3バック(5バック)から一転、4バックで戦い、2-1のスコアで辛勝したニュージーランド戦。森保一監督は試合後の会見で「当初から4バックは4戦目のこの試合には試そうと思っていました。

場合によっては3戦目(エクアドル戦)から......」と述べている。

 計画どおりだとすれば、なぜ純然たるサイドバック(SB)を招集しなかったのか。冨安健洋が故障のため招集を辞退。早い段階から、安藤智哉、熊坂光希など離脱者も相次いだ。追加で招集する機会もあった。

 SBは誰にでも務まるポジションだと考えているのか。SBというポジションへのリスペクトに欠けるのではないか。「サッカーはSBで決まる」「SBが活躍したほうが勝つ」とは、この世界に浸透している常識だ。「引いた相手にはサイドから崩せ」も同様に、イロハのイとして広く知られたスタンダードだ。

「引いた相手との対戦が予想されるアジアカップの予行演習になった」と森保監督は言うのだが、その一方で、本来ならサイド攻撃の主役となるSBをまともに選んでいない。本職に該当するのは、せいぜいこの試合の終盤、左SBの座に納まった伊藤洋輝ぐらいだ。

サッカー日本代表の「即席4バック」はなぜ機能しなかったか 森...の画像はこちら >>
 ニュージーランド戦でSBとして先発したのは鈴木淳之介(左)と中野就斗(右)だった。
鈴木はディフェンスならどこでもできる多機能型選手だが、左SBとして先発するのはA代表11戦目にしてこれが初。中野は所属のサンフレッチェ広島が3バックを定番とするチームなので、言ってみればCB兼ウイングバックだ。しかも初代表。2戦目のベネズエラ戦で初キャップを得たばかりの新人を、なぜ1軍級で固めたこの第4戦(決勝戦)にあえて先発させたのか。スタメンを眺めると、中野はひとり浮いて見えた。

 だが、日本の布陣が4バックであることを確認した瞬間、納得した。中野以外、右SBの候補がいなかったからだ。メンバー選考の矛盾をそこに見ることができる。

 森保監督はご承知のとおり、ここまで約2年半、3バック(5バック)を頑なに採用してきた。それが今回、急に方向を転換した。

【フィーリングに頼った出たとこ勝負】

 しかし、アジアカップに向けて4バックをやりたくなったのはいいが、それに適した駒はいなかった。3バックを続けた間、日本代表にSBは存在しないポジションとなっていた。結果的にSBのスペシャリストを森保監督は切り捨ててきた。

その歪みがこのニュージーランド戦では随所に現れていた。

 右サイドでコンビを組むSB(中野)とウイング(堂安律)は、コンビネーションに優れた間柄でなければならない。そこに3人目として右の守備的MF(佐野海舟)が加わるとコンビネーションはより多彩になる。

 アジア大会を戦ったU-21日本代表は、そうした4バック本来の魅力を備えていた。サイドに中盤があるかのような、論理的な崩しが実行できていた。狭い局面においてもパスコース(三角形)が見えていた。サッカーが面白く見えた理由である。

 ニュージーランド戦のA代表は非論理的だった。その場のノリ、個人的なフィーリングに頼った出たとこ勝負。最も訓練されるべき部分が疎かにされている、そのアバウトさがはっきりと見て取れた。

 3人目として佐野が加わることもなかった。佐野はボール奪取能力こそ高いものの、ショートパスに絡む能力は低い。

堂安に寄ることになったのは、この日、上田綺世の1トップ脇で構えることになった久保建英だ。堂安と久保という左利きのふたりが、右サイドでちょこまかと動き回りながら、よく絡んでいた。

 ニュージーランドの大型DFがそれに慣れるまでの間は、有効な攻撃の手段であった。しかし、何といっても非論理的だ。その感覚を共有できる人数は限られており、三角形は生まれにくい。1トップを張る上田まではパスが届かない。日本は半分混乱しながら攻めている感じだった。

 久保が右サイドで堂安と絡めば、トップ脇を欠くことになる上田は自ずと孤立する。それではマズいと、鎌田大地が左寄りからトップ下にポジションを移動すれば、今度は左サイドと距離が空く。左の鈴木と前田大然(左ウイング)に中盤との連係が途切れるようになる。

【いかに論理的に外から崩していくか】

 左サイドの鈴木と前田。そもそもこのふたりにコンビネーションプレーを期待することは難しい。

前田は強者相手のプレッシング要員としては文句なしだが、ショートパスで崩す遅攻には向いていない。下支え役の鈴木もプレーの選択肢は少ない。

 左の鈴木は2度、そして右の中野も1度、現代サッカーにおいてはあり得ない前時代的なクロスボールを送り込んでいる。世界のトップチームは絶対にやらないタイミングで、自らの責任を放棄するようなボヨヨンとしたクロスを、だ。「ワールドカップ優勝」を口にする森保監督だが、こうしたプレーを発生させる限り、ワールドカップの決勝トーナメントでは1勝さえもできないだろう。

「日本は我々の守備陣の裏を突く深い攻撃ができていなかった。少なくとも1-1で推移した後半26分までは、日本の攻撃は混乱していた」とは、ニュージーランドのダレン・ベイズリー監督が残したコメントだが、けっして強がりには聞こえなかった。

 日本のボール支配率は69%を記録したが、その割に、深い攻撃の象徴であり、ゴールの近道と呼ばれるマイナスの折り返しは少なかった。交代で入った中村敬斗が幾度かライン際から折り返し、堂安の決勝ゴールはその産物だった。だが個人任せ、勢い任せではなく、チームとして意図的にそこを突く姿勢がないと、強豪には立ち向かえない。

 目指すべきはサイドに中盤があるサッカーだ。いかに論理的に外から崩していくか。

出たとこ勝負の感覚的サッカーでは、相手が日本選手の巧緻性に目が慣れると、攻めあぐねるのは目に見えている。

 試合後の森保監督の口ぶりからは、残された最大9試合を4バックメインで戦っていくものと推測されるが、だとすればSBを何人か加える必要がある。一度切った人材を再登用するのか、新しく見つけ出すのか。

 今回のメンバーのまま4バックサッカーに移行すると危ない。筆者はそう見ている。

杉山茂樹●文 text by Shigeki Sugiyama

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