10月18日、レアル・ソシエダ(以下ラ・レアル)はマラガと敵地で対戦し、2-5と撃ち合いの末に勝利を収めた。

 ラ・レアルの勝利の立役者になったのは、先制点とアシストを決めた久保建英(25歳)だ。

今シーズンは現地メディアから不振が伝えられていたが、その論調を払しょくした格好だ。

「Reivindicativo」

 スペイン大手スポーツ紙『エル・ムンド・デポルティーボ』は、「自身の価値を証明する(活躍をした)」と端的に記している。

「(久保は)シーズンを最高の状態ではスタートできなかったが、この試合はクオリティを見せるのに3分とかからなかった。初めて敵ゴールに近づいたプレーで、ディフェンスと対峙すると一気に切り込み、左足でエリア外からゴール左上に叩き込んでいる。3点目、(ミケル・)オヤルサバルの得点もアシストした」

 まさに求められた仕事をした形で、2022年夏の入団以来続く、「久保がゴールをした試合では負けない」という不敗神話を更新した。久保の得点は昨年12月以来だが、やはりチームを活気づける。1点の価値、重みが違うのだ。

 では、なぜ久保は久しぶりのゴールを決められたのか?

久保建英、マラガ戦の1ゴール1アシストをもたらした3つの要因...の画像はこちら >>
 身も蓋もないが、ひとつは久保の実力だろう。

 9月、10月の代表シリーズで、久保は4連勝(エクアドル戦はPK戦での勝利)の立役者になったように、攻撃センスに疑いの余地はない。鎌田大地、上田綺世、中村敬斗、佐野海舟などセンスのある選手との連係は抜群で、こともなげに相手守備を崩していた。

 今シーズンのラ・リーガでの不振は、やはり北中米ワールドカップで負ったケガの影響などで出遅れていたのが大きかっただろう。さらに言えば、昨シーズン後半からケガもあって出場は断続的になっており、新体制下で周囲との連係も十分には取れていなかった。

 ここ数年のチームは、コンビを極めたダビド・シルバが引退を余儀なくされたのを皮切りに、アレクサンダー・セルロート、ロビン・ル・ノルマン(ともにアトレティコ・マドリード)、ミケル・メリーノ、マルティン・スビメンディ(ともにアーセナル)、ブライス・メンデス(コロンバス・クルー)など、主力が次々に新天地を求めた。結果、以前と比べて自然にパスが回ってくる機会が減っていた。

【右サイドバックとの呼吸のよさ】

 それでもマラガ戦で久保に先発の座が与えられたのは、ペッレグリーノ・マタラッツォ監督から実力を信頼されている証だった。

 その実力の正体。それは「連係力」だ。

 久保が左足で決めた先制点のシーンでは、相手ディフェンスと対峙したとき、背後を右サイドバックのエクトール・フォルトが猛烈に駆け上がっており、そのおかげで相手の逆を取ることができた。今シーズン、バルセロナから移籍してきたフォルトだが、久保と同じくバルサの下部組織ラ・マシア育ちだけに、呼吸のよさを感じさせている。

「連係力」こそ、ラ・レアル関係者が久保の能力のなかで一番高く評価するポイントと言える。

 たとえば前半終了間際、ラ・レアルはカウンターから決定機を作ったが、オヤルサバルがボールを持ち上がり、久保をフリーにする形で見事なパスを送っていた。これを受けた久保はファーサイドに駆け上がったオーリ・オスカールソンにクロスを送り(結果はミスキックでゴール方向に飛んだが)、各選手の結びつきが感じられた。

 そしてチーム3点目をアシストしたシーンでは、久保が敵陣でボールを持って仕掛ける姿勢を見せる。これで完全に相手ふたりを引きつけ横へ配球。

フリーで受けたオヤルサバルがゴールネットを揺らしたのだ。

 プレーの渦を作り出せる「連係力」は、今後に向けた明るい兆しと言えるだろう。

 久保が得点を決められた2番目の理由としては、彼のパーソナリティが関係している。

 久保は「スペイン人よりもスペイン人」と言われるほど自己主張が強く、ときにエゴも見せる。それに鼻白む人もいるだろう。しかし、彼が発する言葉は自信と不屈さが滲み出ており、その気概で自らの人生を切り拓いてきた。その気迫がなかったら、彼はスペイン、ラ・リーガの修羅場を生き残れなかったはずで、生き残ってきた選手だけの芯の太さがあるのだ。

 日本人が18歳からラ・リーガで活躍してきた実績は伊達ではない。人生の流れを分けるような試合はいくつもあったが、彼は幾度もそれをモノにしてきた。それは稀有な逞しさだ。

 3つ目の要因として、久保が決めたゴールには運も味方した。

 相手ディフェンスが出した足をかすめたことによってドライブがかかり、"無敵の軌道"になっていた。

これが決まるのと決まらないのでは雲泥の差だった。そもそも、コンディションを見極めて先発に戻したマタラッツォではなく、かつて所属したクラブで監督だったハビエル・アギーレやウナイ・エメリのような神経質な指揮官だったら、先発の座は与えられなかったはずだ。

 一方、久保は自らツキを勝ち取ったと言える。ヨーロッパリーグも戦うクラブは連戦でターンオーバーをせざるを得ない。そんななかで虎視眈々と出場機会を狙い、昇格組のマラガ戦での先発で乾坤一擲の一撃を決めた。代表活動を使って試合でコンディションを上げるような"図太さ"もあった。何より迷いなく左足を振ったことで、ゴールは生まれたのだ。

 マラガ戦の久保は、スペイン大手スポーツ紙『アス』では他の得点者たちと同じく星3つ(0~3の4段階評価)だった。

「すばらしい形でサムライが帰還した!」

『アス』の寸評は、スペイン人らしく賑やかだ。

 ただし、言うまでもないが、これは久保にとってリスタートの一歩に過ぎない。この1ゴール1アシストで周りが勝手に騒ぎ出し、本人も雑音に巻き込まれるような形で「次の移籍先は?」などという話になるようなら、再び沼へ引きずり込まれるだろう。ラ・リーガは甘くはない。

移籍は結果によって勝ち取るべきもので、1試合、1試合を戦い抜くことが生命線となる。

小宮良之●文 text by Yoshiyuki Komiya

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