5月9日、10日に大阪で行なわれたSVリーグチャンピオンシップ準決勝。大阪ブルテオンはジェイテクトSTINGS愛知を3-0、3-1で下し、2戦先取で決勝進出を決めた。

 第2戦の西田有志(26歳)は、あらためてスター性を証明している。1日目の黒星で、乾坤一擲で挑んできたジェイテクトの希望を粉砕。味方が得点をほしいときに輝いた。

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 1セット目は20点まではタイスコアだったが、西田のサーブが唸りを上げ、ブレイクに成功。それでも23-23と食い下がる相手に対し、西田が再び突き放した。2セット目は24点目、25点目を記録。4セット目は自身のサーブから自らのスパイクで決着をつけた。

 瞠目すべきは3セット目だった。序盤からチグハグな戦いぶりで10-18までリードを許したが、西田の連続サービスエースで差を縮めたことによって、チームは本来の律動を取り戻した。結局、このセットは20-25と落としたが、自分たちの強さに気づき直したと言えるだろうか。エースの胆力だ。

 もっとも、試合後の西田は淡々としていた。

「試合では、思われているほど複雑には考えていません」

 コートで爆裂する動きを見せる彼だが、会見では竜が羽をたたんで片目だけ開いているようだった。

「複雑に考えるんだったら、練習の時からやれよ、ってところで。今日も、いろんなミスあったかもしれませんけど、そこまでバレーを俯瞰するっていうことが勝つために必要か、というのはあって。(3セット目はリズムを失って奪われたが)そういうメンタリティはなくてもいいかなと、4セット目に臨みましたね」

 平常心でいるからこそ、戦いの変化に適応できる。しかし、それは一朝一夕では為せない。常日頃からの鍛錬が必要で、バレー関係者の間でも称賛されるプロ精神の賜物だ。

「"みんな見習えよ"とは言わないですが、(西田は)それほどのプロフェッショナルですね」

 同じオポジットで、日本のバレーをけん引してきた清水邦広が手放しの称賛を送るほどだ。

【「胸を張って戦いたい」】

――"バレーを生きている"という表現が似つかわしいですね。

 今シーズンの開幕前のインタビューで西田に話を向けると、彼はこう答えていた。

「バレーしかしていないです(笑)。それが自分の一日で、すべての時間を注ぎ込みますね。最近は24時間だと足りない。

練習が始まる1時間半から2時間前に体育館へ来て、ランニングとかアップを始めて準備運動をするんですが、これが"練習を100%でするための1時間半"。チーム練習では重心管理、ジャンプの仕方とか、練習から100%で入れるようにしています。100%で練習することが、100%で試合をすることに結びつくし、100%が出しやすくなる。リカバリーも含めたら10時間以上になります。家でも、空気圧迫(マッサージ)や水素(吸入)を1時間以上かけて、最後に体を動かしながら自分と向き合って終わるメニューですね」

 西田はまさにバレーを生きることで、その境地に辿り着けた。

「(決勝で当たることになったサントリーサンバーズ大阪が)強いチームなのは変わりありません。昨シーズンも結果を残しているチーム、選手たちと言えるでしょう」

 彼は決勝に向け、超然と語っている。

「でも、自分たちも同じ人間なんで、特に考えることはありません。自分たちがやるべきことをやったら、結果につながるはず。相手の"サントリーが"とか、"(ドミトリー・)ムセルスキーが"とかではなく、ブルテオンとして、西田として戦うだけですね。戦っている比較対象どうこうじゃなく、自分たちが胸を張って戦いたいと思っています」

 何も語っていないようにも、すべての真理を語っているようにも思える。技術の開発、改善、修正は日々行なっているはずで、それは途方もない量になるだろう。

だから今さら、何かをやったら勝てるとか、相手のどこが弱点かとか、短絡的な結論には結びつけないのだろう。合理的な考察と検証を重ねているからこそ、説明する言葉は哲学性を帯びる。

「自分の論理を体に落とし込めたら、もっと進化できる。どこかをスキップすると崩れてしまうんで、丁寧に。時間はかかるし、どこかで燻(くすぶ)るかもしれませんが、それが正解だと信じています。道路と一緒ですよ、凸凹を直しながら......」

 開幕前の西田はそう語っていたが、そのとおりなら栄光への道はできている。

 西田は確実に頼もしくなった。存在自体がチームの攻守を分厚くしている。どれだけ苦しい状況であっても、"西田がどうにかしてくれる"という信頼で、周りも逃げずに踏みとどまって戦えるようになった。その忍耐力が逆転の狼煙(のろし)だ。

「(ジェイテクト戦は)難しい試合でしたけど、チームとしてこうして勝てたことが大きな経験で......って言うてる間に、来週の今頃にはファイナルの結果に出ているはず。それまで時間を無駄にせず、1日を大事に過ごしたいなと思っています」

 西田は関西弁のトーンで勝負哲学を語った。

勝負は準備の段階でついている。勝つべき者が勝つべくして勝つのだ。

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