ワールドカップが終わって約2週間。スポルティーバのYouTubeチャンネルで配信中の「林陵平のフットボールゼミ」にて岩政大樹さんをゲストに招き、あらためて今大会感じたことを語り合う。
【今大会を象徴するトレンドとは?】
林陵平(以下、林)今大会を総括するにあたって、岩政さんはまずどんな特徴を感じましたか。
岩政大樹(以下、岩政)いくつかトピックがありますね。上位進出チームが4バックばかりだったこと、アフリカ勢の躍進のなかでアクションの多さが際立っていたこと。そしてクラブで実績を積んだ監督が代表チームの指揮を執るようになってきた流れのなかで、これまでよりも戦術的に作りこまれた印象がありました。
林 戦術的な部分ではかなり洗練されてきたなという印象がありますよね。アフリカ勢もそうですよね。
岩政 変わりましたね。ヨーロッパでプレーする選手が増えた影響で、普段から高度な戦術のなかでプレーしていることが大きいと思います。
林 カーボベルデやDRコンゴとかも戦術的に整えられているぶん、簡単に穴が開かなかったですよね。
岩政 そうそう。僕が現役の頃のアフリカ勢は、身体能力はスゴいんだけど、穴がポコッと開いて日本が勝つという場面がありました。でも今はそれがなくなりましたよね。
林 11人全員が戦術的に何をしなければいけないかを理解していて、約束事を守りながらプラスアルファで身体能力が発揮される。それは強いですよね。
そして、ひとつ目の議題である、4バックが上位を席巻したことについて言うと、僕は5バックの終焉というか、5枚だと全体が重くなってしまうなと感じています。今回のブラジル対日本もそうですし、(準決勝の)イングランド対アルゼンチンもそうでしたが、5枚では守れなくなってきていると感じました。
【ハイプレスの不在が3バックを機能不全にした】
岩政 今大会はハイプレスがほとんどなかったんですよね。ハイプレスがかかっている時って3バックでも4バックでもあまり関係がなくて、そこで奪えればプレーができる。でも構えたときに5枚から誰が出ていくかが難しくなるので、3バックが機能しにくかったんじゃないかと思います。
林 まさにそうだと思います。どのチームも基本的にミドルゾーンで構えていたし、そのままローまで押しこまれると苦しくなる。ミドルゾーンでどれだけ我慢できるかが上に進むためにはすごく重要だと感じました。
岩政 代表チームだからなのか、暑さの影響なのか、理由は一概には言えませんが、みんなミドルゾーンからでしたよね。
林 チャンピオンズリーグの試合とはまったく違う感じでしたね。チャンピオンズリーグは全部前から行きますし、今大会はそれがなかったです。
【日本代表の今後の課題】
林 日本代表が採用している3-4-2-1は、守備でハイプレスに行く時にウイングバックをどのタイミングで出すかとか、シャドーはどう対応するかの設定が重要になります。でもローブロックやミドルで構えると、結局5-2-3か5―4―1になるしかない。相手が強くなれば押しこまれる状況が絶対に続く。そうなると奪ったあとに前に蹴り出すしかなくなって、つなげなくなりますよね。自分たちがどうボールを保持するかという部分は、まだ足りないところかなと感じますね。
岩政 サッカーってやっぱり連続性が面白いなと思います。戦術練習では5枚で守って、そこから出ていく形を作ることはできる。だけど試合の90分のなかでそれをやろうとすると、連続性のなかで5枚になったところから出ていけなくなるシチュエーションが出てきます。特にどんどん相手が強くなるとその場面が出ていたように感じました。
林 それは実際に現地で見ていて感じました。
【「個人」と「個人戦術」の違い】
林 優勝したスペインは何が優れていたと思いますか?
岩政 スペインはつねに2人組、3人組の関係性がすばらしいなと思いました。日本(の選手やメディア)もブラジルに負けたあとに「個」が重要だと言っていましたが、その「個」って、どちらかというとフランスの「個」に近いのかなと。
林 「個人」と「個人戦術」の違いなのかなと思います。「個人」はフランス、そこに「個人戦術」が入ってくるのがスペインかなと。相手が強くなった時に「個人戦術」があると、よりチームとして強く戦えるんだと思います。
【日本サッカーの構造的課題】
岩政 育成年代を見ていても、日本は「個人」の1対1で戦おうとしている傾向があります。それもすばらしいことなんですが、子供の頃から連係を意識していないと、どこかで行き詰まるんじゃないかと思います。
林 個人の力ももちろん大事だし、でもサッカーはチームスポーツだし、難しいですよね。
岩政 ワールドカップを見ていて、「エムバペのスピードすごいな!」とかテクニックの話もいいのですが、連係にも注目してほしいなと思いました。
林 指導者側の理解という問題もありますか。
岩政 そう思います。外から見ていると「サッカーをやってきた人なら全員分かるでしょう」となりがちですが、3対2の状況でどうボールを動かすか、システムのなかでの判断まで理解している人は意外と少ない。クラブでも相手とどう駆け引きして、局面をどう優位に持っていくかという本質を理解したうえで伝えているチームは多くない気がします。
【日本サッカーの次の20年に向けて】
岩政 僕が子供だった90年代は日本サッカー協会発信で、日本全体にこれからの方向性と20年後のビジョンが明確に伝えられていた気がします。でも今は若干フワッとしている。いい言葉で言えば「多様性」なのでしょうが、「日本が目指すサッカーの指針」がもう少しあってもいいと思います。スペイン的な方向なのか、フランス的な方向なのか。それをベースにしつつ、個々の判断で「でも俺はこっちだ」となっても全然構わないし、全員が揃ってやる必要もない。でも国として「2050年大会で優勝」にどう向かっていくかを明確にしてくれたらいいなと思います。
林 そうですね。どこを目指すかはわかっているとしても、どう目指すかの部分でタスクをもっと振り分けていかないといけないと感じます。

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