンコン・チャイナ戦で大量4ゴールをマークしていたジャーメインではあるが、対戦相手のレベルを考えれば、この韓国戦で決めた1点は大きな自信になったはず。しかも大会MVPと得点王という勲章も手にして、個人としても爪痕を残すこともできた。今後、この自信がサンフレッチェ広島でのパフォーマンス向上につながれば、9月以降の代表戦で再招集されるチャンスがあるかもしれない。
【守備面でアピールした選手たち】
守備陣では、GK大迫敬介が好パフォーマンスを披露した。とりわけ84分には、至近距離から浴びた18番(イ・ホジェ)のボレーシュートを抜群の反応でビッグセーブ。中国戦の早川友基と同じように、勝敗の行方を左右するシュートストップでチームを救った。ジャーメインとともに、勝利の立役者と言える活躍ぶりだった。
また、その直前には3番(イ・テソク)の意表を突いたロングシュートに対して落ち着いた処理でボールを弾き出し、相手の執拗なクロス供給に対しても正確なハイボール対応を披露。DF陣に安心感を与えたという点においても、評価に値する。
この試合では、日本が韓国の圧力に押された展開だったため、ロングキックで味方にボールを届けようとしたシーンが多かったが、数少ないビルドアップの場面でも大きなミスもなく、攻撃面においても及第点の出来。しかも、これまでの2試合とは違って日本が相手の猛攻を受けていただけに、勝利への貢献度も高かったと言える。
決勝点をアシストした相馬勇紀も、存在感を示したひとりだ。この試合では攻撃回数が少なかったのでオフェンス面の見せ場こそ少なかったが、押し込まれた後半は最終ラインまで下がってディフェンス面で貢献。デュエルにおいても強さを証明することができた。
ホンコン・チャイナ戦でもジャーメインのゴールを2度アシストするなど、クロス供給を含めたキック精度は相変わらず。今大会では2試合でゲームキャプテンを務めたことも、本人にとっては大きな経験になったはずだ。
その他では、3バックの一角としてスタメン出場した古賀太陽も安定感を見せた。しかも、77分からは左ウイングバックにポジションを移すなか、スムースにタスクをこなす柔軟性も示し、特に80分の相手のスルーパスに対して抜け出しそうになった相手を中に絞って食い止めたワンプレーは、古賀の守備センスのよさを証明するものだった。
【選手の能力を引き出すチーム戦術はないのか】
もっとも、こういった選手個々の頑張りがチーム全体として機能していたかという点こそが、サッカーというチームスポーツにおいては極めて重要なポイントになる。その意味では、敵陣でのくさびの縦パスが前半の3本しかなく、クロスボールもわずか5本(前半4本、後半1本)に終わった今回の韓国戦は、「攻撃がほとんど機能しなかった試合」と総括するのが妥当だろう。
こうなった原因は主にベンチワークにあるのは明白だが、同時に、仮にW杯予選を戦ったいつものメンバーでこの韓国に戦っていたら、おそらくここまで苦しめられることはなかったと、容易に推測できるのも事実。
つまり、試合中の戦況判断を含めた選手個人の能力に大きく左右されるのが森保ジャパンのチーム戦術の本質である限り、今回活躍した選手たちが代表に定着するためには、さらに高いレベルの個のクオリティが求められる。
本来であれば、選手個々の能力を最大限に引き出してくれるのがチーム戦術であるべきだが、残念ながら、固定されたチーム戦術のなかで選手の能力が埋もれてしまう試合が多発しているというのが、日本代表の変わらぬ実情だ。
その本質的な部分をいつ変えるのか、それとも変えられないままなのか。9月以降に予定されているW杯本番の準備のための試合は、そこが最大の注目になる。