この記事をまとめると
■クルマに乗っているとさまざまな音が聞こえてくる



■車内の静粛性を妨げる要素について解説



■音や振動がキャビンに伝わる経路はふたつ



「N、V、H」はキャビン内での快適性を損なう要素

自動車を走らせると、クルマが発するいろいろな音をキャビン内で聞くことになるが、いずれも耳障りな音で、ノイズと分類できる音ばかりだ。車内に伝わる騒音を下げることはできないだろうか、と考えたことはないだろうか? 静粛性のあるキャビンは快適なものだ。高級車がなぜ高級と言われるのか、静粛でフラットな乗り心地の高級車に乗ってみると、高級の意味がそこはかとなく伝わってくる。



では、静粛性を妨げている要素は何なのか、何が騒音源となっているのかを探り出してみたい。これらを突き止め、対策できれば、静粛性が得られて愛車の快適度が上がるかもしれない。自動車が発生するノイズの発生源を考えてみたい。



庶民のクルマと高級車ではなぜ車内の「うるささ」が違う? そも...の画像はこちら >>



キャビン内で感じる騒音にはどんなものがあるのかを考えてみると、音以外に振動も不快な要素であることに気付かされる。キャビン内での快適性を損なう3要素として「N、V、H」の表現がしばしば使われる。Nはノイズ、Vはバイブレーション、Hはハーシュネスの頭文字をとったもので、騒音、振動、突き上げ、と解釈してよいだろうか。



これらの発生原因となるのは、自動車が走ることで各部から発生する音、振動が主体となっている。そして、キャビンに伝わる経路はふたつあり、空気伝播経路と個体伝播経路に分けることができる。



空気伝播経路とは、空気中を伝わるノイズのことで、エンジン音、排気音、風切り音、タイヤトレッド面が発生するパターンノイズ、タイヤが空気を封入したゴム製の容器であることから、その入れ物(筐体)が発する反響音(放射音)などがある。



騒音のレベルを下げる方法には吸音と遮音がある

個体伝播経路は、音ではなく振動と解釈してよく、エンジン振動、駆動系振動、タイヤ振動、サスペンション系の振動などが、ボディ(シャシー)をとおして伝わることから固体伝播と呼ばれている。



キャビン内に伝わるこれら騒音/振動のレベルを下げるには、発生した騒音を吸収する吸音の方法と、キャビン内への騒音の伝わりを遮断する遮音の方法がある。吸音材は、騒音の発生源となる箇所に貼り付けることで、たとえばボンネット裏に吸音材を貼ることによって、エンジンルームで発生するエンジン音や駆動系の騒音を吸収し、外部に伝わる騒音レベルを下げる方法だ。



遮音材も同様の効果を狙ったもので、キャビン内に騒音が入り込んでくる箇所に、騒音を遮断する遮音材を貼り付ける方法で、ドアパネル裏、ルーフライニング間、フロア面、バルクヘッド面などが挙げられる。



庶民のクルマと高級車ではなぜ車内の「うるささ」が違う? そもそもの音の発生原因と静粛性が異なる理由
ドアパネル



吸音材や遮音材に頼らぬ騒音対策としては、騒音の発生レベルそのものを抑える方法があり、低騒音タイヤなどはこうした例のひとつだ。パターンノイズや反響音を抑えるため、音の発生そのものを抑えたトレッドパターンのデザイン、タイヤ内部に発生した反響音を吸収する吸音材を配したりする設計のタイヤが製品化されている。



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吸音材が採用されたタイヤ



やっかいなのは、こもり音と言われる室内騒音の対策だ。ひと口で騒音と表現しているが、音以外にも振動の要因があり、これまで挙げてきた騒音、振動の要因が複合して発生する場合が多く、車体を構成するパネル剛性にまで原因は波及するため、決定的な解決策の究明はむずかしい状況にある。



新車コンディションのときはいいが、距離を走り込んだとき、あるいは古くなったとき、どの程度騒音、振動が大きくなるのか、それが気になるところである。

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