この記事をまとめると
■国産ミドル級SUVを中谷明彦さんが比較試乗■RAV4 PHEV、アウトランダーPHEV、CX-5 XD、レガシィ・アウトバックの4台を用意
■パワートレインや駆動方式などが異なるがそれぞれに良さがあった
国内市場で注目されている個性の異なる4台を試乗!
国内外を問わず、いま自動車市場を牽引しているのは、SUV(スポーツユーティリティビークル)車だ。ひと口にSUVといっても、 オフロードを得意とするクロスカントリー系モデルからクーペスタイルのクロスオーバー系までジャンルはさまざまで、最近は環境に配慮したPHEV、HV車も相次いで登場している。さらにBEV(電気自動車)モデルの登場も輸入車を中心に相次いでいる状況だ。
そこで今回は、国内市場でもっとも注目されている4台を集め、それぞれの個性や使い勝手、走りなどを比べてみる。
SUVは、もともと「スペースユーティリティービークル」を略した車両と解釈され、3列シートのミニバンなどが主流だったが、ミニバンの枠に収まらないモデルの登場が相次ぎ、いまでは「スポーツユーティリティビークル」と定義され、 むしろミニバン系とは分割されてきている。
今回用意されたのは環境追求型モデルとして大容量のバッテリーとプラグインハイブリッドシステムを搭載した「トヨタRAV4 PHEV(以下RAV4と表記)」に「 三菱アウトランダーPHEV(以下アウトランダー)」 の2台。

さらに、使用燃料に低価格(といっても現在価格上昇傾向にあるが)の軽油を使えることで絶大な人気を維持するディーゼルエンジン搭載の「マツダCX-5XD(以下CX-5)」と、純ICE(内燃機関エンジン)搭載の
「スバル・レガシィ・アウトバック(以下アウトバック)」 の合計4モデルだ。

4車は、車体サイズや乗車定員などに差があり、マーケットで直接競合するモデル同士とは言えないが、いずれの車種も代表するグレードのモデルが揃えられた。
また、全輪駆動AWDで統一している。車高の高いSUV車はとくに発進加速時においてピッチング変化により前輪荷重が減少し、駆動力を失いやすい。大きく取られる最低地上高を活かした悪路走破性を最大限発揮するためにもAWDは必須だといえる。
前輪2輪駆動のFFレイアウトとして低コスト化した廉価グレードのSUVが市場の大半を占めているが、じつはAWDモデルを選択することで初めてSUVを「スポーツユーティリティビークル」と認知できるといっても過言ではない。
テストステージは一般道。高速や市街地、ワインディングなど、ふだん走る道での日常的な使い勝手や走り、乗り味に特化してリポートする。
SUVのRAV4でも貫かれた“80点主義”
RAV4は巨人トヨタがSUV市場を席巻するべく投入した力作だ。

PHVは18.1kWhの大容量リチウムイオンバッテリーを搭載し、電気自動車として約95kmも走行可能な高い環境性能を誇る。
搭載するエンジンは燃焼効率41%を誇る高効率の2.5リッター直4ダイナミックフォースエンジンで、ハイブリッドモードで走行しても22.2km/Lという高燃費が得られる。

その走りは、モーター発進による高トルクピックアップで小気味よく、1900kgという車両重量をまったく意に介さない軽快さを身上としている。
ホイールベースは2690mmと4車のなかでは最小値だが、後席の足もとスペースにも余裕が感じられ、 新世代TNGAプラットフォームの有用性が際立っている。

最低地上高は195mmで、これも4車中最小値だが、普段使いでの乗降性の良さなどを優先しているのだ。
燃料タンクは容量55リットルと小型だが、燃費の良さと電動での航続距離の長さから、最長航続距離はモード燃費で1300km以上にも及ぶ。
ハンドリング面でも際立った特性を見せる。コーナリングでのライントレース性が高く、安定性にも優れていて安心感が高い。スポーツモードを選択するとペダル応答性が高まり、スポーツ性が大きく高まるのも魅力だ。

荷室トノカバーやロードノイズ低減などの課題もあるが、性能、価格、使い勝手など高い満足感が得られる。新世代トヨタの80点主義が活かされていた。
ランエボで培った技術も活きる痛快コーナリング
プラグインハイブリッドの分野で世界をリードしているのがアウトランダーだ。とくに欧州では評価が高く、圧倒的なシェアを築いている。

