この記事をまとめると
■軽自動車にはターボモデルとNAモデルが設定されることが多い■スーパーハイトワゴンの車重はコンパクトカー並みにあるのでNAエンジンは正直力不足だ
■ターボモデルのほうが結果的に装備が充実していてお得なケースもあるので試乗は必須
軽自動車はNAとターボどちらを選ぶべきか
次期型ダイハツ・ムーヴは、2023年5月中旬から、販売店では価格を明らかにして予約受注を行っている。グレードは4種類あるが、ターボエンジンを搭載するのは最上級のRSだけだ。現行型は標準ボディにもXターボSAIIIを用意するが、次期型では廃止されてしまうということになる。
※写真は現行モデルのムーヴカスタム
軽自動車では、標準ボディのターボを廃止することが多い。三菱eKスペースも、マイナーチェンジでターボのTを廃止した。標準ボディのターボを廃止する理由を開発者に尋ねると「軽自動車にターボは不要と考えるお客様も多く、売れないから廃止する」と口をそろえる。
たしかに小型/普通乗用車のガソリンターボは、性能を高めるための付加価値ともいえるが、軽自動車は違う。とくに今は、全高が1700mmを上まわるスーパーハイトワゴンの人気が高く、新車として売られる軽乗用車の半数以上を占める。そこには車両重量が900kgを超える車種も多く、コンパクトカーと同程度だ。
それなのに軽自動車のエンジンは排気量が660ccだから、1.3リッターのコンパクトカーに比べるとその数値は約半分に過ぎない。ボディの重さがコンパクトカーと同程度で、エンジン排気量が半分では、登り坂などでパワー不足に陥るのは当然だ。

これを解決する機能がターボになる。ターボの装着は、実用回転域の駆動力を高め、エンジンの排気量を増やしたような効果が得られるからだ。
多少高くてもターボのほうがお得となる場合も
国内の最多販売車種とされるN-BOXの場合、ノーマル(自然吸気)エンジンの最高出力は58馬力(7300回転)、最大トルクは6.6kg-m(4800回転)だが、ターボは64馬力(6000回転)・10.6kg-m(2600回転)に増強される。実用的な性能を左右する最大トルクは、ノーマル(自然吸気)エンジンの1.6倍だ。

その一方でN-BOXの場合、WLTCモード燃費はノーマルエンジンが21.2km/Lで、ターボは20.2km/Lだ。ターボは動力性能を1.6倍に高めながら、燃費数値は5%しか悪化しない。
軽自動車は前述のとおり、スーパーハイトワゴンを中心に、エンジン排気量の割にボディが極端に重い。その結果、エンジンの負荷が増えて、ギヤ比もローギヤード化されて回転数を高める。これらが燃費に悪影響を与えた。
この欠点がターボの装着で軽減されるから、動力性能を大幅に高めながら、燃料消費量はあまり増えないわけだ。軽自動車のターボは、高性能かつ低燃費で効率の優れた実用メカニズムになる。

価格はどうか。N-BOXの標準ボディで比べると、ノーマルエンジンのL・2WDは159万9400円で、Lターボ・2WDは179万8500円だ。Lターボは19万9100円高いが、ノーマルエンジンのLがオプション設定にするサイド&カーテンエアバッグと、右側スライドドアの電動機能が標準装着される。さらにパドルシフトや本革巻きのステアリングホイールなども追加される。

従って軽自動車を買う時は、販売店の試乗車で、頻繁に使う登り坂などを走っておきたい。このときにパワー不足を感じたら、買い得なターボエンジン搭載車も検討するのが最適解。エンジン排気量が極端に小さな軽自動車では、ターボの推奨度が高いから、積極的に購入したい。
メーカーは、装備を抱き合わせで装着しない買い得度のわかりやすいターボを用意して、ユーザーが積極的に選べるようにすべきだ。せっかく標準ボディのターボ仕様を開発しながら、これを廃止するのは、非常にもったいない。