この記事をまとめると
■1台のクルマには数万ものパーツが使われている■大変な作業工程を経てクルマが完成する
■この記事ではクルマ1台を完成させるのにかかる時間について解説
大変な作業工程の積み重ねによって1台のクルマが完成
1台のクルマが完成するまでに、いったいどれくらいの時間がかかるのでしょうか? 小学生の頃に、自動車メーカーの工場見学に行ったよ、という人ならだいたいの様子はわかると思いますが、クルマ1台を作るのは大変な作業工程の積み重ねです。昔より設備が整い、効率アップされて生産能力が上がっているのは確かですが、1台のクルマには数万ものパーツが使われているというから、そうとうな時間がかかりそうですね。
ざっくりと工程を説明すると、まずは「鋼板」という鉄の板を切断し、圧力をかけて車体やドアなどクルマを構成するパーツを作る「プレス」からスタート。

その次に行うのは、「塗装」です。サビ防止や艶出しなどのことも考えられ、何回も塗るのでここも時間がかかりそう。大衆的なクルマは4回程度ですが、高級車になると6~7回以上も塗り重ねるメーカーもあります。そしてこれらの工程と並行して、エンジン製造や足まわり製造などが進行しており、塗装を終えたボディに組み付ける「車体組立」工程へと移ります。エンジンのほかにも窓ガラスやシート、タイヤなど、クルマとして動かせる状態に仕上げていく工程。この後、「完成検査」を経て完成となります。
トヨタはおよそ17~18時間で1台が完成
では、その所要時間はどうなっているかというと、工場や生産台数によってこ多少前後しますが、トヨタではだいたい17~18時間で1台が完成。もちろん、細かなパーツの制作時間は含まれていないので、単純にプレスから完成検査までの所要時間です。どうでしょうか、意外と早い印象もありますね。三菱自動車も同じく約17~18時間とのこと。

日産では、約24時間となっています。日産は本社からほど近い場所にマーチなどコンパクトカーの組み立て工程を行う追浜工場と、エンジン組み立てを行う横浜工場があり、なんと横浜工場は創業時の本社社屋を今も使っていて趣のある雰囲気。その横浜工場での見所のひとつが、GT-Rに搭載されるVR型エンジンの組み立て工程です。他機種とは違い、専用のクリーンルームの中で「匠」と呼ばれる選ばれた作業員だけが携わることができる工程です。気温は23度に保たれ、チリやホコリの侵入を避けるために、加圧式ではなく電動式の工具を使用。しかも、1人が1機の全行程を担当するから責任重大で、見ているこちらにまで緊張感が伝わってくるほどでした。クルマ好きなら一度はナマで見て欲しい工程です。

さて、量産メーカーの制作時間はだいたいつかめましたが、気になるのは超高級車の場合はどうなのかというところ。じつは世界でももっとも贅沢なクルマとの呼び声高い、英国のロールス・ロイスでは、1台を作るのになんと約800時間、1カ月以上もの時間を費やすのだそう。顧客ひとりひとりの要望を聞き入れ、ほぼオーダーメイドの1台を製造していくのがロールス・ロイスですから、やはりとてつもない時間がかかるのですね。だからこそ、日本を代表する建築家・隈研吾氏とコラボしたドーンをお披露目したり、ほかにはないビックリな世界観が貫けるのだと思います。

ということで、時間の長さはもちろん、数万点のパーツと多くの人たちの労力によって作られているクルマたち。そんなことをあらためて感じながらドライブすると、またひと味ちがった喜びが湧いてくるかもしれないですね。