SVリーグチャンピオンシップ準決勝、大阪ブルテオンはジェイテクトSTINGS愛知をセットカウント3-0、3-1で下し、2戦先取で決勝進出を決めた。

 大阪ブルテオンのリベロ、山本智大(31歳)はその日もコートで笑顔だった。

それは守備者としての境地に辿り着いた者だけの好奇心と余裕だろう。福をもたらす守護神というのか、優勢でも劣勢でも後ろからチームを盛り立てた。

「(笑顔は)素ですね。早くボール飛んでこないかなって、楽しんでいましたよ」

 山本は、まさに幸せを呼び込むような笑顔で言った―――。

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 5月9日の準決勝1日目から山本は異彩を放っていた。1セット目は両チームがサイドアウトを取り合う、じりじりとした展開だった。いわゆる我慢比べだ。

「全部、拾ってやろうと思っていました」

 山本はそう振り返ったが、"攻める気概"が守りの粘り強さにつながっていた。

「1セット目から、チームとしていいディフェンスがあって、リズムに乗れたと思います。僕のエリアは絶対に落とさない、という気持ちでしたね。3セット目は、24点目でいいパスが返せていいディフェンスもできた。拮抗していましたけど、自信を持って絶対できると思ってプレーしていました。

こうした展開は楽しいし、サイドアウトは自分たちの強みですから」

 いい守りがいい攻めを作る。それはほとんどのボールスポーツに当てはまる鉄則と言える。リベロの山本が守備力を光らせることで、セッターのアントワーヌ・ブリザールも変幻自在のトスを上げていた。1セット目、富田将馬にノーブロックで打たせた一撃は圧巻だった。

「今シーズンは、アントワーヌがうまくアタッカーを操ってくれていますね。すごく助かるんですけど、リベロとしてはブロックフォローもどちらにつくべきかわからないほど振られるので、難しいんですよ(笑)。それだけアタッカーがベストの状態で打っているということで、いい状態でアントワーヌのところにつなげられたらいいと思うし、そこは徹底してやりたいですね」

 山本はAパス(セッターの定位置に返球する高精度のパス)をブリザールに戻し続ける。繰り返すが、その守備は常に攻撃につながっていた。3-0のストレート勝利は必然だったと言える。

【「最後まで我慢できるか」】

 準決勝2日目も、山本は粛々とエリアをカバーしていた。際立ったのはブロックフォローだった。スパイクを打つ選手のサポートだが、こぼれてくる可能性がほんの数回でも、毎回、機敏にポジションに入る丁寧さ、誠実さが目を引いた。

まさに守備者としての資質が問われるアクションだろう。彼は神がかったディグが代名詞だが、地味な仕事を100%でできることが真の才能かもしれない。

 1セット目の9-9のシーンで山本はブロックフォローに成功し、西田有志がライトからスパイクを打ち込んだ。2セット目も、9-10とリードされた場面で、ブロックフォローから富田がスパイク成功。拮抗した展開で、流れを引き寄せていた。

「今日は全体的に相手のスパイカーが僕に打ってくるのが少なかったので、難しい状況でした。でも要所でディフェンスできたし、(フローターサーブでは)富田と2枚キャッチをして、(ミゲル・)ロペスのパイプを生かせたし、よかったですね。ブロックフォローはとくにいいところに飛んできたので、うまく取れましたね。自分の役割は、そこしかないと思っているんで、それを全うできてよかったです」

 山本はそう言って、攻守が連動していたことを説明している。

「前日の試合後ミーティングで、『TJ(ジェイテクトのエース、トリー・デファルコ)はもっとできる選手』という話が出たし、(ステファン・)ボワイエがすばらしいのもわかっていました。耐えるところは耐えて、冷静に戦ってと思っていたので、最後はねじ伏せて、いい勝ち方だったなと思います」

 我慢比べを制し、完勝だった。2日目も、3セット目を失うなど、試合の流れがどちらに転んでもわからなかったが、そこで勝ちきったのは実力だろう。

 チャンピオンシップファイナルで激突するサントリーサンバーズ大阪は初代王者で、極めてタフな相手だ。

「ファイナルも最後まで我慢できるか。粘り負けしないように......今日も(ウルフドッグス名古屋戦に勝利したサンバーズのリベロ)小川(智大)選手は非常によかったので、"拾い負け"しないように頑張りたいですね」

 山本は言ったが、日本代表のリベロとして双璧をなす小川との勝負は見ものだ。

「サントリーとはバレーが似ているんですよ。パスは小川と(髙橋)藍、僕たちは僕と富田。(イゴール・)クリュカとロペスはとにかく打たせる......。あとはサーブでどれだけ殴れるか。サントリーはブロックがいいので、ブロックフォローが大事になってくるし、ハイボールも無理にリスクを負わずにリバウンドを取って、賢くやることが大事ですね。高さ勝負では分が悪いので、リバウンドを逆サイドへ振って、それ以外も1本目の質やトスの精度など、調整して頑張りたいですね」

 5月15日から横浜で始まるファイナル。昨シーズン、レギュラーシーズン1位ながらチャンピオンシップ準決勝で姿を消したブルテオンは、捲土重来で王座に挑む。

「厳しい状況があっても、自分たちを信じて、焦らずにやりたいです。後ろから見ていて、いいときの自分たちの攻撃は止められないですよ」

 リベロ山本は、守りを攻めに結びつける。

「俺に打ってこい!」と、決戦で浮かべる笑みは格別だ。

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