荒木雅博が2025年度「ゴールデングラブ賞」受賞者を解説~パ・リーグ編
伊藤大海、タイラー・ネビン、牧原大成、村林一輝、紅林弘太郎、西川愛也......。今年、パ・リーグのゴールデングラブ賞は6人の選手が初受賞を飾った。
【目を見張ったネビンの繊細さと丁寧さ】
── 2021年から山本由伸投手(当時オリックス/現ドジャース)が3年連続でゴールデングラブ賞を受賞していましたが、昨年はリバン・モイネロ投手(ソフトバンク)、そして今年は伊藤大海投手(日本ハム)が初めて受賞しました。
荒木 モイネロ投手は阪神との日本シリーズで一塁前へのファウルフライを自らダッシュして捕りに行ったように、「守備好き」の一面を垣間見せました。しかし、伊藤投手のように「エース」の称号を取るような選手は、守備も牽制も一流です。
── 捕手は、若月健矢選手(オリックス)が2度目の受賞。盗塁阻止率は太田光選手(楽天)が.383、田宮裕涼選手(日本ハム)が.351、海野隆司選手(ソフトバンク)が.268、古賀悠斗選手(西武)が.222で、若月選手は.219でした。
荒木 ゴールデングラブを7度受賞した甲斐拓也捕手がFA移籍(ソフトバンク→巨人)したことで、誰が受賞するのか注目していました。ちなみに、最優秀バッテリー賞は日本ハムの伊藤大海投手と伏見寅威捕手のバッテリーが受賞しています。
そうしたなかで若月選手は、上記の捕手のなかでもっとも多い121試合に出場し、リード、キャッチング、ブロッキング、スローイングといった総合力が評価されての受賞だということでしょう。
── それにしても若い捕手が育ってきました。
荒木 田宮選手、海野選手のほかにも、寺地隆成選手(ロッテ)が116試合に出場するなど、若手の進境は来年楽しみですね。
── 一塁は、ゴールデングラブ賞4度受賞の中村晃選手(ソフトバンク)を抑えて、新外国人のタイラー・ネビン選手(西武)が初受賞です。
荒木 ネビン選手は来日1年目でありながら、「日本人らしい思いやりのあるプレー」を体現しています。
【源田壮亮の牙城を崩した紅林の強肩】
── 二塁は牧原大成選手(ソフトバンク)が初受賞となりました。
荒木 今年は育成選手初の首位打者。そして昨年まで内外野どこを守らせてもうまいユーティリティプレーヤーだっただけに票が割れ、ゴールデングラブ賞を惜しいところで逃がしていました。それが今年はプロ15年目にして初めて選出されました。
頑張れば報われるという意味で育成選手にとって大きな目標になるでしょう。二塁が本職の私が見ても、足の運び方、ゴロ捕球のバウンドの合わせ方もよく、守備範囲も広いと思います。
── 西武の滝澤夏央選手は、二塁で83試合に出場し、ショートでも54試合守りました。そのため票数が伸びませんでした。ちなみに、滝澤選手も育成出身です。
荒木 身長164センチと球界一の小兵ながら、守備力はほんと高い。
── 三塁は、遊撃からコンバートされた村林一輝選手(楽天)が初受賞です。
荒木 遊撃を守っていても、ゴールデングラブ受賞こそなかったですが、うまかったですからね。アクロバチックかつ強肩で、3度受賞経験のある宗佑磨選手(オリックス)を抑えての受賞となりました。プロ10年目にして打率もリーグ5位(打率.281)。攻守にわたり奮闘しましたね。
── ショートは紅林弘太郎選手(オリックス)が初受賞です。
荒木 内外野の境目の深いところから一塁に大遠投する強肩が紅林選手の魅力ですよね。両リーグ最多の67回、併殺プレーに参加してもいます。5年連続受賞だった今宮健太選手(ソフトバンク)の牙城を源田壮亮選手(西武)が崩し、その源田選手の7年連続受賞の高く険しい牙城を今度は紅林選手が崩しました。わずか5票差でしたが、大いに自信につなげてほしいですね。
── ショートにはほかにも有望な選手がいます。
荒木 野村勇選手(ソフトバンク)はクライマックスシリーズ、日本シリーズで球際の強さを遺憾なく発揮しました。私が現役時代、ショートの井端弘和さんのプレーを見て、またアドバイスされながら覚えていったように、野村選手も牧原選手や今宮選手の現役二遊間のプレーを見ながら進歩しているのだなと感じました。
── 宗山塁選手(楽天)のプレーはいかがですか。
荒木 これまで大学生は春秋リーグ戦の最大各15試合ずつだったのが、一気に122試合、それも内野手で出場したのは評価が高いと思います。今後、ゴロ捕球から送球までの一連の動作はどんどんうまくなっていきそうなのを見ていて感じました。それこそダイヤモンド内にいる村林選手、小深田大翔選手、浅村栄斗選手もゴールデングラブ賞を受賞しています。彼らから学ぶことはたくさんあると思います。
【ハイレベルなパ・リーグ外野陣】
── 外野手は、周東佑京選手(ソフトバンク)が2度目、辰己涼介選手(楽天)が5度目、そして西川愛也選手(西武)は初受賞です。
荒木 セ・リーグ同様、"連続受賞"は2年連続の周東選手、5年連続の辰己選手のふたりだけです。まさに、選ばれしふたりですね。
── 周東選手と辰己選手の守備は、どこがどのようにうまいのですか。
荒木 辰己選手は強肩ですよね。たとえばランナー二塁で彼のところに打球が飛んだ場合、私が三塁コーチなら絶対に腕を回しません。肩の強さ、送球の正確性も含め、セーフになる確率が低い。周東選手はやはり俊足を生かして「打球への一歩目」が早くて、落下点に一直線で入ります。さらに、後ろ向きの打球にも強い。
── ほかに気になった選手はいましたか。
荒木 刺殺は辰己選手が330、西川選手が295、周東選手が249でした。中島大輔選手(楽天)も301と健闘しています。新人の西川史礁選手(ロッテ)は両リーグ最多となる補殺9を記録しましたが、刺殺は210。
一方、今年は打撃でブレークした柳町達選手(ソフトバンク)も補殺8を挙げましたが、刺殺は207でした。また2年連続受賞していた強肩の万波中正選手(日本ハム)は、今季は失策が7あり、惜しくも受賞には届きませんでしたね。
荒木雅博(あらき・まさひろ)/1977年9月13日、熊本県生まれ。熊本工高から95年ドラフト1位で中日に入団。2002年からレギュラーに定着し、落合博満監督となった04年から6年連続ゴールデングラブ賞を受賞するなど、チームの中心選手として活躍。とくに井端弘和との「アラ・イバ」コンビは中日黄金期の象徴となった。17年にプロ通算2000安打を達成し、翌18年に現役を引退した。引退後は中日のコーチとして23年まで指導し、24年から解説者として新たなスタートを切った










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