この記事をまとめると
■ヘッドライトはクルマのキャラ立てに活用される■ときに飛び出させたり隠したりとさまざまなヘッドライトのクルマが誕生した
■動きを伴うモデルに関しては、その動き方もあわせてチャームポイントとなっていた
ヘッドライトはキャラクター主張の宝庫だった
クルマにとってヘッドライトは目や瞳であって、人の顔と同じくキャラを立てたり、チャームポイントになったりしますよね。むろん、デザイナーたちもよくわかっているので、これまでもさまざまなアイディア、キャラクターが生み出されてきました。当然、時代に応じたトレンドもあって、ヘッドライトを観察していくだけでもクルマの歴史がキャッチアップできそうです。
ポップアップ系
使わないときはアウタースキンに隠れて、いざという時にライトが展開されるのがリトラクタブルライト。一方、ポップアップ式ライトはポルシェ928やランボルギーニ・ミウラのように、あたかもライトがボディに埋め込まれたかのように設置されていて、点灯時にはそれこそ「目玉が飛び出る」かのようにポップアップするもの。
ミウラには有名な「まつ毛」までつけられ(P400/P400SV)キャラどころか表情のニュアンスまでつかさどっていたのではないでしょうか。さすが、ガンディーニというか、イタリア人はこういうセンスいいですよね。

ちなみに、ポルシェは4気筒FRの最終モデルとなった968でもポップアップを採用。点灯時は911と似た角度になるよう工夫されていたそうです。まさか、レンズも流用だったりして!?
隠しトビラ系
これ、ライトあるの? ってデザインとなると、アメ車のオンパレードになりそうです。いずれも、グリルやエアインテークに見せかけてからくりトビラかのようにライトが現れる仕組みで、1960年代から1970年代初頭にかけてのトレンドかと。

なかでも1965年のビュイック・リヴィエラで採用された「クラムシェル(貝殻)」タイプと呼ばれる180°のヒンジでライトのカバーが開く様子は「なにも、そこまで」ってくらいの演出でしょう。

また、マッスルカーでも盛んにヒドゥンヘッドライト(隠しライト)が採用され、ダッジ・チャージャーやマーキュリー・クーガーなどなど枚挙にいとまがありません。

メッシュグリルに見せかけたカバーが開ききる前にヘッドライトが点灯しちゃって、いくらかバレ気味なところが時代を感じさせて微笑ましいですよね。
予想を裏切るギミックで意外性バツグン
点き方のクセ強系
ライトを点灯させるのに、アメ車ほどくどい演出を凝らしたクルマはないと思っていましたが、イタリア人もわりかし好きだったようです。例えば、アルファロメオの目立たない傑作GT「モントリオール」ですが、片側丸目2灯をルーバー状のカバーがあたかも日よけのようにかぶさったデザイン。

これ、大半の方がそのまま点灯するものと思うでしょうが、実際はこの日よけはクルッとまわってライトの下方に格納されるのです。

前述のミウラをデザインしたマルチェロ・ガンディーニがいかにも作りそうなギミックです。
クセ強系その2
リトラクタブルライトというと、カバーというかライトが縦方向にパカっと開くと思うもの。それがオペルGTのように横方向の回転というのも意表をつくというか、クセが強く感じられます。

しかも、これ手動でまわすとのこと。となると、ちびっ子たちが渡る横断歩道で「くるりんぱ」と見せてやったりすると喜ばれること必定。

手動といえば、コード812というレアなアメ車もヘッドライトに瞼のようなカバーがついていて、ドライバーが車内のハンドルをグルグルまわして開閉させる仕組み。

1937年製といいますから、マニュアルというのも致し方ないっちゃないのですが、だったら最初からリトラクタブルとか凝った真似しなくとも……というのは野暮でしょうか。
動きがキュート系
デザインやギミックだけでなく、ヘッドライトの動きそのものが滋味深いものもあります。有名なところでは、シトロエンDSがハンドル操作に合わせてライトが動き、コーナーの先を照らすというもの。

機能云々はともかく、先進的なアイディアはじつにシトロエンらしく素晴らしい。ちなみに、当時のプロモーションムービーもフィルムノワールばりの映像&サウンドなので、興味があればぜひチェックを!
また、ムービーといえばロータス・エラン(初代)のリトラクタブルライトの動きもぜひ映像でご覧いただきたいもの。これ、動力源にエンジンの負圧を用いているため、左右同時でなく、片方ずつ、しかもじんわりとした動きが特徴的。

エランに対抗するとなると、コルベットC4のリトラクタブルアクションでしょう。

なにしろ、ライトが180°回転する仕組みですから、動きはキュートながら「壊れたらイヤだなパーツ」の筆頭かもしれません(笑)。