チャレンジャー・シリーズ 木下グループ杯 レポート#2

坂本花織を破って優勝! ミラノ・コルティナ五輪へ千葉百音が快...の画像はこちら >>

【ラストダンスをもう一度】

 8月のサマーカップ2位で、シーズンインしていた昨季世界選手権3位の千葉百音(20歳/木下グループ)。国際大会の初戦となったチャレンジャーシリーズ(CS)の木下グループ杯(9月5~7日)では女王・坂本花織を突き放し、優勝を果たした。得点は自己ベストの216.59点で、ミラノ・コルティナ五輪へ向けて快調なスタートを切った。

 千葉の新ショートプログラム(SP)は『さくらさくら』で、アイスダンス選手でもあるギヨーム・シゼロンが振り付けをした挑戦的なプログラムだった。だが、サマーカップは6位発進でSPが優勝を逃す要因となったこともあり、このCSの前に昨季使用した『ラストダンス』に戻すことを決定。時間がなかったため、エレメンツの構成は新SPと同じにしたものの、滑り慣れた曲での挑戦となった。

 千葉は本番前には「不安な気持ちがあり、プレッシャーも感じていた」と言うが、演技前半は落ち着いた伸びのある滑りで、3回転フリップ+3回転トーループ、ダブルアクセルは余裕を持って決めた。

 そして、フライングキャメルスピンのあとに曲調が切り替わると動きのテンポもスピードアップさせ、3回転ルッツは4分の1回転不足の判定になったが、流れを途絶えさせることなく、はつらつと踊るようなステップを見せ、納得の演技にした。

 結果は、総合3位だった昨季世界選手権で出した自己ベストに僅か0.33点及ばないだけの73.11点。首位発進となった。

「久しぶりの『ラストダンス』で、お客さんも楽しみにしてくれているだろうし、自分も楽しんで滑りたかったです。レベルは確実に取れていたとしても、まだ"ホワイト"ではなくて"ちょっとグレー"みたいな出来だったし、ルッツのエッジについてももっとはっきりさせて跳んでいかなければいけないと思う。点数は大会によって出方が違うと思いますが、そのなかでも、自分がどれだけ出せるところまで出せるか、という意識で頑張ります」

【スケートの大切さを噛み締めながら】

 翌日のフリーは最終滑走。坂本が合計を203.64点にしたなかでの演技だった。フリーで130.54点を出せば逃げきって優勝できる計算だったが、千葉は「昨季のGPファイナルくらい緊張したし、リンクも少し冷えていたので『自分はできるかな』と不安になるところもありました」と明かす。

 それでも滑り出しは伸びのあるスケーティングで、いつもどおりの千葉らしい滑りだった。

3本目の3回転サルコウは回転不足でステップアウトとなったが、そのあとは丁寧に要素をこなす。

 最後の3回転フリップも「q」(4分の1回転不足)判定にはなったものの、終盤のステップシークエンスでは細かな音もしっかりと拾いながら大きな滑りを見せ、最後までスピードを落とさずレベル4にしたレイバックスピンで締めた。終わった瞬間に優勝が決まったと思える出来だった。

 千葉はサルコウのミスを悔しがりながらも、「国際大会初戦を終えて、とりあえずホッとしている」と安堵の表情を見せた。

「点数は満足いく結果で終われたのはよかったけど、反省点はたくさん見つかった。まずは緊張したなかでどれだけ実力を出せるかというところにフォーカスを当てて、実戦に向けてまた準備していきたいです」

 そして千葉はこう続けた。

「サマーカップが終わってからはすごくギアを入れて練習してきて、それが成果として出た試合だったのかなと感じています。もちろん試合で勝つのもうれしいことではあるけど、まずは自分のなかでスケートがどれほど大切なものなのかということをきちんと噛み締めながら、自分を育て上げていく感覚で今シーズンは仕上げていきたい。これからどんどんショートもフリーも、いいプログラムに磨いていけると信じてやっていきたいです」

【うれしさとともに、まだまだだな】

 SPとフリーはともに自己ベストに僅差まで迫るセカンドベストの得点で、合計は自己ベストをマーク。その結果に「うれしいという感情もあるけど、まだまだだなというところもある」と振り返る千葉。

「緊張したなかでも力を出しきれたほうだなと思います。(ジャッジに)点数を出していただけたのはうれしいけど、自分のなかでは点数より、しっかり演技内容を......。

『ここがよかった、ここが悪かった』というところにフォーカスしてまた練習していきたいです」

 今大会の結果で五輪を狙う今季のプログラムへの迷いはなくなり、自信を持てたのは確かだろう。GPシリーズは第3戦スケートカナダと、第6戦フィンランド杯に出場予定の千葉は、このあと9月24日から始まるCSネーベルホルン杯に出場し、アメリカのアンバー・グレンやイザボー・レヴィトと対戦する予定だ。

 世界で戦う積み重ねのなかで、国際ジャッジの評価を自己分析しながらプログラムをさらに磨き上げていく準備は、今大会の優勝で十分にできたと言える。

レポート#3へつづく

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