日本代表の8度目のワールドカップ挑戦は、32強で終わってしまった。夢の優勝はおろか、現実的な目標であるベスト8にも届かなかった。

大会はここから佳境に入っていくが、日本ではその敗因や足りなかったものについて、議論が交わされている。

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 個人的には何より、真のワールドクラスの不在が最後の差となって表れたと思う。今大会の日本代表は、優れたクラブチームのような、練度の高い組織的な集団だった。また選手のほとんどが欧州のクラブに所属している。しかし、トップ中のトップクラブでレギュラーを張っている選手は皆無だ。

 直前の2025-26シーズンのチャンピオンズリーグで8強に入ったクラブで、チームの主力と呼べる日本人選手はスポルティングCPの守田英正だけだった。だがご存じの通り、森保一監督はこの貴重な経験の持ち主を最終メンバーから外している。今さらこの選択の是非を問おうとは思わないが、ワールドカップのような至高の大会では、やはり最後は個の力が問われることになる。

 世界中のファンが注目するピッチ上で、違いをつくれるかどうか。さまざまな心理戦が繰り広げられるなか、平常心を保ちつつ、自らを表現し、本領を発揮できるかどうか。そのためには、日頃から至高の舞台を踏み、最上位の相手たちと日常的に戦うことが重要なのではないか。

 奇しくも、今大会の日本代表合宿で、鎌田大地がクリスタル・パレスのカンファレンスリーグ優勝をチームメイトに祝ってもらった際、こんな発言をしていた。

「嬉しいですけど、優勝したのは(欧州の第3の大会である)カンファレンスリーグなので、チャンピオンズリーグで上に行けるように、みんなで頑張っていきましょう、と伝えました」

 日本に逆転勝利を収めたブラジルの先発メンバーには、GKアリソン・ベッカー(リバプール)、DFマルキーニョス(パリ・サンジェルマン)、DFガブリエウ・マガリャンイス(アーセナル)、FWヴィニシウス・ジュニオール(レアル・マドリード)と、直前のシーズンのチャンピオンズリーグでベスト8以上に残ったチームの主力が4人いた。後半途中に投入され、逆転ゴールを決めたFWガブリエウ・マルティネッリ(アーセナル)もそうだ。

【1対1の勝負を挑もうとする個がいない】

 むろん、そうした選手は簡単に現れるものではない。以前、欧州のトップクラブに所属していたある日本代表選手の代理人が、こんなことを話していた。

「そのレベルのチームに所属するまでは、日本人選手もできるようになったと思います。ただ、そこで主力を担えるかどうかや、毎試合のようにピッチ上で違いを生み出す選手になれるかどうかは、また別の話なんです。そこには説明しにくい、さまざまな要因があるのでしょう」

 まず考えられるのは、どれほど渇望しているか、だろう。このスポーツの歴史上、スーパースターになった選手の多くが貧困から生まれている。ディエゴ・マラドーナ、ロマーリオ、クリスティアーノ・ロナウドなど、枚挙にいとまがない。今大会の共催国カナダの主将アルフォンソ・デイビスのように、アフリカの難民キャンプで生まれた選手もいる。想像するしかないが、そのような出自の選手のハングリー精神は、ほかとは比べ物にならないはずだ。

 この安全で整った日本社会から、そこまでの渇望を抱いた選手が出てくるのを期待するのは難しそうだ。当たり前だが、日本サッカーの発展のために、極度の貧困が必要だとも思わない。

 では、世界のトップに近づくには、どうしていけばいいのだろうか。そのヒントを、アメリカのワールドカップ放映局FOXの解説者たち──元スペイン代表MFチアゴ・アルカンタラ、元デンマーク代表GKカスパー・シュマイケル、元イングランド代表FWピーター・クラウチ──が、試合後に語っている。

 なかでも、1994年ワールドカップを制した元ブラジル代表MFマジーニョを父に持ち、自身はチャンピオンズリーグを3度制した経験を持つチアゴは、次のように鋭い見識を述べた。

「日本はとても安定した規律あるチームだったが、彼らには欠けているものがある。それは自由に相手に挑んでいく気概だ。そこが足りない。彼らはチームとして実に規律ある動きをするが、1対1の勝負を挑もうとする個がいない。

 たとえば、私が選手の時は常に勝負に勝ちたいと思っていて、苦しみたい、耐えたいと思ったことはない。日本には歴史的に耐える文化があるからか、(ブラジル戦の)後半はひたすら耐えていた。そのなかに、自分がチームを勝たせるんだ! と立ち上がるような選手はいなかった」

【よりよい位置まで球を運んでからシュートを打つ】

 すると同席したシュマイケルが、「ヴィニシウス・ジュニオールのようなエゴを持つ選手が必要だということかな? 組織が統一された慎ましい日本のチームのなかに、そのようなスター選手や、オレがやってやる! と名乗りを挙げるような選手がいれば、決勝トーナメントも勝ち上がれるようになるかな?」とチアゴに訊いた。

「ポジティブな傲慢さ(を持つ選手)、と言ったらいいかな」とチアゴは続ける。

「たとえば、後半の序盤に日本の選手(上田綺世)がボールを持った時、彼は(ゴールまで距離のある位置にもかかわらず)とにかくシュートを打とうとして、即座に打った。

そうではなく、目の前の相手に勝負を挑み、よりよいポジションまでボールを運んでからシュートを打つ。ヴィニシウス・ジュニオールのような選手は、常にこうした勝負に挑み、失敗することもあるが、成功することもある」

 逆転ゴールを決めたガブリエウ・マルティネッリがまさにそうだった。66分に投入されると、鋭く動き回って味方にボールを要求し続け、絶対に自分が試合を決めてやる、という気概を全身から発していた。そして彼は、その強い願望を形にしたのだ。

 ただ傲慢さなら、「優勝します」と言ってはばからなかった日本代表の関係者全員が備えていたとも思う──8強にさえ残ったことのない国の代表チームがそう宣言するのは、ワールドカップというものを理解していない傲慢な言動と言って差し支えないはずだ。ポジティブな傲慢さは、ピッチ外の奇妙な空気作りではなく、ピッチ上で発揮すべきものなのだろう。

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