攝津正が分析するソフトバンクの現状 投手編

 7月2日時点(以下同)で44勝28敗1分け、パ・リーグの首位につけるソフトバンク。しかし、2位以下のチームとの差はわずかなだけに、リーグ3連覇に向けて夏場をいかに乗りきっていくかが重要だ。

 勝負の後半戦を迎えるソフトバンクの現状について、かつて5年連続で開幕投手を務めるなどソフトバンクのエースとして活躍し、2012年に沢村賞をはじめとする数々のタイトルを獲得した攝津正氏が分析。まずは投手陣を語ってもらった。

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【8勝を挙げる大津の、昨シーズンからの進化】

――チームトップの8勝(2敗)を挙げ、先発ピッチャー陣を牽引している大津亮介投手のピッチングをどう見ていますか?

攝津正(以下:攝津) 真っすぐの出力が上がって、球速も少し速くなったんじゃないですかね。シュート回転して真ん中に入っていくことが少なくなりました。今まではストライクゾーン内に投げたあとに外角を使う組み立てが多かったのですが、内角の深い部分まで投げ込んでいくようになったんです。内角を意識させることで外角の変化球がより生きていますし、バッターは打つゾーンをズラされている感覚があると思います。

 ソフトバンクは、あまりそういった組み立てをするピッチャーがいません。勢いで投げて抑えるというか、球威で押すタイプが多いですよね。その点、大津はコントロールもいいのでフォアボールをほとんど出しませんし、追い込んでからラクに投げられていると思います。

――大津投手は球種が豊富ですが、中心となるボールは?

攝津 チェンジアップです。昨年は全然ダメでフォークを多めに投げていたのですが、握りなどを変えて改良したのか、今年は抜群にいいです。チェンジアップとフォーク、ふたつの落ちる系のボールで緩急をつけることができていますし、バッターが戸惑っているように見えます。

チェンジアップはあまり落ちずにそのままフワっといくのですが、フォークはチェンジアップのような軌道からストンと落ちる。

自分が解説で見ていても、どちらの球種なのかがなかなか判別できないんです。球速表示を見て、「今投げたのはフォークか。さっき投げたのはチェンジアップだったんだな」と確認しています。

――攝津さんは以前から、大津投手の能力を高く評価されていました。

攝津 真っすぐがある程度速く、コントロールがよくて球種も豊富。緩急が使えるうえに落ちるボールもありますし、いいピッチャーの条件が揃っていましたから。課題は体力面。昨年はシーズン前半が全然ダメで後半になって調子が上向いていましたが、今年は前半がいいので、後半でどこまでいけるかは未知数です。
 
 6月19日の日本ハム戦は7回4失点で負け投手になり、6月9日の阪神戦は6回3失点で勝ち投手にはなりましたが、決して内容はよくなかった。直近の西武戦は7回1失点とまた好投しましたが、夏場をどう乗りきるかがポイントになるでしょう。

【リリーフはルーキー含め充実】

――ここまで6勝0敗、防御率1.84と好調な、高卒3年目の前田悠伍投手はいかがですか?

攝津 打線に助けられている部分もありますが、ピッチングはよくなってきていると思います。基本は5イニング以下だったので、もう少し長いイニングを投げることが課題だと見ていましたが、直近3試合は7イニング投げていますし、今の感覚をキープできればいいですね。

 平均球速(144.5キロ)は速くないですが、それでも真っすぐは昨年より少し速くなった。その分、カーブやフォークでも空振りが取れるようになってきました。

――リバン・モイネロ投手が不在など、先発ピッチャー陣に苦労するなか、前田投手にかかる期待も大きいでしょうね。

攝津 結果だけを見れば「先発2番手」と言っていいピッチングをしています。ただ、少し厳しい言い方になってしまいますが、やっと一軍で戦えるようになったというか、スタートラインに立った感じだと思います。

――リリーフ陣はどう見ていますか?

攝津 シーズン序盤はやりくりに苦労していましたが、今は松本裕樹がある程度投げられますし、杉山一樹も想定よりも早く復帰できました。さらに上茶谷大河もいい。(チーム最多27登板の)木村光は打たれるケースが多くなるなど疲れも見えますが、全体としては持ち直していると思います。
 
 ロベルト・オスナが戻ってきたことも大きいですし、やはり杉山が一番後ろにいることで継投が安定しますよ。上茶谷みたいにイニングをまたぐ投手もいますし、先発が早く降板してしまっても試合を崩さずに済んでいます。

――そのほかにも、甲斐拓也(2025年にFAで巨人に移籍)の人的補償でチームに加わった伊藤優輔投手が18試合、ドラフト3位ルーキーの鈴木豪太投手も16試合に登板しています。

攝津 点差が開いて試合に余裕がある状況ではありますが、使ってもらった時にしっかり結果を残しています。

彼らが投げることで勝ちパターンのピッチャーを休ませることができますし、ブルペンがうまく回っていると思います。伊藤は防御率が1点台、鈴木も2点台前半と勝ちパターンで起用されてもおかしくないピッチングをしています。加えて、津森宥紀もよくなってきましたね。

 投手陣の課題は先発ピッチャーでしょう。上沢直之は戦列に復帰したので、あとはモイネロが戻ってくればもう少しラクになるのですが......。

――今後のキーマンになりそうなピッチャーは?

攝津 やはり大津じゃないですか。大津がカードの頭に投げていますし、ほかに柱になるピッチャーがいない状況です。ここで大津がしっかりエース級になってくれれば面白いですね。今年こそは先発ローテーションから外れることなく、シーズンを通して(ローテを)守ってほしいです。先ほども話しましたが、最近の試合ではピッチング内容がよくないこともあるので、ここで耐えられるかどうか、いいパフォーマンスを取り戻せるかどうかがポイントです。

(打者編:攝津正が投手目線で嫌だと語るソフトバンクの打者は? トレードで電撃移籍の山本祐大は短期間で「認められた」>>)

【プロフィール】

攝津正(せっつ・ただし)

1982年6月1日、秋田県秋田市出身。秋田経法大付高(現ノースアジア大明桜高)3年時に春のセンバツに出場。

卒業後に入社したJR東日本東北では、7度(補強選手含む)の都市対抗野球大会に出場した。2008年にソフトバンクからドラフト5位指名を受け入団。抜群の制球力を武器に先発・中継ぎとして活躍し、沢村賞をはじめ、多数のタイトルを受賞した。2018年に現役引退後、解説者や子どもたちへ野球教室をするなどして活動。通算282試合に登板し、79勝49敗1セーブ73ホールド、防御率2.98。

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