星野伸之が語るオリックスのCS展望 後編

(前編:オリックスがCS日本ハム戦に勝つための戦術 第1戦で先発濃厚の山下舜平大の別の起用法も予想した>>)

 星野伸之氏に聞くオリックスのCSを勝ち抜くためのポイント。後編では、ソフトバンクが待ち受けるファイナルステージに進出した場合の戦い方について考察してもらった。

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【ソフトバンクに「戻ってきてしまった」強打者】

――日本ハムを下してファイナルステージに進出した場合、最長で6連戦になります。ファーストステージでピッチャーを使ってしまうぶん、ピッチャーの起用法が難しくなりますね。

星野伸之(以下:星野) ファーストステージで宮城大弥、九里亜蓮が登板すると仮定すると、先ほど(前編でも)話したように勝負をかけて、(ファーストステージの1戦目での先発が濃厚と報道されている)山下舜平大をファイナルステージの頭に持っていく想定でもいいのかな、と思っていました。

 あとは連戦になるので、先発が早いイニングに降板することが多くなると、リリーフに相当な負担がかかります。そのために「第二先発」が必要になると思いますし、髙島泰都でいいと思いますが、気がかりなのは、曽谷龍平の状態がどこまで戻ってきているかということ。アンダーソン・エスピノーザが故障で離脱しているので、曽谷の状態がよくなければ、「ブルペンデー(リリーフのピッチャーを短いイニングで継投)」にかけてみるのもひとつの選択肢です。

――ソフトバンクで警戒しなければいけない選手は?

星野 僕は柳田悠岐だと思います。今季は故障で長期間離脱していてほとんど何もできなかったシーズンでしたが、(10月5日の)ロッテ戦で先頭打者本塁打を逆方向に打っています。小久保裕紀監督が柳田を打席に多く立たせようと1番で起用していましたが、それが功を奏して、いい時のバッティングフォームを取り戻してきています。体のコンディションも非常によさそうですね。

 CSでも1番で起用してくる可能性がありますし、突破口を開くという意味で柳田ほど怖いバッターはいません。それと、彼は短期決戦の経験も豊富ですから。

――パ・リーグ首位打者を獲得した牧原大成選手や、牧原選手と首位打者を争った柳町達選手も怖いですね。

星野 当然、そうですね。ただ、柳田が爆発するとチームが勢いづいてしまいます。オリックス目線でいえば、「短期決戦の戦い方を熟知している選手が戻ってきてしまったな......」という感じではないでしょうか。一発のある山川穂高も経験があって怖いですが、個人的には、柳田に対して最大限の警戒が必要だと思います。

【チームをイケイケにできる主砲に期待】

――今季オリックスは、ソフトバンクに大きく負け越しましたが(7勝16敗2分け)、シーズン終盤に4連勝して嫌なイメージを植えつけたと思います。短期決戦にも影響はありそうですか?

星野 オリックスの選手たちにとっては、けっこう大きかったんじゃないですか。「ソフトバンクには歯が立たない」というイメージで終わらなかったわけですから。それも、敵地(みずほPayPayドーム福岡)での4連勝でしたよね。なかなかできることではありません。ソフトバンクにとっても、オリックスが勝ち上がってくると嫌なイメージはあるんじゃないですか。

 そういう意味では、その4連勝のなかで、2日連続で無死満塁のピンチを無失点に抑えた山﨑颯一郎を使うタイミングもポイントになるかもしれません。リリーフはルイス・ペルドモとアンドレス・マチャドがリリーフの柱になるとは思いますが、同様にソフトバンク戦でよかった才木海翔の起用法もカギを握りそうです。

――ソフトバンクのピッチャー陣はどう見ていますか?

星野 対戦成績が示すように、基本的にどのピッチャーもなかなか打てていませんが、日本ハム時代から相性が悪い"天敵"の上沢直之が先発した(9月20日の)試合を勝ちましたよね。上沢に負けがついたわけではないのですが3点を取りましたし、あの勝利も大きかったはずです。 

――先ほど、柳田選手を警戒すべきとのお話でしたが、一方でオリックスのキーマンを挙げるとすれば?

星野 杉本裕太郎です。4番ではなく、6番あたりでもいいと思うんです。彼が打つと本当にチームが盛り上がりますし、過去の例からも短期決戦で乗った時は手がつけられませんから。

 それと、杉本にホームランが出る前は、必ずと言っていいほど逆方向(ライト方向)にヒットを打っています。例えば、第一打席で逆方向へヒットを打つと、次かその次の打席でレフトへ大きなホームランを打ったりする。ホームランにならなくてもすごくいい当たりをフェンス前まで飛ばしたりしています。なので、逆方向へヒットを打った後の杉本には期待できます。

――最近の杉本選手の状態をどう見ていましたか?

星野 9月22日のソフトバンク戦で、セットアッパーの松本裕樹から決勝のホームランをレフトに打ちましたが、上半身が泳ぎながらも、粘り腰で踏ん張ってうまく打っていました。「杉本の打ち方としては珍しいな」と思いましたが、あのような打ち方ができるのであれば、ピッチャーは"抜いた球"を投げるのが怖いでしょうね。拾われて長打にされてしまうので。

 勝ちパターンの松本から打っているというのも大きいですし、やはりホームランを打ってベンチに戻ってきた時の"昇天ポーズ"ですよ。短期決戦はチームを勢いづける"ノリ"も大事になりますから。杉本が打てばファンも含めてイケイケになる気がします。

――ほかにポイントになりそうなことはありますか?

星野 森友哉を何番で起用するのかもポイントになりそうです。仮に3番に置くと、けっこう打順が回ってきますよね。彼が本来の調子なら、ソフトバンクの強力先発陣に対して3番あたりを打ってくれると助かるのですが、状態がどうなのか......。右太腿裏ハムストリングの故障上がりなので、あまり走らせるとダメなのであれば、下位打線のほうがいいのかなと。

 あとは、やはり太田椋もポイントになるひとりでしょう。彼は逆方向(ライト方向)にも打てますし、引っ張ることもできるので。"つなぎ役"の役割も、自分で試合を決めることもできるので、3番などで期待しています。

【プロフィール】

星野伸之(ほしの・のぶゆき)

1983年、旭川工業高校からドラフト5位で阪急ブレーブスに入団。1987年にリーグ1位の6完封を記録して11勝を挙げる活躍。

以降1997年まで11年連続で2桁勝利を挙げ、1995年、96年のリーグ制覇にエースとして大きく貢献。2000年にFA権を行使して阪神タイガースに移籍。通算勝利数は176勝、2000奪三振記録している。2002年に現役を引退し、2006年から09年まで阪神の二軍投手コーチを務め、2010年から17年までオリックスで投手コーチを務めた。2018年からは野球解説者などで活躍している。

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