この記事をまとめると
■中国のEVメーカーであるBYDがSUVのATTO3を440万円で発売した■もともとBYDはバッテリーメーカーとして創業しており、部品内製率が高い
■価格やクオリティを考慮すると、日本でもEV販売の有力メーカーに成長していく可能性もある
中国製EVが本格的に日本上陸
中国の電気自動車(EV)会社のBYDが、今年からATTO3というSUV(スポーツ多目的車)の発売を開始した。1グレードの設定で、販売価格は消費税込みの440万円だ。
昨年発売された韓国のヒョンデIONIQ5が479万円からなので、それより手軽に買える価格設定である。
BYDは、創業者の「Build Your Dream(夢を築け)」との想いを社名として名づけたもので、中国名では「比亜迪」と書く。
創業は1995年で、たとえば米国のテスラモーターズの2003年設立より古い。ただし、当初はバッテリーメーカーとして事業をはじめている。

中国は、1990年代初頭からEVへの関心を高めており、電気自動車シンポジウム(EVS)にも積極的に参加。産学ともに知識を深めていった。そうした流れのなかにBYDもあったといえるだろう。
日本メーカーにとっては大きな脅威となる
そして2003年に中国国営の自動車メーカーを買収し、自動車産業への参入を開始した。この年は、テスラの設立と重なる。2年後の2005年には早くも日本法人を設立し、15年に太陽光発電事業に乗り出している。
また、EVバスを2019年に日本に導入するなど、乗用車の前に公共交通への参入を行うことで地盤固めをし、日本市場の様子をつぶさに研究してきたといえるのではないか。そして、いよいよ乗用車販売に踏み切ったのである。

昨年、日本でのEV発売を発表し、神奈川県横浜市の赤レンガ倉庫で消費者への試乗も行った。その車両はまだオーストラリア仕様ではあったが、ウインカーレバーをハンドルの右側に設定するなど、日本車からの乗り換えを容易にする配慮があった。ここはヒョンデも同様だ。ちなみにほかの輸入車はほとんどが左ハンドルの設定のまま、つまり左側にウィンカーレバーがある。

EV販売の面では、ディーラーネットワークを国内に設けるやりかたとし、販売店での対応によって身近な感覚で購入、保守・管理できる気配りもある。
技術では、リン酸鉄といって資源確保の制約が少なく、衝撃に対する安全性にも優れるリチウムイオンバッテリーを採用し、またBYD独自の手法として、ひとつの電極が細長いブレードバッテリーを開発、実用化することで、セル数を確保して一充電走行距離を満たすといった他車との差別化も行っている。バッテリー以外の半導体なども自社で調達できるため、生産の安定性も備えている。

この先、ATTO3に次いで小型ハッチバック車のドルフィン、上級4ドアセダンのシールといった追加車種の販売も予定されている。それらもATTO3で示された手ごろな価格が設定されれば、国内EV販売の有力メーカーに成長していく可能性もある。