この記事をまとめると
■運転免許保有者数は約8216万人



■そのうちMT免許の人が32.4%、AT限定免許の人が67.6%



■MT車とAT車それぞれのメリット・デメリットを解説



MT車とAT車のメリット・デメリットを解説

内閣府の発表によれば、令和元年末現在の運転免許保有者数は約8216万人。そのうちMT免許の人が32.4%、AT限定免許の人が67.6%という割合となっています。日本で販売される新車のうち、MT車は約2%しかないことを考えると、意外にMT免許の人が多いと感じますが、いかがでしょうか。



これから運転免許を取得しようとする人の中にも、MTとATどちらを取ればいいのかなと悩んでいる人がいるかもしれません。そこで今回は、5つの項目ごとにMT車とAT車のメリットとデメリットを比較してみます。



まず最初は、運転しやすさ(操作の簡単さ)について。MT車とAT車の操作で大きく異なるのは、ペダルとシフトです。ペダルは、AT車にはアクセルとブレーキの2つしかありませんが、MT車にはアクセル、ブレーキに加えてクラッチという3つ目のペダルが存在します。そのため、AT車は右足だけで2つのペダルを踏み替えて操作できるのに対して、MT車は右足でアクセルとブレーキ、左足でクラッチと、つねに両足で操作する必要があります。



さらに、AT車最大の特徴がギヤチェンジをクルマが自動で行なってくれるところにありますので、シフト操作をするのは最初にパーキングからドライブに入れる時と、停止する際にドライブからパーキングに戻す時の2回。でもMT車は運転している間はつねに左手でシフトレバーを操作し、ギヤチェンジをする必要があります。AT車はクルマが自動で回転数を調整してくれますが、MT車はドライバーがエンジン音やスピードメーターにつねに注意を払いながら、良きタイミングで両手両足を使ってクルマを動かす必要があるので、初めての人がそう簡単にできるものではありません。発進時にそのタイミングを誤ったり、操作を雑に行なったりするとエンスト(エンジンストール)してしまいますが、AT車はエンストしないこともポイント。さらに、ブレーキペダルから少し力を抜くだけで、ゆっくりとクルマが動くクリープ現象があり、車庫入れやノロノロ渋滞に際にもそれだけで走行することが可能ですが、MT車はどんな時でも両足を操作しなければなりません。なので単純に操作の簡単さという点では、AT車に軍配が上がるといえるでしょう。



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2つ目は、楽しさや充実感で比べてみます。ATでもMTでも、A地点からB地点までをクルマで移動するという点は変わりませんので、景色を楽しんだり、目的地を目指して得られる満足感は同等だと思います。ドライブ中に同乗者との会話や音楽を楽しめるという点でも同じですが、その難易度は少しMT車のほうが高いかもしれません。MT車は交通の流れをつねに先読みし、状況に応じてペダル操作やギヤチェンジを頻繁に行う必要があるので、会話や音楽に耳を傾けながらも意識の大半は周囲の情報収集や手足の操作に向けることが求められます。そのため、MT車のほうが全身を使って運転し、思いどおりにクルマを操っているという感覚が大きいことから、充実感も高まるのではないでしょうか。



ただし、ひどい渋滞にはまってしまった時など、AT車よりもMT車のほうが疲労を感じやすいというデメリットもありますので、状況によっては「楽しかった」よりも「大変だった」と心に刻まれる可能性も大。そのためこの項目ではAT車とMT車は互角かもしれません。



自分に合ったほうを選ぶことが幸せなカーライフにつながる

3つ目は、コストで比較してみます。免許を取るための教習所の基本料金を見てみると、教習料金と入校金の合計でAT限定免許が約35万円なのに対して、MT免許は約39万円。これはMTのほうが技能教習時間が多いことなどが理由で、約4万円ほど高くなっています。車両価格では、ATとMTの両方を販売しているモデルで比較すると、スズキ・ジムニーが上位グレードでATが190万3000円、MTが180万4000円。ATのほうが9万9000円高くなっています。

マツダCX-5では、XD Lパッケージ(2WD)のATが360万8000円、MTが360万8000円と同価格。トヨタのGR86では、RZのATが351万2000円、MTが334万9000円とATのほうが16万3000円高いですね。他モデルでも、おおむねAT車のほうが高額となっています。



では、購入後の維持費で気になる燃費はどうでしょうか。前述のモデルで比べてみると、全てWLTCモードでジムニーはATが14.3km/L、MTが16.6km/L。CX-5はATが17.4km/L、MTが19.5km/L、GR86はATが11.7km/L、MTが11.9km/Lという数値です。程度こそ違えども、全車でMTのほうが低燃費だということがわかります。運転の仕方や走る場所、積む荷物の重さなどによって燃費は上下しますので、この差がガソリン代に直結するとは言えませんが、一般的にはトランスミッションの重量がATのほうが重いことが多く、車両重量も10kg程度の差が出ますので、MT車のほうが燃費が良くなりやすいということは言えるでしょう。



また、万が一故障した際の修理費用に関しても、一般的にMT車よりもAT車のほうが構造が複雑になり、費用が嵩むことが多くなっています。これらを考慮すると、やはり車両価格の差が大きいことからも、コスト面ではMT車に軍配が上がると思います。



4つ目は安全性です。これは明確にどちらのほうが安全だと決めつけることはできませんが、交通事故の原因を調査した結果などから傾向を読み取っていくことはできます。

MT車よりもAT車に多い事故原因は、圧倒的にペダルの踏み間違いです。操作が単純で簡単なことから、他のことを考えてぼーっとしていたり、片手が空いている時間が長いので、ついスマホなどを使ってしまって注意力が散漫になったり、運転以外のことに意識が持っていかれてしまうことで、事故寸前でヒヤリとすることも多いようです。



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AT車のシフトノブ



MT車で起こりやすいのは、ギヤチェンジのミスやエンストを起こしたことによる急停止やスピンなどで、衝突事故や追突事故を誘発したり、歩行者を巻き込んでしまったりすることでしょう。また、急な坂道での再発進でずり下がってしまったり、踏切の真ん中でエンストしてしまったりというリスクも考えられます。



このことから、AT車では運転がラクだからと気を抜かず、つねに細心の注意を払って運転することが求められ、MT車では操作ミスをしないよう運転技術を磨いて、つねに正確な操作ができるようにすることが求められます。



5つ目は、免許証を持っているとどのくらい役に立つか。どちらも身分証明書として使えるのは同等です。数十年前ならMT免許のほうが就職活動の時に有利だ、などと言われたものですが、現在は特殊なクルマに乗ることが確定しているような企業でない限りは、AT限定免許でまったく問題はないでしょう。ただ、頻繁に海外に行ってレンタカーを運転する予定がある人や、スポーツカーに乗りたい人、クラシックカーに乗りたい人、モータースポーツを始めたい人であれば、MT免許のほうが役に立つことが多いと思います。少し前までMT車が圧倒的に多かった欧州でも、AT車比率が増えているとはいえ、やはりMT車しかレンタカーが選べない場合もあるかもしれません。ポルシェなどの憧れのスポーツカーでもAT車が多くなっていますが、クルマと一体となって操る楽しさを存分に味わいたいのならば、MT車を試してみるべきだと思います。これらを鑑みると、MT免許のほうがいろいろな可能性は広がると言えそうです。



このように、ATとMTにはそれぞれにメリットとデメリットがありました。単純にどちらが良い、悪いではなく、自分に合ったほうを選ぶことが幸せなカーライフにつながるのだと思います。

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