この記事をまとめると
■先進的なデザインのクルマが登場すると話題になるが、販売が維持できるかは別の話■今回は新車として理想的な売り上げ方をした初代プリメーラを振り返る
■オーソドックスなセダンスタイルを採用して成功を収めた
デビュー時に脚光を浴びたクルマが人気を維持するのは簡単ではない
新型プリウスの話題が依然として盛り上がっている。エモーショナルなスタイリングと、いままでの「燃費性能第一」から、2リッターモデルでは加速性能など走りも秀逸になっていることが大きいようだ。
さぞ販売現場は沸き立っているかと思いきや、確かに反応は大きいものの、期待していたよりはお客の反応はいまひとつという話も聞く。
いまはまだ、ほとんど一般客への納車は進んでいないが、たとえ長期の納車待ちとなっていようが、発売前から予約発注をしていた人から順番に納車が進んでいく。そうなると、国内販売で圧倒的なシェアを持つトヨタのなかでも人気車なので、納期の大幅遅延が起こっているとはいえ、たちまち街なかで頻繁に見かけるようになる。

すでに、新車の納期遅延が深刻なものとなってから1年以上が経っており、契約時に注目されていても、1年以上待ってようやく納車になるころには当たり前のように走っていて物珍しさもなくなっていることを察して購入を踏みとどまる人も少なくないようだ。
新型プリウスに先行して、2022年7月にデビューした新型クラウン・クロスオーバーも、いまでは納期がよりかかる2.4リッターでも本稿執筆時点では年内になんとか納車が間に合いそうで、東京あたりでは街なかでもチラホラ見かけるようになった。ただテレビコマーシャルのような派手な2トーンカラーではなく、現実的にはパールホワイトもしくは黒系色ばかりが走っていることもあり、すでに街の風景に溶け込んでおり、「あれっ、クラウンかな」と思うぐらいにある意味目が慣れてきてしまった。

新型プリウスもクラウン・クロスオーバーと同じ道をたどる可能性が高い。エモーショナルなモデルはデビュー時脚光を浴びるが、その後人気を持続できるかで真の実力がわかるといってもいいだろう。
奇をてらわずに成功した初代プリメーラの例も
「新車としての理想的な売れ方」として伝説的に語られているのが初代日産プリメーラといえよう。初代プリメーラは1990年にデビューしている。当時の日本車はいまに比べれば元気いっぱい。消費者をあっといわせるような見た目や仕掛けを積極的に採用するなど意欲的なモデルが多いなか、保守本流の当時の欧州車を意識したオーソドックスなセダンスタイルを採用。

しかし、その実直なクルマ作りがじわじわと注目されるようになり、販売台数をグラフにすると右肩あがりに売れるようになり、目立って売れたわけでもないが、安定した販売台数を長期間維持することとなった。一般的な新車では、デビュー直後から右肩下がりに販売台数が落ち込み、マイナーチェンジなどで販売台数を浮上させながら次期モデルへとバトンタッチしていくことになるが、初代プリメーラの販売動向は確かに異なっていた。
プリメーラに似た例としてデビュー直後は大注目されなかったものの大化けしたモデルとしては、初代スズキ・ワゴンRや、初代ホンダ・オデッセイなどを挙げることができるだろう。

プリメーラの場合は単に飽きの来ない見た目だけではなく、基本性能を磨きこんでいたことが根強い人気を維持したものとされている。あえて「奇をてらわない」ことが功を奏したようだ。

クラウン・クロスオーバーは確かに先代に比べれば現段階では販売台数も多くなっており、従来モデルに比べれば新規ユーザーを取り込んでいるようにも見える。しかし、街なかで走っているクラウンのドライバーをみると、いままでのクラウンユーザーのような年配ユーザーが運転しているケースが目立っているなあと感じるのも確か(セールスマンとの長い付き合いもあり、クラウンからクラウンへのような乗り換えも相変わらず多いのかなあとも感じている)。

昭和でも平成でも、そして令和でもヒット車を世に送り出すことは難しい。平成初期にあるメーカーの開発者は「世に送り出したモデルの2割が当たればいいほう」などと言っていたのを覚えている。より社会が多様化している令和の時代では真のヒットモデルを世に送り出すのは至難の業のように見える。新型クラウン・クロスオーバーや新型プリウスが令和のヒットモデルとして名を残すことになるのか今後も見守っていきたい。