この記事をまとめると
■近年モーターショーが衰退していると言われている■一方でCESが盛り上がっている
■もともと家電ショーと言われていたが自動車関連企業も積極的に出展している
時代の流れと逆行したデトロイトショーの雰囲気が衰退を助長
かつては、東京(東京モーターショー)、フランクフルト(IAA)とともに世界三大自動車ショーともいわれていたのがデトロイトショー(北米国際自動車ショー)。この世界三大自動車ショーはともに情報発信力が低下し、東京モーターショーは2023年開催よりジャパンモビリティショーとなり、フランクフルトショー(IAA)は2021年開催から会場をミュンヘンに移している。デトロイトショーも“新しいショーのあり方”を表明しながら、2022年開催、そして2023年開催がいままでの1月開催から9月開催となり、2022年開催では出展した完成車メーカーはほぼアメリカンブランドだけとなっている。
デトロイトショーが開催時期を変えるなどの動きを見せたのは、1月上旬にネバダ州ラスベガスで開催されるCES(コンシューマ・エレクトロニクス・ショー)の存在が大きかったことは間違いない。家電ショーともいわれてきたCESだが、ここ最近は最新のエレクトロニクス関連商品の見本市となっており、BEV(バッテリー電気自動車)や、インフォテインメントシステムなどの普及により完成車メーカーを含めた自動車関連企業も積極的に出展している。
デトロイトショーもBEVやインフォテインメント部門の出展強化を進めたが、世界的な観光都市であり、ロサンゼルスなどカリフォルニア州にも近いラスベガス開催のCESと、アメリカ車の衰退とともに街の衰退も激しいデトロイト(デトロイト市は財政破綻している)開催のデトロイトショーでは、情報発信力の低下だけでなく、集客力の弱さも目立つため、世界の自動車メーカーが離れていくのを止めることもできずにいまに至っている。あくまで筆者の私見だが、過去にデトロイトショーにテスラもブースを構えていたことはあるのだが、どこか“よそ者”のような扱いを受けているように見え、プレスカンファレンスでのメディアの質問も厳しいものが飛び交っていた。ICE(内燃エンジン)搭載車ありきともいえる過去の姿勢も今日のデトロイトショーのステイタス低下を招いたのではないかとも考えている。

メルセデス ベンツの動きがターニングポイントに
ある業界関係者はいまのような、衰退激しいデトロイトショーとなったターニングポイントは2019年1月にあったと語っている。「メルセデスベンツは2019年のCESにおいて、メルセデス ベンツCLAクラス(現行2代目)をワールドプレミアしました。MBUX(メルセデス ベンツ・ユーザー・エクスペリエンス/インフォテインメントシステム)を搭載しているとはいえ、CLA自体にBEVはラインアップされずICE(内燃エンジン)搭載車のみです。堂々とICE搭載車をCESで発表したメルセデスベンツの動きに業界内はかなりザワつきました。この動きこそデトロイトショーの弱体化を象徴させる出来事と考えています」と語ってくれた。

※写真はCES2018のメルセデス ベンツブース
事実メルセデス ベンツは2019年開催よりデトロイトショーへの出展を取りやめており、2019年開催で出展したドイツ系ブランドはVW(フォルクスワーゲン)のみであった(2020年、2021年は新型コロナウイルス感染拡大によりデトロイトショーは開催されていない。2022年もドイツ系はすべて出展していない)。

※写真は2018年のデトロイトショーのフォルクスワーゲンブース
2023年のCESも自動車関連の話題が多数注目されたようだが、自動車メインのショーではなくとも、アメリカではクルマも注目を浴びるショーが残っていること自体は日本から見ると羨ましく見えてしまう。もちろんそこではBEVがお約束なのは当たり前である。