この記事をまとめると
■プジョーの新型クロスオーバーSUVである「408」に試乗した■リヤサスがトーションビームであることを感じさせない乗り心地に好印象を抱いた
■愛車であるカローラセダンもプジョー408と同様な乗り心地に進化することを願って試乗を終えた
プジョーが新たなカテゴリーに投入した渾身の1台
2023年6月20日、新型プジョー408が日本国内でデビューした。408というとCセグメントハッチバックの308ベースとなるセダンというイメージがあるのだが、今回は歴代408の後継というわけではなく、車名は継承するもののそのキャラクターは新しいものになっているといえよう。
ひと目見てそのスタイルをわかりやすく表現するならば、トヨタ・クラウンクロスオーバーとキャラクターが似ているなと感じた。
ただし、クラウンクロスオーバーが独立したトランクなのに対し、新型408は大きなリヤゲートを持つハッチバックという大きな違いはある。

コロナ禍直前あたりにプジョーブランド車が北米市場に再上陸するという情報が飛び交った。世界一の自動車市場の中国や、世界第2位となるアメリカ市場では、メルセデス・ベンツやトヨタ、フォルクスワーゲンといった、世界的にも販売台数の多い老舗ブランドに対し、若年層が距離を置いていると言われている。
そのなかで若年層は、新興BEV(バッテリー電気自動車)やICE(内燃機関)車でも中国やアメリカでは珍しい趣味性の高いブランドが注目されていたりする。
現状ではルノーやシトロエンも含めてアメリカではフレンチブランドは正式販売されていないので、いま再上陸を果たせば、都市部の感度の良い若年層に注目されるとプジョーが判断すれば、北米市場再上陸もまんざら都市伝説でもない気がする。

かつてアメリカ市場では、レガシィアウトバック(初代と2代目の日本名はレガシィランカスター)には、初代から3代目まではセダンボディがラインアップされていた。つまり、アメリカ市場ではセダンのようなスタイルのクロスオーバーSUVのニーズがあるのだ。そう考えると、クラウンクロスオーバーもアメリカ市場にラインアップされているので、新型408もアメリカ市場戦略車という位置づけもあったのかなどと深読みしてしまった。
試乗会での説明によると、408はアッパーCセグメントもしくはDセグメントにカテゴライズされるとのこと。ちなみにアッパーCセグメントは、10代目ホンダ・シビックが兄貴格のホンダ・アコードの販売に影響が出るほど、Cセグメントながら思い切ったサイズアップを行ったのが始まりと筆者は認識している。
トーションビームとは思えないしなやかなリヤサスの動きに感動
1.2リッター直3ターボと1.6リッター直4ターボベースのプラグインハイブリッドをラインアップするが、試乗したのは1.2リッター直3ターボ。

ステアリングフィールはドイツ車とは異なりフランス車らしい軽い印象となるが、不安を覚えるような軽さではない。19インチという大径タイヤで腰高スタイルとなるのだが、妙な不安定感もなくじつに気持ち良い。フランス車らしいソフトな足まわりも好印象である。

首都高速の高架の継ぎ目を踏んでも嫌な突き上げイメージもない。そこで、ハッと我に返った。じつは新型408のリヤサスペンションはトーションビームだったのである。ところがトーションビームを感じさせず、4輪独立サスかと思うぐらいの好印象であったのである。
筆者のいまの愛車は2023年10月に改良を行ったトヨタ・カローラセダン1.5リッターガソリンエンジン車。改良前までは全車リヤサスはダブルウイッシュボーンだったのだが、改良後はセダンとツーリングのガソリン車のみトーションビームに変更された。

カローラの車両価格222万円に対し、新型408 GTは499万円という差が、今回の大きな印象の差につながっているのだろうかと考えてしまった。
カローラだけとなるが、30年以上にわたりトヨタ車を乗り継いだ筆者としては、最近の一部モデルは別としても、トヨタ車はフランス車に近い乗り味だと考えている。ただ、たとえ価格差があるにせよ、新型408のトーションビームサスの出来はさすがと言うしかなかった。
カローラも現行モデルになってだいぶ基本性能はアップしてきたと感じているので、次期型カローラセダンのガソリン車でもトーションビームを採用する予定ならば、新型408に迫るようなリヤサスに成長していることを信じて新型408の試乗を終えた。