初戦のメキシコ戦が日本代表のファーストチームで、2戦目のアメリカ戦がセカンドチーム。結果はメキシコ戦が0-0で、アメリカ戦が0-2だった。
アメリカはファーストチームとセカンドチームの中間的な1.5軍で、メンバーを比較すれば、"2軍"の日本には、はじめから勝ち目の薄そうな試合だった。実は特段、大騒ぎする必要のない順当負けなのである。
問題は結果ではない。こうした設定で戦った森保一監督の考え方であり、強化策だ。支離滅裂。ひと言で言えばそうなる。
このアメリカ戦後の会見で、「なぜ経験の浅い、若手を中心としたメンバーで臨んだのか」という地元アメリカ人記者の質問に、森保監督は「ワールドカップで世界の強豪と戦おうとしたら2チーム分、3チーム分必要だ」と答えた。以前にも幾度か森保監督は同様のコメントをしている。この言い回しに疑問を感じる。「招集した選手26人(今回は27人)全員が確かな戦力でなければ、ワールドカップは戦えない」ならばわかる。
実際、森保監督のこれまでの戦いにはそう捉えたくなる試合がいくつもあった。1戦目、2戦目は1軍で戦い、3戦目は2軍のメンバーを多く入れた1.5軍級になる。アジアカップなど短期集中のトーナメントでは、たいていこのパターンだ。
AかBなのだ。選手を少しずつ漸次的に、グラデーションをつけるように変えていくことができない。
ワールドカップアジア予選も2次予選、3次予選ともにほぼ毎度A(ベストメンバー)だった。3次予選では早々に首位を独走したが、7戦目、8戦目を迎えてもAにこだわった。「本大会までに負けていい試合はひとつもない」と森保監督が言えば、傍らに座る山本昌邦ナショナルチームダイレクターは、本大会の抽選会でポット分けの要素になるFIFAランキングを持ち出し、「勝ち進むためにはいいポットには入らなければならない。負けられないのです」と、森保監督に助け船を出した。
【勢いのある選手も見当たらない】
選手を試したのは突破を決めた9戦目(オーストラリア戦)から。これでは選手は育たない。実力と枠の関係で言えば、日本は世界で一番余裕があった国だ。にもかかわらず、ベストメンバーで戦い続けた。
メキシコ戦しかり。絶対に負けられない戦いを続けようとする。だが、体力的に行き詰まる。今回は中2日。3時間の時差があるので、試合間隔は丸2日間なかった。同じメンバーでは戦えない。というわけでアメリカ戦はようやくセカンドチームの登場となった。
だが、彼らは一緒に戦った経験がない急造チームだ。
理由は、目の前の試合に勝ちたかったからだ。森保監督にとって大切なのは将来のことより目先の勝利なのだ。メキシコの監督はハビエル・アギーレ。元日本代表監督である。保身のためにも負けられない戦いになってしまった。
アメリカ戦はそのツケが現われたに過ぎない。結局この2戦を通して選手は誰も育たなかった。
収穫ゼロと述べたが、後退した感さえある。勢いのある選手が見当たらないのだ。メキシコ戦後、「僕らのほうが強かった」と言ったのは久保建英だが、久保がメキシコ戦で特に輝いたわけではなかった。もうひとりの看板選手、三笘薫は、抜けないサイドアタッカーに成り下がってしまった。このアメリカ戦ではウイングバックより15~20メートル高い位置で構えるウイングとして途中出場したが、プレーに鋭さが蘇ることはなかった。
アメリカ代表の看板選手、ミラン所属のクリスティアン・プリシッチと比べると一目瞭然だった。
アメリカは、まさに"困ったときはプリシッチ"だった。頼りになる10番だった。久保、三笘はまだこの域にない。10番を背負う堂安律しかり。この2戦で上田綺世、町野修斗、小川航基が出場したセンターフォワード陣も同様だ。頼りになる選手と言われて、相変わらず遠藤航の名前が挙がる限り、得点への期待は高まらない。ベストメンバーに固執するあまり、勢いのある選手の起用を見逃してきた感がある。
そもそも森保監督は選手を育てる気があるのか。使える選手の数を増やす気があるのか。アメリカ戦の選手起用を見せられると疑いの目を向けたくなる。