新型となった現行車はリヤモーターを強化し、「走り味」をよりスポーティに振っている。前後駆動モーターの出力を比べると前輪駆動用モーターが 115馬力であるのに対して、後輪駆動用モーターは136馬力を発生する。リヤモーターの馬力数値だけを見ればRAV4の倍以上の高出力が図られている。

RAV4が前輪駆動ベースで+後輪駆動アシストというアプローチであるのに対して、アウトランダーは後輪寄りに駆動配分している。その理由のひとつに、三菱独自のS-AWC制御による後輪左右の駆動トルク配分コントロールをより有効に機能させる狙いがある。
実際、コーナリングでの旋回特性はクイックなターンインに続いて、アンダーステアを感じさせないニュートラルな特性を全速度域に拡げていると評価できる。

一方、搭載されるリチウムイオンバッテリーは20kWhと大型で、EV走行レンジは83kmにまで拡大されている。高速モードでは2.4リッター直4エンジンが稼働してエンジン主体で走り、発進加速や追い越し加速、登坂では前後モーターが強力にアシストして力強い。
悪路走破性を得意とする三菱車だけに最低地上高は200mmを確保。最大登坂角度45度を可能とするなど、見た目の豪華さからは想像し難いほどの実力を持つ。
後席はリクライニング+シートヒーター+エアコン吹き出し口+ウインドウサンシェードとフルマークで◎だが、4車中唯一の3列目シートは極狭で大人には辛い。

ディーゼルは高いという固定観念を覆す優等生
初代が登場した2012年以来、 常にSUV市場のトップランナーとして君臨しているのがCX-5だ。とくにディーゼルエンジン搭載車は燃料コストのメリットも大きく、電動モデルが全盛の現在も多くのユーザーから支持されている。

2.2リッターの直4 SKYACTIV-Dターボエンジンは最高出力200馬力を達成。最大トルクも450N・m/2000rpmで強力だ。

組み合わされるトランスミッションは6速ATながらロックアップ領域を拡大して燃費向上に貢献している。
100km/h巡航時のエンジン回転数は1900回転ほどで高速巡航燃費にも優れている。
ワインディングではトルクフルで力強い加速性能に魅了される。加えてトルクベクタリングを進化させたGVC(Gベクタリングコントロール)で素直なハンドリングを示す。だれでも不安なく乗りこなせる万能性があるが、CMで謳われている「退屈なクルマは作らない」という理念はハンドリングには活かされていない。安定しすぎていて乗りこなす面白みに欠けるのだ。
モード燃費は16.6km/Lで燃料タンク容量は58リットルあるので、962kmのロングレンジを低コストで走れるのは魅力だ。
後席居住性は高く、3分割のリヤシートバックは4人乗車でのスキードライブを可能とするなど使い勝手に優れる。

車幅1845mmは4車中ミニマムで5.5mの最小回転半径と相まって取りまわし性にも優れている。
そして価格。 ディーゼルは高いと言われるが、試乗車のスポーツアピアランスグレードで380万円からという価格設定も他車より大幅に安い。
目を閉じて乗っていてもスバル車だとわかる走り
スバルはスバリストと呼ばれる熱狂的なファンに支えられている。その個性豊かなクルマ作りはスバル車のほとんどに活かされていて、試乗車のアウトバックも同様だ。

最大の特徴は水平対向4気筒エンジンを縦置きして4輪駆動AWDという伝統的なパワートレインレイアウトを採用していること。低重心かつシンメトリカルで左右均等の重量配分がハンドリングやパッケージングに活かされていて、目を閉じて乗ってもスバル車とわかるような走りの個性が感じられるのだ。
アウトバックもまた同様で、電動化アイテムを持たないプレーンなパワートレインは軽量で、フロントのシャープなターンイン特性を生み出している。
排気量1.8リッターのエンジンはターボ過給しても最大出力が177馬力。最大トルクは300N・mを1600 rpmという低回転域から発生させてドライバビリティを高めているが、ワインディングの登坂区間では動力性能不足を感じる。また、CVTトランスミッションがSUVとしての走りをスポイルしてしまっている面も否めない。

ホイールベースは4車中最大の2745mmあり、その結果後席の居住空間は広く、ソフトでストロークのあるサスペンション設定が奏功して快適性はもっとも高かった。

最小回転半径5.5mは他車と同レベル。
最低地上高は4車中最大の213mmを確保。
高い信頼性と相まって北米やオーストラリア、国内においても山岳地域では高い支持を受けているのも頷ける。

※本記事は雑誌CARトップの記事を再構成して掲載しております